※本記事はプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
「このまま売ったら安く買い叩かれる。少し直してから売ったほうがいいのでは」。築古の実家を売ろうとする方から、いちばん多く受ける相談です。
僕の実家は昭和初期に建った木造で、敷地は約250㎡。売却に傾いていますが、家族との話し合いはまだ途中です。売るとなれば「直すか、直さないか」を自分で決めることになります。
売買の仲介の現場では、売主が数百万円かけたリフォームが、買主の目にまったく映っていない場面を何度も見ました。逆に、10万円ほどの片付けで問い合わせが目に見えて増えた家もあります。差は「買主が何を見ているか」を知っているかどうかでした。
この記事では、古家付き土地として売るとはどういうことか、買主3タイプが内見で見ているポイント、リフォームの損得、最低限やる価値のある準備、インスペクションと告知書の使い方を、内見の裏側から書きます。
費用は2026年9月時点の各社公開相場と、僕の現場経験による目安です。固定資産税や相続空き家の控除など税務の個別判断は税理士に、契約不適合責任など法務の個別判断は弁護士や仲介会社の担当者にご確認ください。
先に結論
- 築古の実家は、買主の大半が「家」ではなく「土地」を買う。売価は土地の相場から解体費を引いた額が基準で、リフォーム費用はほぼ乗らない。
- 損しないのは「リフォームより告知」。分かっている不具合を告知書に書き、建物の契約不適合責任を免責にして現況で売るのが、築古の基本形。
- やる価値があるのは残置物撤去・清掃・庭木剪定・雨漏り応急・鍵交換の5つ。2LDK程度なら合計20万〜50万円が目安で、「直す」ではなく「マイナスを消す」準備になる。
- 迷うなら、リフォーム前に「現況の査定額」と「リフォーム後の想定価格」を仲介会社に並べてもらう。差額がリフォーム費用を超えなければ、直さない。
▼ 直す前に、現況のままの相場をまとめて知る(無料・最大6社に一括で依頼)
「古家付き土地」で売るとは何か。建物価値ゼロ、値段は土地で決まる
不動産の広告には「中古戸建て」と「土地(古家付き)」の2つの出し方があります。同じ家でも、どちらで出すかで買主も価格の決まり方も変わります。
| 項目 | 中古戸建てとして売る | 古家付き土地として売る |
|---|---|---|
| 価格の決まり方 | 土地+建物の価値。周辺の中古戸建ての成約事例が基準 | 土地の相場から解体費を引いた額が基準。建物は0円。解体費は木造30坪で本体90万〜150万円、付帯工事込みで140万〜200万円になる家が多い |
| 主な買主 | 自分で住む個人 | 建て替え前提の個人、建売業者、買取業者 |
| 建物の契約不適合責任 | 一定期間負うのが普通(築古は短縮・免責も) | 免責特約が一般的。買主も免責前提で価格を見る |
| 住宅ローン | 旧耐震は担保評価が低く、審査が通りにくい | 土地の評価で組める。建て替えなら新築分とまとめて相談できる |
| 売主のリフォーム | 価格に一部乗ることがある | ほぼ乗らない。壊す前提だから |
| 売却期間の傾向 | 状態が良ければ早い。築古は長引く | 土地需要がある地域なら安定して動く |
築40年を超えた木造は、金融機関の担保評価上、建物価値はほぼゼロです。1981年5月31日以前の旧耐震ならなおさらで、買主が住宅ローンを組みにくく、耐震基準適合証明書などで耐震性を示せないと住宅ローン控除も使えません(国税庁 No.1214)。だから僕は、旧耐震の実家は最初から「古家付き土地」で出すことを勧めています。建物に値段をつけて出すと、買主から「解体費分を引いてほしい」と交渉が入り、結局同じ着地になるうえ、時間だけが過ぎるからです。
「それなら壊して更地で売れば」と考える方もいます。ただ先に壊すと、解体費を先払いするうえ、1月1日時点で更地なら翌年度の固定資産税も上がります(下の数字メモ)。壊すかどうかの損益分岐は「空き家の解体費用相場と補助金」の記事で試算しているので、ここでは建物を残したまま売る前提で進めます。
