築古の実家は耐震改修か建て替えか売却か|4つの選択肢と判断ライン

築古の実家は耐震改修か建て替えか売却か|4つの選択肢と判断ライン

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地震のニュースが流れるたびに、実家のことが頭をよぎる。そういう方に向けて書いています。

僕の実家は木造で、建築年は不詳。昭和初期に建ったと聞いているので、少なくとも築50〜60年、建築確認の記録すら残っていない家です。仕事で築古の家を見てきたぶん、自分の実家の柱と土台がよけいに気になります。

この記事では、旧耐震と2000年基準で何が違うのか、耐震診断にいくらかかってどこまで補助が出るのか、診断結果が出たあとに「耐震改修・建て替え・売却・現状維持」のどれを選ぶかの判断ラインを、国交省や日本建築防災協会の数字で整理します。最後に、僕自身が実家をどう判断しようとしているかも書きます。

数字は2026年9月時点の公開資料と各自治体の制度をもとにしています。補助金は自治体ごとに条件も金額も違うので、必ず所在地の市区町村で確認してください。税務・法務は税理士・司法書士等にご確認ください。

先に結論

  • 1981年5月以前に建築確認を受けた木造は「旧耐震」。熊本地震の悉皆調査では、旧耐震の木造は28.2%が倒壊・崩壊し、2000年基準以降は2.2%だった。築50年超の実家は、診断しなくてもこの区分に入っている。
  • 耐震診断は自治体の制度を使えば無料〜数万円、報告書まで3週間前後。診断だけなら、まだ何も決めなくていい。
  • 診断後の選択肢は4つ。耐震改修は木造2階建てで100〜150万円が最多で補助が出る。建て替えは3,000万円前後。売却は旧耐震でも「古家付き土地」として売れ、3,000万円控除は旧耐震の家ほど使える。
  • 分かれ目は「誰が、何年住むか」。決まっていないなら、改修も建て替えも先に動かず、相場を知るのが先。

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旧耐震・新耐震・2000年基準。実家はどこに入るか

まず、実家がどの基準で建ったかを確認します。境目は竣工日ではなく、建築確認を受けた日です。

区分建築確認日想定している地震木造の主なルール
旧耐震1981年5月31日まで震度5強程度で倒壊しない接合部の金物や壁の配置に明確な規定なし
新耐震(昭和56年基準)1981年6月1日〜2000年5月31日震度6強〜7で倒壊・崩壊しない必要壁量は強化。接合部・壁配置のバランスは未規定
2000年基準2000年6月1日以降同上地盤調査に応じた基礎、接合部金物の仕様、壁配置のバランス(四分割法)を明確化

この3区分がどれだけ差を生むかは、2016年の熊本地震で数字が出ました。益城町中心部の木造1,955棟を全棟調べた結果です。

建築時期調査棟数倒壊・崩壊無被害
〜1981年5月(旧耐震)759棟214棟(28.2%)39棟(5.1%)
1981年6月〜2000年5月877棟76棟(8.7%)179棟(20.4%)
2000年6月〜319棟7棟(2.2%)196棟(61.4%)

出典:国土交通省・建築研究所「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書(2016年9月)

旧耐震の木造は、およそ4棟に1棟が倒壊・崩壊し、無被害はわずか5%。うちのように建築確認の記録がない昭和初期の家は、言うまでもなく一番上の行です。前の記事で「現状維持は選択肢から外した」と書いたのは、この数字を仕事で知っていたからです。

築年が分からない場合は、法務局で建物の登記事項証明書を取ると「新築年月日」が載っています。固定資産税の課税明細書にも建築年があります。それでも分からなければ、僕の実家と同じで、旧耐震として扱って構いません。

築50年超の木造で、何が劣化しているか

基準の古さに加えて、築50年を超えた木造には「経年」の問題が重なります。仲介で築古を内見するとき、僕が見る順番で書きます。

部位築50年超でよく見る状態耐震への影響
基礎鉄筋の入っていない無筋コンクリート、または玉石の上に柱が載る「石場建て」揺れで基礎が割れる・柱がずれる
土台・柱の足元浴室・台所まわりの腐朽、シロアリの食害壁がいくら強くても足元から崩れる
接合部金物なし、ほぞ差しと釘のみ柱が土台から抜ける(熊本地震で確認された典型)
壁筋かいなしの土壁、南側が窓ばかりで壁が偏る壁量不足とねじれ
屋根土葺きの瓦で重い重心が高く、揺れが増幅する

