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実家をどうするかと聞かれると、たいてい「売る・貸す・壊す」の3つで考えます。でも、その前にもう一つあります。自分が住む、です。
賃貸に住んでいる人にとって、家賃がなくなる魅力は大きい。賃貸の仲介の現場でも「実家に戻るので退去します」という方は毎年います。ただ、築古の実家は住み始めてからいくらかかるかが読めません。僕は賃貸のメディアを運営しながら、昭和初期築の実家を残すかどうかを家族と話している当事者です。「残すなら誰が住むのか」という問いは、僕自身にも向いています。
この記事では、住む場合のリフォーム費用の相場、お金の出どころと住宅ローン控除の条件、2026年度の補助金と減税、そして賃貸から戻る前に確かめる5つのことを、数字で並べます。
数字は2026年9月時点の公開データです。補助金は年度で名称と予算が変わります。税務(贈与税・住宅ローン控除・リフォーム減税)は個別事情で結論が変わるので、税理士・税務署等にご確認ください。補助金は所在地の自治体窓口で確認してください。
先に結論
- 築古の実家に住むなら、水回り+屋根外壁などの部分リフォームで300万〜600万円、耐震・断熱まで含めたフルリフォームで1,000万〜2,000万円が目安。建て替えは3,000万円前後で、築年数が古いほど差が縮まる。
- 住宅ローン控除は「買う」か「直す」かで条件が違う。親などから買うなら1982年1月1日以後築か耐震基準適合の証明が要る(国税庁 No.1211-3)。自分名義の家を増改築するなら築年要件はなく、工事費100万円超・10年以上のローンなどで判断する(No.1211-4)。
- 親名義の家に子が費用を出すと、親への贈与になる(国税庁 No.4557)。工事の前に名義の話を済ませる。
- 住むかどうかは費用より「兄弟との公平」と「10年後に売れるか」で決まる。住むと決めている人も、代償金と出口の基準として相場は先に知っておく。
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住む場合の費用の全体像。部位別の相場と、4案の比較
住宅リフォーム推進協議会の2025年度実態調査(2026年2月発表)では、リフォーム実施者が実際に払った費用は平均405万円(前年度は434.2万円)。約3割が予算を上回り、築50年以上の家では500万円以上かかった割合が高くなっています。「水回りだけ直せば」で始めた工事が、開けてみたら屋根と土台まで及ぶ。これが築古の実家の実態です。
部位ごとの相場を並べます。数字はリフォーム見積サイト各社の公表相場を僕が丸めたもので、木造30坪前後の戸建てを想定しています。
| 部位 | 内容 | 相場 | 築古の実家で起きやすいこと |
|---|---|---|---|
| 水回り4点 | キッチン・浴室・トイレ・洗面の交換 | 200万〜350万円 | 在来浴室の解体で土台の腐りが見つかる |
| 屋根 | 塗装/カバー工法/葺き替え | 30万〜200万円 | 瓦屋根の葺き替えは重量が減り耐震にも効く |
| 外壁 | 塗装/張り替え | 80万〜250万円 | 足場代(15万〜25万円)は屋根と同時が得 |
| 耐震改修 | 壁の補強・基礎・接合金物 | 100万〜250万円 | 木耐協の調査で平均167万円・中央値140万円(2021年、物価上昇前) |
| 断熱 | 内窓・玄関ドア/床・壁・天井 | 30万〜400万円 | 窓だけなら安いが、躯体断熱は壁を剥がす |
| 間取り変更 | 和室続き間→LDK、水回り移動 | 100万〜300万円 | 構造壁を抜けないことがある |
| 給排水・電気 | 配管更新、分電盤・配線 | 50万〜150万円 | 昭和の家は容量不足で分電盤交換が必要 |
これを4つの案で比べます。僕の実家(昭和初期築・木造)を想定して置いた数字です。
| 案 | 初期費用の目安 | 安全性・快適性 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| A. 現状のまま住む(最低限の水回りのみ) | 100万〜300万円 | 耐震・断熱は昭和のまま | 数年だけ住む、親の介護で一時的に戻る |