古家付き土地で売る利点は、もう一つあります。建物の契約不適合責任を免責にしやすいことです。「建物は現況有姿で引き渡し、契約不適合責任を負わない」という特約は、買取業者や建て替え前提の買主にとって当たり前の条件で、価格もそれを前提に見ています。ただし、売主が知っていて告げなかった不具合には免責が効きません(民法572条)。だから後で書く告知書が重要になります。
🔢 数字メモ|更地で税は最大6倍
住宅が建つ土地は住宅用地の特例で、200㎡以下の部分は課税標準が1/6(都市計画税は1/3)、超える部分は1/3(同2/3)になる(総務省)。1月1日に更地だと翌年度から外れ、理論上最大6倍。負担調整措置があるので、実額は納税通知書の課税標準で確認する。
買主は3タイプ。内見で見ている場所がまったく違う
築古の実家を見に来る買主は3タイプに分かれます。僕が内見に立ち会ってきた経験で、それぞれが実際に見ている場所を表にしました。ここが分かると、どこに手をかけるべきかが決まります。
| タイプ | 価格の見方 | 内見で見ている場所 | 契約で求めること |
|---|---|---|---|
| ① 自分で住む(DIY・リノベ派) | 家+土地。直す費用を引いて考える | 雨漏りの跡(天井のシミ)、床の傾き、水回りの状態、柱の太さ、日当たり、シロアリの痕跡、断熱 | インスペクション、設備の動作、契約不適合の一部負担 |
| ② 建て替え前提(個人・建売業者) | 土地の相場−解体費 | 接道と間口、境界杭、越境、隣家との距離、高低差、電柱の位置、浄化槽や井戸などの地中埋設物。家の中はほぼ見ない | 更地渡しか解体費相当の値引き、確定測量、越境の覚書 |
| ③ 投資家・買取業者 | 再販価格から利益と費用を逆算 | 残置物の量、再建築の可否、前面道路の幅員、セットバック、用途地域。内見に来ないことも多い | 現況渡し、契約不適合責任の全部免責、早い決済 |
3タイプのうち、築古の実家に来るのは②と③が大半です。①は、駅近や景観の良い立地、あるいは古民家として価値がある家に限られます。
②の買主は、家の中に入っても見ているのは窓の外です。隣家との距離、境界、道路。キッチンが新しいかどうかは見ていません。僕が立ち会った建売業者の担当者は、玄関から入って30秒で外に出て、メジャーで間口を測り始めました。彼らにとって建物は「解体費がいくらかかるか」でしかありません。
③の買取業者は、さらに割り切っています。土地値から解体費・残置物処分費・利益を引いた額で買います。だから残置物が多い家ほど指値が下がります。
①の買主だけが、水回りや内装を見ています。ただし①は「自分で直す前提」で来ているので、売主が直した水回りが彼らの好みと合うとは限りません。
📝 現場メモ|内見に来ない買主が一番多い
買取業者と建売業者は、公図・測量図・前面道路の写真でほとんどを判断し、内見は「残置物と埋設物の確認」だけのことが多い。売主が室内を磨いても、その買主には届かない。査定を依頼するとき「うちの地域の買主は①②③のどれが多いか」を聞くと、準備の優先順位が決まる。
リフォームして売る場合の損得。費用目安と「売価に乗らない」典型例
それでも「直してから売りたい」という方のために、費用を並べます。いずれも公的な統計はなく、各社の公開相場からの目安です。実際は見積で確認してください。
| 工事 | 出典 | 費用(目安) |
|---|---|---|
| システムキッチン交換(位置を変えない) | ホームプロ・リショップナビ 各社相場 | 50万〜150万円 |
| ユニットバス交換(0.75〜1坪) | 同上 | 80万〜160万円 |
| 在来浴室→ユニットバス | 同上 | 100万円超 |
| 水回り3点(キッチン・浴室・トイレ) | 一建設「戸建のリフォーム費用の目安」ほか | 90万〜190万円 |
| クロス全面張り替え(戸建て) | SUUMO・ホームプロ 各社相場 | 20万〜60万円 |