気づいてほしいのは、「壁を足せば済む」とは限らないことです。土台が腐っていれば交換、基礎が無筋なら補強や打ち増しが必要で、費用は一段上がります。診断前に「うちは土台と基礎が弱そうか」の目星をつけておくと、見積が来たときに驚かずに済みます。

⚠️ 失敗メモ|壁だけ補強して基礎を見なかった例

耐震補強で壁を増やしたのに、床下の土台が腐っていて評点が上がらなかった家を見たことがあります。工事後に精密診断で発覚し、追加で基礎と土台の工事に100万円以上。最初の診断で床下と小屋裏を実際に覗いてもらう業者を選ぶのが回避策です。

耐震診断:費用・補助金・期間

「どうするか」を決める前に、耐震診断だけは受けておく価値があります。診断は改修の義務を生みません。家族と話す数字を手に入れるためのものです。

ステップ内容費用の目安期間の目安
1. 自治体の窓口に申込建築指導課・住宅課などで「木造住宅耐震診断」の制度を確認無料即日〜数日
2. 現地調査建築士等の診断士が訪問。床下・小屋裏・壁の配置を確認自治体制度なら無料〜自己負担数万円。自費なら10〜20万円/棟程度2〜3時間
3. 報告書上部構造評点と補強の方向性上記に含む診断日から3週間前後(僕の経験値)
4. 補強計画・設計改修する場合のみ。補強箇所と概算国と地方で費用の2/3を補助(国交省)1〜2か月

診断費用は東京都の耐震ポータルサイトで「10万円/棟〜20万円/棟程度」とされていますが、多くの自治体が旧耐震の木造を対象に無料診断や助成をしています。横浜市・江東区・滋賀県などは無料、東京都大田区は契約額18〜24万円のうち区が15〜20万円を負担し、自己負担は3〜4万円です(いずれも各自治体サイト、2026年9月時点)。

結果は「上部構造評点」という数字で返ってきます。

上部構造評点判定
1.5以上倒壊しない
1.0以上1.5未満一応倒壊しない
0.7以上1.0未満倒壊する可能性がある
0.7未満倒壊する可能性が高い

出典:一般財団法人日本建築防災協会「木造住宅の耐震診断と補強方法」

旧耐震の木造は、僕の経験では0.3〜0.6あたりに落ち着くことが多い。ここから1.0まで上げるのが耐震改修、上げる代わりに壊すのが建て替えか売却、というのが次の話です。

📝 現場メモ|診断結果は買主に開示される

旧耐震の建物は、耐震診断を受けていればその内容が重要事項説明の対象になります(宅建業法35条)。評点0.4と出た報告書は、売るときに買主へ渡ります。売却が有力なら「診断してから売る」か「古家付き土地として診断せずに売る」かを、先に仲介会社と相談してください。

診断結果が出たあとの4つの選択肢

選択肢初期費用の目安補助・特例向いている状況弱点
耐震改修木造2階建てで100〜150万円が最多。半数以上が約190万円以下国の総合支援メニューで工事費の8割・上限115万円(多雪地域・密集市街地は上限増額)。自治体の上限は100〜200万円親があと10年以上住む設備や断熱は直らない。空き家は対象外の自治体が多い
建て替え木造30坪で本体2,200〜2,700万円+解体90〜150万円=3,000万円前後旧耐震の除却に補助(補助率1/3〜1/2、上限50万〜150万円、着工前申請)子世代が本気で住む住む人がいないと次の空き家になる
売却片付け・測量で50〜100万円相続空き家の3,000万円控除(1981年5月31日以前築が要件)誰も住まない・遠方「集まる場所」は残らない
現状維持0円なし判断を先送りしたいとき年20〜30万円の維持費+倒壊リスク+管理不全空家の勧告