| B. 部分リフォーム(水回り+屋根外壁+内窓) | 300万〜600万円 | 雨漏りと寒さは改善、耐震は未対応 | 築30〜40年で構造が健全な家 |
| C. フルリフォーム(耐震+断熱+水回り+間取り) | 1,000万〜2,000万円 | 新築に近づくが、基礎と土台は旧いまま | 築40年超で「20年以上住む」と決めた人 |
| D. 建て替え(木造30坪) | 3,000万円前後(本体2,200万〜2,700万円+解体90万〜150万円+外構・諸費用。木造坪単価74.6万円・2025年、archi-book) | 新築 | 建て替え費用を借りられる年齢・収入がある人 |
築古で見落としがちなのは、CとDの差です。フルリフォームで2,000万円かけても、基礎と土台は昭和のままです。僕の実家のように築50年を超えていると、Cの見積が上振れするたびにDに近づきます。「1,500万円かけてリフォームしたが、5年後に売ったら土地値だった」という例は珍しくありません。築古の戸建てでは、リフォーム費用は売値にほぼ乗りません。
🔢 数字メモ|旧耐震の97.4%が現行基準未満
日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)が2025年10月に発表した耐震診断の集計では、1950〜1980年築の木造住宅の97.4%が現行の耐震基準を満たしていない。1981年6月〜2000年5月築でも86.6%。「新耐震だから大丈夫」は診断してから言う。
⚠️ 失敗メモ|浴室を開けたら土台が腐っていた
在来工法の浴室を解体したら土台と柱の根元が腐り、追加で80万円かかった相談を受けた。見積の前に床下と小屋裏を点検してもらい、工事費の2〜3割を予備費として別に確保しておく。予備費ゼロで着工した工事は、途中で止まるか、質を落として終わる。
お金の出どころ。築古で借りにくい理由と、贈与・住宅ローン控除の条件
住む場合の資金は、自己資金・ローン・親の資金の3つです。それぞれに築古ならではの壁があります。
| 資金の出どころ | 借入枠・期間の目安 | 築古の実家で引っかかる点 |
|---|---|---|
| 無担保リフォームローン | 500万〜1,000万円、最長10〜15年、金利は住宅ローンより高め | 借入枠が小さく、フルリフォームには届かない |
| 有担保リフォームローン/住宅ローン(リフォーム一体型) | 住宅ローン並みの金利・期間 | 担保評価が「土地の評価額」でほぼ決まる。木造は法定耐用年数(22年)を超えると建物をほぼ評価しない金融機関が多い |
| フラット35リノベ(住宅金融支援機構) | 一定期間の金利引下げ | 中古住宅の「購入」と同時のリフォームが対象。すでに自分や親が所有している家のリフォームは対象外 |
| 親の資金 | 親が自分の家を直すなら贈与ではない | 親名義の家に子が出すと、子から親への贈与(後述) |
| 自己資金 | 賃貸の家賃分を積み立てていた人は有利 | 予備費を残す。全額を工事に入れない |
築古で借りにくい理由は単純で、金融機関は建物ではなく土地を担保に見ているからです。地方で土地の評価が低いと、有担保でも枠が出ません。リフォーム一体型の住宅ローンを申し込んで「土地評価の範囲まで」と減額されることもよくあります。
親名義の家に子が費用を出すと「親への贈与」になる
親が元気なうちに戻って、親名義の家を子の資金でリフォームする。よくある形ですが、税務上は子から親への贈与です(国税庁 No.4557「親名義の建物に子供が増築したとき」)。家の価値が上がる分を親が受け取ったと見なされ、親に贈与税がかかります。年110万円の基礎控除を超えた部分が対象です。
避ける方法は2つで、工事の前にどちらかを決めます。
| 方法 | 内容 | 注意 |
|---|---|---|
| 建物の持分を子に移す | 子が出す工事費に見合う建物の持分を親から子へ移転し、共有にする | 親から子への譲渡になり、親に譲渡所得が出ることがある(築古なら建物の価値は低く、実務上は少額のことが多い) |
| 先に建物の名義を子に変える | 売買または贈与で子の名義にしてからリフォームする | 贈与なら相続時精算課税(2,500万円まで、2024年からは年110万円の基礎控除も)を使う選択肢がある。土地まで贈与すると贈与する財産の額が大きくなる |