| 外壁塗装(30坪・シリコン) | ヌリカエ・くらしのマーケット 各社相場 | 80万〜120万円 |
| 外壁+屋根塗装(30坪) | 同上 | 100万〜140万円 |
| フルリフォーム(耐震・断熱・水回り・間取り) | リショップナビ・ホームプロ 各社相場 | 1,000万〜2,000万円 |
水回り3点とクロスと外壁塗装を一通りやると、200万〜400万円。ここからは僕が現場で見てきたことです。築古で、この費用がそのまま売価に上乗せされた例を、僕はほぼ見ていません。 典型的なパターンは5つです。
| 売価に乗らない典型例 | 何が起きるか |
|---|---|
| 旧耐震で、買主が建て替え前提 | 新しいキッチンごと解体される。費用は全額消える |
| 買主の好みと違う | 白いキッチンを入れたら、買主は黒に替えた。二重投資を嫌って値引き交渉になる |
| 部分だけ新しく、他が古いまま | 「水回りは新しいが柱と床は昭和」で、①の買主は不安になる。ちぐはぐな家は評価が下がる |
| 外壁を塗った | 買主とインスペクターは塗膜の下の構造を見る。築古の新しい塗装は「雨漏りを隠した」と疑われることさえある |
| 査定額の上昇が費用を下回る | 300万円かけて査定が100万円上がる。僕が見てきた範囲では、乗っても費用の3〜5割 |
リフォームが報われるのは、次の条件が揃うときだけです。①の買主が多い立地(駅近・人気学区・古民家需要)、建物が新耐震か耐震改修済み、直す範囲が「壊れて使えない箇所の修理」に限られる。この3つが揃わないなら、直す費用は買主に渡して、その分値段で調整したほうが、売主も買主も損をしない。これが僕の考えです。
ただし「売る前に直す」と「貸す・住む・残す前に直す」は別の話です。直した費用を何で回収するかが違います。
| 実家をどうするか | 直した費用の回収 | 条件と費用(目安) |
|---|---|---|
| 売る | 一度きりの売価。築古ではほぼ乗らない | 直す前に、現況とリフォーム後の査定差を見る |
| 貸す | 家賃で数年かけて回収 | 貸す前の工事は150万〜300万円。新耐震・駅か学区・駐車場などの条件が要る。試算は「実家を賃貸に出すべきか」の記事 |
| 自分や家族が住む | 住み心地として回収。売価には乗らない | 最低限でも300万〜600万円。20年以上住むならフルリフォームも比較 |
| 当面残す | 回収しない。維持費が続く | 固定資産税・火災保険に、管理サービス月5,000〜15,000円(空き家パス比較) |
売ると決めていないなら、ここで手を止めてください。売るつもりで直した家を結局貸す、住むつもりで直した家を結局売る。この順番の入れ違いが、いちばんお金を失います。
⚠️ 失敗メモ|水回り280万円が消えた
売主が水回り3点を替えて売り出した郊外の実家。来たのは建売業者だけで、提示は土地値から解体費を引いた額。新品のキッチンは評価ゼロで、残っていた家具の処分費まで引かれた。売主は直す前に「誰が買うか」を仲介に聞いていなかった。
最低限やる価値があること5つ。直すより「マイナスを消す」
リフォームは要りませんが、何もしないのも損です。買主の3タイプに効き、かつ費用が小さい準備が5つあります。費用はいずれも各社相場からの目安です。
| やること | 効く相手 | 理由 | 費用(目安) |
|---|---|---|---|
| 残置物の撤去 | ①②③全員 | 買取業者は処分費を指値に乗せる。個人は「片付いていない家」に入った時点で気持ちが離れる | 2LDKで10万〜20万円、一軒家(4LDK以上)で22万〜70万円 |
| 清掃(空室ハウスクリーニング) | ①主体 | 水回りのカビと臭いは、写真より内見で効く。換気と通水も忘れずに | 5万〜10万円 |
| 庭木剪定・草刈り | ②③主体 | 境界杭と越境が見えないと②は判断できない。伸びた庭木の越境は覚書が必要になる | 職人1人1日1.5万〜3万円 |