耐震改修:補助を使えば自己負担は半分以下

日本建築防災協会が補助制度を使った24,865事例を集計した「耐震改修工事費の目安」では、木造2階建ての改修は100〜150万円が最多で、半数以上が約190万円以下です。

補助は、国の「住宅・建築物耐震改修事業」(国交省)を各自治体が制度化して出しています。横浜市は一般世帯115万円・非課税世帯155万円、大田区は工事費の2/3で上限200万円、滋賀県は80%で上限115万円。200万円の工事なら自己負担は数十万円〜100万円程度です。

⚠️ 失敗メモ|空き家は改修補助が出ないことが多い

多くの自治体の耐震改修補助は「所有者か親族が居住する住宅」が条件で、横浜市も工事完了までの居住を要件にしています。親が施設に入って空き家になった後に申請して却下された例を見ました。改修するなら親が住んでいる間に。着工前の申請も必須です。

建て替え:判断の軸は費用ではなく「誰が住むか」

金額は表のとおり3,000万円前後。それよりも、前の記事でも書いた問いに尽きます。その家に誰が何年住むのか。決まっていないなら、3,000万円で次の世代の空き家を作るだけです。決まっているなら、複数社のプランを並べることから始めてください。1社の提案で決めると、坪単価の差だけで数百万円変わります。

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売却:旧耐震でも売れる。買主は「土地」を買う

「旧耐震の家なんて売れるのか」とよく聞かれますが、売れます。ただし買い方が違います。

旧耐震の木造は、買主が住宅ローンを組みにくく、耐震基準適合証明書がなければ住宅ローン控除も使えません。だから買主は「家」ではなく「古家付き土地」として見ます。価格は土地の相場から解体費を引いた額が基準になり、買主が自分で解体して新築するのが普通です。つまり売主が耐震改修をしてから売っても、その費用は価格に乗りません。

もう一つ、旧耐震だからこそ使える特例があります。相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除は、1981年5月31日以前に建築された家が要件です。2027年12月31日までの売却で、相続から3年目の年末までが期限。売った後、翌年2月15日までに買主が耐震改修か取り壊しをする形でも使えます。古い家ほど使える制度で、数百万円の税金差になります。

📖 用語メモ|耐震基準適合証明書

建築士等が「現行の耐震基準に適合する」と証明する書類。旧耐震の家でも、耐震改修して評点1.0以上になれば取得でき、買主が住宅ローン控除を使えるようになります。費用は僕が見た範囲で数万円〜十数万円。売却前に取るかどうかは、仲介会社に買主層を聞いてから決めてください。

現状維持:「人が集まる家」ほど危ない

何もしない選択にも費用と条件があります。固定資産税・火災保険・草刈りで年20〜30万円は出ていき、空き家になれば管理不全空家の勧告で住宅用地の特例が外れるリスクも加わります。そして、うちのように親戚が正月と盆に集まる家は、一番人がいるときに揺れたらという問題があります。現状維持を選ぶなら「いつまで」と期限を切ってください。

判断ライン:誰が何年住むか × 改修費 × 売却相場

ここまでの数字を1枚にします。横軸を「誰が何年住むか」、縦に「耐震改修費」と「売却相場」を置きました。

誰が、何年住むか耐震改修(100〜250万円、補助後50〜100万円程度)建て替え(3,000万円前後)売却
親が10年以上住む。住み替えは考えていない◎ 第一候補。親が住んでいる間に補助を使う△ 親の年齢と資金次第× 親の生活が優先
親があと数年。その後は空く見込み○ 最低限の補強(評点1.0まで)× 住む人がいない○ 元気なうちに相場と3,000万円控除の期限を確認
子世代が本気で住む△ 耐震だけでは設備・断熱が古いまま。フルリノベなら僕の見立てで1,000万円超◎ 複数社で見積×
誰も住まない。年数回集まるだけ× 補助の居住要件を満たさない× 次の空き家を作る◎ 集まる場所は別の形で作る