「家族だから」で済ませて、後から税務署に指摘された例を知っています。工事費が数百万円になるなら、着工前に税理士に相談する費用(数万円)は惜しまないでください。
住宅ローン控除は「買う」と「直す」で条件が違う
住宅ローンを組んで住むなら、住宅ローン控除が使えるかで10年の手取りが変わります。要件を整理します(国税庁 No.1211-3・No.1211-4、令和8年4月1日現在の法令)。
| 項目 | 中古住宅を買って住む(No.1211-3) | 自分名義の家を増改築して住む(No.1211-4) |
|---|---|---|
| 建物の要件 | 1982年1月1日以後の建築、または耐震基準適合証明書等で現行の耐震基準に適合 | 築年要件なし。増築・改築・大規模修繕、一室の床か壁の全部の改修、耐震・バリアフリー・省エネ改修などに当たり、増改築等工事証明書が出る工事 |
| 取得先・名義 | 取得時・取得後に生計を一にする親族からの取得は不可。贈与による取得も対象外 | 自己所有・自己居住。相続や贈与で自分の名義になった家も対象になり得る |
| 工事費 | - | 100万円超(うち半分以上が居住部分) |
| ローン | 返済期間10年以上 | 返済期間10年以上 |
| 控除率・期間 | 年末残高の0.7%。その他の住宅は10年、省エネ基準適合以上は13年(2026年以後の居住) | 年末残高の0.7%、10年 |
| 借入限度額 | その他の住宅・省エネ基準適合は2,000万円、認定住宅・ZEH水準は3,500万円(子育て世帯等は上乗せ) | 2,000万円 |
| 床面積 | 50㎡以上(40㎡以上50㎡未満は所得1,000万円以下の場合) | 同左 |
| 居住開始 | 2030年12月31日まで | 2030年12月31日まで |
実家で現実的なのは右の列です。親から買う形は、同じ家で生計を一にしていると使えず、贈与でもらった家は「取得」に当たりません。相続または贈与で自分の名義にした後、100万円超のリフォームを10年以上のローンで行う。この順番なら増改築の控除が視野に入ります。
増改築には築年要件がないので、昭和の家でも入口には立てます。引っかかるのは工事の中身です。証明書が出る工事の種類に当たらないと対象外で、キッチンなど設備の交換だけでは当たらないことがあります。見積の段階で、工務店に「増改築等工事証明書が出る工事か」を聞いてください。耐震改修を入れるなら、後述の住宅耐震改修特別控除は住宅ローン控除と併用できます。
📖 用語メモ|耐震基準適合証明書
建築士事務所所属の建築士や指定確認検査機関などが、その家が現行の耐震基準を満たすと証明する書類。1981年以前築の木造は、耐震診断で評点1.0未満なら補強工事をしてからでないと出ない。診断は自治体の補助で無料〜数万円のことが多い。
2026年度の補助金とリフォーム減税。「年度で変わる」の確認方法
補助金は年度ごとに名称・予算・要件が変わります。2026年9月時点で確認できたものを並べます。
| 補助金(2026年度) | 内容 | 上限・条件 | 確認先 |
|---|---|---|---|
| みらいエコ住宅2026事業(国交省・経産省・環境省) | 省エネリフォーム。2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」の後継 | 1991年以前築は最大100万円/戸、1992〜2016年築は最大80万円(改修後に省エネ基準相当にする場合。平成11年基準相当なら50万円・40万円)。1つの居室で窓と壁・床などの断熱改修をセットで行うのが必須。工事着手2025年11月28日以降、交付申請は遅くとも2026年12月31日まで(予算上限で終了) | 公式サイト mirai-eco2026.mlit.go.jp。登録事業者が申請 |
| 先進的窓リノベ2026事業(環境省) | 断熱性能の高い窓への交換・内窓設置 | 最大100万円/戸。内窓はAグレードが対象外になった。工事着手2025年11月28日以降、交付申請は遅くとも2026年12月末まで | 公式サイト window-renovation2026.env.go.jp。登録事業者が申請 |