| 雨漏りの応急処置 | ①主体 | 天井のシミを隠すのではなく、進行を止める。告知書に「応急処置済み」と書ける | ブルーシート・コーキングで3万〜10万円 |
| 鍵交換・電気水道の再開通 | ①②③全員 | 内見時に明かりがつき、水が出ること。合鍵が親戚に散らばっている家は買主が嫌う | 鍵1.5万〜3万円+基本料金 |
2LDK程度の家なら、5つ合わせて20万〜50万円。一軒家で物が多いと、片付けだけで22万〜70万円に広がります。この5つに共通するのは「価値を足す」のではなく「マイナスを消す」ことです。買主は加点より減点で価格を見るので、減点を消す出費は、費用に対して効きが良い。
残置物は、遺品整理と分けて考えてください。思い出の品と書類の仕分けは家族で、残りの処分は業者で。家族で仕分けしてから処分だけ頼めば、丸ごと頼むより2〜4割下がります。一方で全部を家族でやると、遠方の実家では数か月かかることもあります。片付けの手順と業者の見分け方は「実家の片付け・遺品整理の費用相場」の記事に、片付けから売却までの総額は「実家じまいの費用総額」の記事にまとめています。
📝 現場メモ|撤去前に「残すもの」を聞く
エアコン、物置、庭石、灯籠、井戸ポンプは、買主によっては残してほしいと言われる。①の買主はエアコンと物置を欲しがり、②の買主は庭石の撤去費を嫌う。全部捨ててから「あれは残してほしかった」と言われた例が何度もある。撤去は媒介契約の後、仲介に買主層を聞いてからでいい。
インスペクションと告知書。「隠さない」が一番安い保険になる
築古を現況で売るとき、売主を守るのはリフォームではなく、2つの書類です。ここでは「見せ方」に関わる部分だけを書きます。
| 項目 | インスペクション(建物状況調査) | 告知書(物件状況報告書) |
|---|---|---|
| 何をするか | 国の講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が、基礎・外壁・屋根・床下などの劣化を目視で調べる | 売主が、雨漏り・シロアリ・増改築・境界・埋設物などの状態を書面で買主に伝える |
| 費用 | 木造戸建ての基本調査で5万〜10万円程度。床下・小屋裏の進入などのオプションは別途(目安) | 書面自体に費用はかからない。仲介が聞き取りながら埋める |
| 時間 | 木造戸建てで2〜3時間 | 親や兄弟への聞き取りを含めて数日〜数週間 |
| 仲介会社の義務 | 2018年4月1日施行の改正宅建業法で、媒介契約時にあっせんの有無を書面に記載し、重要事項説明で結果の概要を説明(国交省)。2024年4月の媒介契約書の改訂で、あっせん「無」なら理由も記載 | 契約書類の一部として買主に渡る。書いた内容が契約の前提になる |
| 古家付き土地での扱い | ②③が中心なら見送ってよい。①が来る地域なら先に実施 | 必ず作る。免責特約の土台になる |
築古の実家でインスペクションをやる価値があるのは、①の買主が多い地域です。②③が中心なら「どうせ壊す」ので、売主が費用を払う意味は薄い。①が来る家なら、調査済みで売り出すと雨漏りやシロアリの有無を客観的に示せ、値引き交渉の材料を減らせます。仲介会社があっせんについて何も言わないなら、それ自体が確認のサインです。僕は媒介契約のとき、売主に必ず「やるかやらないか」を聞いています。
告知書のうち、古家付き土地の買主が特に見るのは、雨漏りとシロアリの履歴、昭和期の増築と図面の有無、境界と越境、浄化槽・井戸・旧基礎などの地中埋設物です。②の買主は解体時に出てくる埋設物の費用で揉めるので、「井戸あり、使用停止」「浄化槽あり」と一行書くだけで話が早く進みます。「分からない」は「分からない」と書いて構いません。困るのは、知っていることを書かないことです。
免責特約の組み方や通知期間の区切り方、書かなかったときに売主が負う責任は、「築古の実家を売った後の契約不適合責任」の記事で詳しく書いています。
📖 用語メモ|付帯設備表
エアコン・給湯器・照明・物置など、引き渡す設備と故障の有無を一覧にした書類。告知書とセットで売主が作る。買主に「残してほしい」と言われた設備は、ここに載せて状態を書いておかないと、引き渡し後に「動かない」で揉める。
僕の実家(昭和初期築・敷地約250㎡)ならどう見せるか
自分の実家に当てはめてみます。確認できていない項目は、調べ方を書いています。
| 項目 | 現状 | 僕の見せ方 |
|---|---|---|
| 建物 | 昭和初期築の木造。建築確認の記録なし。旧耐震 | 建物価値ゼロ。「土地(古家付き)」として出す。リフォームはしない |
| 敷地 | 約250㎡(約75坪)。広島市内の駅に近い住宅地。前面道路はセットバックが必要と聞いている(間口と幅員は市の道路台帳と現地で確かめる) | 間口と道路幅員で②の買主(建売業者)が分割できるかが決まる。査定時に「分割して2区画か、1区画か」を聞く |
| 想定する買主 | 査定のときに、どの買主層を想定しているかを各社に聞く | 建て替え前提の②が中心と見ている。①が来るなら古民家として見せる余地 |
| 残置物 | 4LDK相当に納戸・物置。親戚の荷物も含め、量は部屋ごとの写真で片付け業者に見積もってもらう | 家族で仕分け→業者で処分。撤去は媒介契約後、仲介に「残すもの」を聞いてから |
| 庭 | 親戚が集まる庭。庭木あり。越境はない | 剪定して境界杭を見えるようにする。庭石は残すか撤去か買主層で決める |
| 雨漏り・シロアリ | 履歴は親に聞き、修理や駆除の領収書・保証書を探す | 分かる範囲を告知書に書く。「不明」は不明と書く |
| 増改築歴 | 登記簿の床面積と今の建物を見比べて増築の有無を確かめ、図面が残っていないか探す | 図面がなければ「図面なし」と告知 |
| インスペクション | 未実施 | ②③が中心なら見送り、その分を境界の測量に回す。①の反応があれば5万〜10万円程度で実施 |
| 契約不適合責任 | — | 建物は全部免責。土地の埋設物は告知範囲を超えるものに限り、引渡しから3か月以内の通知で協議(期間は契約で決める) |
| 税制 | 築年の要件(1981年5月31日以前築)は満たす。親が相続直前に一人で住んでいたかなど、ほかの要件は未確認 | 相続後に売るなら、相続空き家の3,000万円控除(2027年12月31日まで、相続から3年目の年末まで、相続人3人以上は2,000万円)を税理士と確認。買主が翌年2月15日までに取り壊す形でも可 |
見せ方を一言で言えば「土地を見やすくする」です。建物を良く見せる投資はせず、境界と道路と敷地の形が分かる状態にして、告知書を正直に埋める。僕の実家は4LDK相当に親戚の荷物もあるので、家族で仕分けしても片付けの業者分だけで40万〜70万円、剪定と清掃を足すと50万〜85万円ほどと見ています。2LDKの目安には収まりませんが、水回りを直す200万〜400万円よりは小さい。
ただし、僕がまだ決めていないのは「売るかどうか」そのものです。家族の「残したい」との話し合いが続いています。残すなら、片付けと剪定は売るためではなく管理のための出費になり、固定資産税と管理の費用が毎年続きます。それでも見せ方を先に考えておくのは、売ると決めたときに「直してから」と迷って数百万円を無駄にしないためです。
一括査定で「現況とリフォーム後を比べる」方法
直すかどうかを決める前に必要なのは、リフォーム業者の見積ではなく、「現況でいくら」「直したらいくら」の2つの査定です。この2つの差がリフォーム費用を超えなければ、直す意味はありません。
ただ、いきなり店頭に行くと営業がかかります。「まだ直すかどうか決めていない」段階では、それが負担で止まる人が多い。
店頭に行く前に、一括査定で2つの数字を集める手があります。紹介するのはイエウールです。一括査定でも営業の連絡は来ますが、頼み方で減らせます。僕は利用者として使ったことはないので、ここでは査定依頼を受ける不動産会社の側から見たしくみと、イエウールの特徴を書きます。
一括査定は、1回の入力で複数の不動産会社に同じ物件の査定を頼むしくみです。依頼を受ける会社は他社と比べられる前提で査定額と根拠を出すので、1社だけに聞くより「現況でいくら」の幅がはっきりします。