| 木造住宅の耐震改修補助(自治体) | 耐震診断→補強設計→改修工事の各段階に補助 | 国の総合支援メニューを使う自治体では工事費の8割・上限115万円。例:横浜市は一般世帯115万円、滋賀県は80%・上限115万円。1981年5月31日以前築が対象で、所有者か親族が住むことを条件にする自治体が多い | 所在地の市区町村。着工前申請が原則 |
| 空き家改修補助(自治体) | 空き家バンク登録物件などの改修 | 僕が見てきた範囲では上限50万〜100万円程度。「移住者」「一定年数居住」が条件のことが多く、自分の実家に戻る場合は対象外の自治体もある | 市区町村の空き家対策窓口 |
| 長期優良住宅化リフォーム推進事業(国交省) | 三世代同居の加算があった | 令和8年度は実施しない(令和7年度事業の公式サイト)。所得税の多世帯同居改修の控除は下の表のとおり残っている | 国交省 |
ローンを使わない工事や、ローン控除と組み合わせる工事には、所得税の減税があります(国税庁 No.1222・No.1219・No.1220・No.1224、令和8年4月1日現在の法令)。
| 減税(所得税) | 対象になる家・人 | 控除額 | 期限 | 住宅ローン控除との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅耐震改修特別控除 | 1981年5月31日以前築の自宅を現行の耐震基準に改修 | 標準的な工事費用(補助金を引いた額、上限250万円)の10%。併せて行う工事は5%の上乗せあり | 2028年12月31日までの工事 | 併用できる |
| 住宅特定改修特別税額控除(省エネ) | 窓の断熱などの省エネ改修。工事費50万円超 | 標準的な工事費用(上限250万円、太陽光発電を含めば350万円)の10%+上乗せ | 2028年12月31日までの居住 | どちらか選択 |
| 同(バリアフリー) | 50歳以上、要介護・要支援認定、65歳以上の親族と同居など。工事費50万円超 | 標準的な工事費用(上限200万円)の10%+上乗せ | 2028年12月31日までの居住 | どちらか選択 |
| 同(多世帯同居) | 調理室・浴室・トイレ・玄関のうち2つ以上を増設。工事費50万円超 | 標準的な工事費用(上限250万円)の10%+上乗せ | 2028年12月31日までの居住 | どちらか選択 |
前年まであった制度がなくなり、名前を変えて出てくる。これが補助金の常です。僕が自治体の窓口とやり取りするときの確認手順は3つです。
- 制度名で聞かず、状況で聞く。「築古の戸建てに自分で住む予定で、耐震・断熱・水回りを直す。使える補助はあるか」と伝える
- 併用できるかを聞く。国の省エネ補助と自治体の耐震補助は、工事の部位が違えば併用できることが多い。減税の計算では、もらった補助金を工事費から引く
- 申請のタイミングを聞く。ほぼ全部が「着工前」。契約してからでは間に合わない
📝 現場メモ|国の補助は予算で締め切る
国の住宅補助は予算に達した時点で受付終了になる。2023年のこどもエコすまい支援事業は9月28日に締め切られた。2026年9月16日時点でみらいエコ住宅2026のリフォーム枠は消化6%だが、自治体の耐震補助は件数上限で早く埋まる所がある。「来年戻る」なら冬に工務店を決める。
賃貸暮らしから戻る前に確かめる5つのこと
費用の話をしてきましたが、住むかどうかを決めるのは費用ではありません。「実家に戻って後悔した」という話を聞くと、理由はほぼ次の5つのどれかでした。自分の場合を当てはめてください。
| # | 確かめること | 確認する問い | 「戻る」に向く答え | 「戻らない」に傾く答え |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 通勤・仕事 | 職場までの時間と交通費。リモートは何年続くか | 片道1時間以内、または職場が変わっても成り立つ | 転勤・転職の可能性が高い |
| 2 | 地域との関係 | 町内会・消防団・草刈り当番。近所づきあいを続けられるか | 親の付き合いを引き継げる、配偶者も納得している | 配偶者が反対、または地域に縁がない |
| 3 | 親の介護と同居 | 親が同居するのか、施設に入る可能性は。介護が始まったら誰が担うか | 同居の役割分担を兄弟で合意済み | 「戻ったから介護は当然」になりそう |
| 4 | 兄弟との公平 | 住む人が家を相続するなら、他の相続人に代償金を払うか。相続前なら親と兄弟に伝えたか | 相場をもとに代償金か遺言で決めてある | 「住む人が得をした」と後で言われそう |
| 5 | 10年後に売れるか | この土地はいくらで売れるか。10年後、駅・学校・病院は残るか | 土地値がリフォーム費用を上回り、買い手がつく立地 | 周囲に空き家が増え、値がつくか不安 |
4番が一番揉めます。実家に住む=実家をもらう、になるからです。相続で家を1人がもらい、他の兄弟が現金を受け取る「代償分割」は、相場が分かって初めて金額が決まります。相続前に親名義の家に子がリフォーム費用を出すと、さらにややこしい。「弟がリフォーム代を出したから、その分は弟の取り分」と親が言っても、遺言に書かなければ他の兄弟には通じません。
5番は、住む人が一番考えたくないことです。でも僕は仲介として、リフォーム後に「やっぱり売る」になった方を何人も見てきました。転勤、離婚、親の介護で別の土地へ。住むと決めるときも、出口の値段は知っておいたほうがいい。
⚠️ 失敗メモ|代償金を決めずに住み始めた長男
相続前に長男が戻り、自費600万円でリフォームした。相続時、家の査定額が預金を大きく上回り、弟が代償金を求めて調停になった。リフォーム代を出した記録も合意書もなかった。住む前に相場を取り、費用負担と代償の考え方を遺言か家族の合意書に残せば防げた。
住まないと決めたときの出口。そして「残す」なら誰が住むのか
5つを確かめて「戻らない」になったら、選択肢は貸す・売る・当面残すに戻ります。住む案と比べるために、初期費用と出口を並べます。
| 選択肢 | 初期費用 | 年間の収支・維持費 | 出口 |
|---|---|---|---|
| 自分が住む | 300万〜2,000万円(リフォーム) | 家賃ゼロ。固定資産税・火災保険・修繕の積立で年20万〜40万円(僕の目安) | 10年後に売る場合、リフォーム費用は売値にほぼ乗らない |
| 賃貸に出す | 150万〜300万円(水回り・内装・残置物処分)。旧耐震なら耐震改修100万〜150万円が上乗せ | 家賃月7万円の試算で手残り年約54万円。大きな修繕が来ると崩れる | 入居中は売りにくい。売る予定があるなら定期借家 |
| 売却する | 約100万〜150万円(片付け・測量・印紙)+仲介手数料 | 0円 | 相続後なら3,000万円控除の期限(2027年12月31日まで、相続から3年目の年末まで)を確認 |
| 当面そのまま残す | 0〜数万円 | 年16万〜40万円の持ち出し+管理の手間 | 管理不全空家として勧告を受けると、翌年度から住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がる |
ここからは家族としての話です。うちは「親戚が集まる家を残したい」という家族の気持ちがあって、僕は数字で見ると売却派です。話し合いで僕が出した問いは一つで、「残すなら、誰が住むのか」でした。
住む人がいない家を残すのは、次の世代の空き家を作ることです。全国の空き家900万2千戸のうち、賃貸用・売却用・別荘などに当たらない「その他の空き家」は385万6千戸(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)。逆に、家族の誰かが本気で住むなら、残す案は急に現実的になります。僕自身が住む案も机上で試算しました。フルリフォームで1,500万円前後(想定)、耐震と断熱を入れても基礎は昭和のまま。建て替え3,000万円前後との差と、僕の通勤と、兄弟への代償を並べると、住む案は「ゼロではないが、今の僕には重い」というのが正直なところです。
ただ、これは今の僕の通勤先と家族の事情で出た答えです。実家の近くで働いていて、兄弟が「住む人が引き継ぐ」ことに納得しているなら、住む案が一番お金のかからない選択になることもあります。
この試算の土台になったのは、実家がいくらで売れるかという相場でした。相場がないと、代償金も、リフォームに1,500万円かける妥当性も、全部が空論になります。
🔢 数字メモ|住んでから売るなら3年目の年末
自分名義の家に住んだ後に売るなら、住まなくなった日から3年目の年末までに売れば譲渡所得から3,000万円を控除できる(国税庁 No.3302)。築年要件や2027年末の期限はない。一方、相続した家に一度住むと、相続空き家の3,000万円控除(No.3306)は使えなくなる。