イエウールの特徴(イエウール公式・ieul.jp、2026年10月確認)
- 提携不動産会社は2,500社以上。最大6社に同時に依頼できる
- マンション・一戸建て・土地のほか、一棟アパートや農地なども依頼できる
- 運営は株式会社Speee(東証スタンダード上場)。クレームの多い会社は、イエウールが契約を解除できる仕組みがある
気をつける点と、営業電話を減らす頼み方
- 匿名では使えない。名前・電話番号などの連絡先を入れるので、申し込むと複数社から電話が来ることがある
- 机上査定・訪問査定を選ぶ欄はない。備考欄に「連絡はメール希望」「まずは机上査定(訪問なし)で」と書き、電話が来たら同じことを伝える
- 断るときは「他社に決めた」の一言でよい
- 会社によって対応の速さに差がある。返事が遅い会社は候補から外してよい
- 査定額が一番高い会社が良い会社ではない。「この地域の買主は住む人か、建てる人か、業者か」を答えられる会社を選ぶ。買主層を答えられない会社に、リフォームの要否は判断できない
備考欄には連絡の希望とあわせて、「築古なので、現況(古家付き土地)での査定額と、水回りを直した場合の想定価格の両方を教えてほしい。想定する買主層も」と書いてください。この一言で、直すかどうかを判断する材料がそろいます。
▼ 現況の相場と「直した場合」の価格をまとめて比べる(無料・最大6社に一括で依頼)
よくある質問
Q. 「古家付き土地」で出すと、住みたい人が来なくなりませんか?
A. 来ます。ポータルサイトでは「土地」で検索する人にも「中古戸建て」で検索する人にも表示されるよう、両方に掲載するのが仲介の実務です。価格の基準を土地に置いたうえで、住める状態なら「現況のまま居住可」と書けば、①の買主にも届きます。
Q. 親がまだ住んでいます。いまのうちにリフォームしておけば、売るときに有利ですか?
A. 親が暮らすための修理と、売るための投資は分けて考えてください。手すりや段差解消、壊れた給湯器の交換は、親の暮らしのためにやる価値があります。ただ、それが売価に乗るとは考えないこと。将来売る可能性が高いなら、水回りの全面交換より「壊れたら暮らせない箇所」の修理にとどめるのが僕の考えです。
Q. インスペクションで不具合が見つかったら、直してから売るべきですか?
A. 直す必要はありません。結果を告知書に添付して「承知のうえで買う」形にすれば、免責の根拠になります。雨漏りのように進行するものだけ応急処置をして、その事実も書いてください。
Q. 相続空き家の3,000万円控除を使うには耐震改修が必要と聞きました。
A. 2024年1月1日以降の売却は、売主が改修しなくても、買主が売却の翌年2月15日までに耐震改修か取り壊しをすれば使えます(国税庁 No.3306)。古家付き土地で売り、契約書に買主の取り壊し時期を書く形が実務です。要件は1981年5月31日以前築、相続から3年目の年末まで、制度は2027年12月31日まで、相続人3人以上なら1人2,000万円。個別の適用は税理士にご確認ください。
まとめ
- 築古の実家の買主は「土地」を買う。売価は土地の相場−解体費が基準で、リフォーム費用はほぼ乗らない。
- 直すより告知。分かっている不具合を告知書に書き、建物の契約不適合責任を免責にして現況で売るのが基本形。
- 残置物撤去・清掃・剪定・雨漏り応急・鍵交換の5つでマイナスを消す。2LDK程度で20万〜50万円、一軒家は片付けだけで22万〜70万円。撤去前に「残すもの」を仲介に聞く。
- 貸す・住む・残すなら、直した費用の回収方法が変わる。売ると決める前に直さない。
- インスペクションは①の買主が多い地域でだけ検討する。基本調査で5万〜10万円程度。
- 直すかどうかは、現況の査定とリフォーム後の想定価格を並べてから決める。僕の実家は「直さず、土地を見やすくする」で準備する。
▼ 直す前に、実家の相場をまとめて知る(無料・最大6社に一括で依頼)