僕が使っている、匿名で相場を知る方法
住むと決めている人にも、相場を先に取ることを勧めます。兄弟との代償金、リフォームにいくらまでかけるか、10年後の出口。どれも相場がないと決まりません。
ただ、まだ売ると決めていない段階で不動産会社に行くと、営業がかかります。そこで僕が使っているのがLIFULL HOME’Sの不動産売却査定です。仕事で一緒になることが多く、仕組みも分かっているので、正直に書きます。
良い点
- 匿名で査定を依頼できる。名前や電話番号を出さず、まず相場感だけ取れる
- 提携約1,700社、最大6社まで同時依頼。地方は大手より地元会社が強いことが多く、地元の会社にも届きやすい
- 連絡方法を選べる。「メール希望」にすれば電話攻勢は避けられる
気をつける点
- 大手不動産会社の登録は少なめ。大手の査定も欲しい場合は別途依頼する
- 会社によって対応の速さに差がある。連絡が来ない会社は候補から外せばいい
- 実名で詳しい査定に進むと、営業の電話が来ることがある。申込時に連絡方法を「メール」にしておく
- 査定額が一番高い会社が良い会社とは限らない。根拠を説明できる会社を選ぶ。家族会議で使うなら、複数社のうち低いほうから2番目くらいが現実的な数字だと僕は見ています
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よくある質問
Q. 親がまだ住んでいる実家に、同居の形で戻る場合もリフォーム費用は同じですか?
A. 工事の相場は同じですが、お金の出し方が変わります。親名義の家に子が費用を出すと親への贈与になるので、親が出すか、建物の持分を子に移すか、先に名義を変えるかを工事前に決めてください。二世帯に分ける間取り変更は300万円以上になりやすく、後で一世帯に戻すのも費用がかかります。自分名義の家で65歳以上の親と同居するなら、バリアフリー改修の減税(国税庁 No.1220)が使えることがあります。
Q. 築年が古い実家でも、住宅ローン控除は使えますか?
A. 買うか直すかで変わります。親などから買う場合は1982年1月1日以後築か耐震基準適合の証明が要り、生計を一にする親からの購入や贈与は対象外です(国税庁 No.1211-3)。相続などで自分の名義になった家を増改築する場合は築年要件がなく、工事費100万円超・10年以上のローン・増改築等工事証明書などで判断します(No.1211-4)。金融機関と税務署で事前に確認してください。
Q. リフォームか建て替えか、どこで線を引けばいいですか?
A. 僕の目安は、耐震・断熱・水回りを含めた見積が建て替え費用の6割を超えたら建て替えを検討、です。加えて基礎に鉄筋が入っていない家(僕が見てきた範囲では昭和40年代以前に多い)は、リフォームで耐震評点を上げるのに費用がかさみます。見積の前に耐震診断を受けて、評点と基礎の状態を見てから決めてください。
Q. 補助金を使うと、リフォーム会社は選べなくなりますか?
A. 国の「みらいエコ住宅2026事業」「先進的窓リノベ2026事業」は登録事業者しか申請できないので、会社選びの条件になります。自治体の耐震補助も「登録工務店」や「県内業者」に限る例があります。見積を取る前に、候補の会社が登録しているかを確認してください。
まとめ
- 築古の実家に住む費用は、部分リフォームで300万〜600万円、フルリフォームで1,000万〜2,000万円。基礎と土台は昭和のままで、売値にはほぼ乗らない。
- 住宅ローン控除は、買うなら「1982年1月1日以後築」か「耐震証明」、自分名義の家を直すなら築年不問で「工事費100万円超・10年以上のローン・工事証明書」。
- 親名義の家に子が費用を出すと贈与。工事前に名義の話を済ませる。
- 2026年度は「みらいエコ住宅2026事業」「先進的窓リノベ2026事業」と自治体の耐震補助が軸。減税は2028年末までで、耐震以外はローン控除と選択。補助はどれも着工前申請で、予算上限で締め切られる。
- 戻るかどうかは、通勤・地域・介護・兄弟との公平・10年後の出口の5つで決める。住む場合でも、相場を先に取る。
僕の実家では「残すなら誰が住むのか」がまだ決まっていません。決まったら、この続きも書きます。
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