もう一つの軸が「売却相場」です。改修費と売却相場の比で線が引けます。

売却相場(土地)に対する耐震改修費の割合見方
5%未満(例:相場3,000万円、改修150万円)改修しても売却時の損は小さい。住み続けるなら改修が合理的
5〜10%住む年数で割る。10年住むなら年15〜25万円で安全を買う計算
10%超(例:相場1,000万円、改修200万円)改修費は売却価格に乗らない。住み続ける確度が低いなら、相場を先に取る

この表を埋めるには、売却相場の数字が要ります。改修費は診断で出ますが、相場は査定を取らないと分かりません。

🔢 数字メモ|延べ面積別の改修費目安

日本建築防災協会「耐震改修工事費の目安」では、木造2階建ての改修費は延べ面積100㎡で約180万円、150㎡で約230万円。同資料には延べ面積と評点差から概算する計算例(120㎡・評点0.3→1.0)も載っているので、診断書が出たら自分の家を当てはめてみてください。

僕は実家をどう判断しようとしているか

項目うちの実家判断
建物木造、建築年不詳(昭和初期)、建築確認の記録なし旧耐震として扱う
誰が何年住むかいまは親のひとりが住んでいる。その後に家族の誰かが本気で住む予定は、いまのところない。親戚が集まる場所として残したい親が住まなくなった後は「誰も住まない・集まるだけ」の行
耐震改修親が住んでいる今なら補助の居住要件を満たす可能性はある。ただ基礎が古く、壁の補強だけでは済まない見込み親があと何年住むかで判断が変わる。その後に誰も住まない家へ200万円超をかける理由は薄い
建て替え3,000万円前後。住む人が決まっていない前の記事で書いたとおり保留
売却昭和初期築なので3,000万円控除の建築年要件は当然満たす数字の上ではここに落ちる

耐震診断は受けます。理由は改修するためではなく、家族に「この家は評点いくつで、直すならいくら」を見せるためです。「地震が怖い」という僕の言葉より、報告書の数字のほうが話が進む。売買の仲介の現場で何度も見てきたことです。

そのうえで、僕は売却に傾いています。ただし家族の「集まる場所を残したい」を数字で論破するつもりはなく、売った資金で親戚が集まれる広さの住まいを近くに用意する案を出しています。この続きは、前の記事に書きました。

📝 現場メモ|査定書の「解体費」を必ず聞く

古家付き土地の査定書では、解体費がいくら引かれているかを聞いてください。木造30坪なら90〜150万円(HOME4Uほか)が目安で、200万円以上引かれていたら根拠を確認する。ここを説明できる会社は、値付けも信用できます。

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  • 連絡方法を電話・メール・郵送から選べる。「メール希望」にすれば電話攻勢は避けられる

気をつける点

  • 大手不動産会社の登録は少なめ。大手の査定も欲しい場合は別途依頼する
  • 会社によって対応の速さにばらつきがある。連絡が来ない会社は候補から外せばよい
  • 査定額が高い会社が良い会社とは限らない。根拠を説明できる会社を選ぶ

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よくある質問

Q. 耐震診断を受けると、改修や解体を義務づけられますか?

A. 戸建て住宅では義務は生じません。結果をどう使うかは所有者の自由で、診断だけ受けて数年様子を見る家も珍しくありません。

Q. 旧耐震の実家を、耐震改修してから売ったほうが高く売れますか?

A. 一般的には改修費を回収できません。買主の多くは解体前提で「古家付き土地」として見るからです。改修してから売る意味があるのは、駅近など立地が良く「住める中古」として買い手がつく場合に限られます。査定のときに両方の価格を聞いてください。

Q. 親がまだ住んでいます。改修と売却、どちらを先に考えるべきですか?

A. 親があと10年以上住むなら改修が先です。補助の居住要件もあるので、空き家になってからでは遅い。数年で空く見込みなら、いまのうちに相場を取っておき、空いた時点で3,000万円控除の期限を見て動くほうが無駄がありません。

Q. 診断で評点が0.7未満と出たら、すぐに住めなくなりますか?

A. 住めなくなることはありません。ただ「倒壊する可能性が高い」という判定なので、改修するまでの間、寝室を1階の壁が多い部屋にする、家具を固定する、といった減災は今日からできます。

まとめ

  • 1981年5月以前の建築確認なら旧耐震。熊本地震では旧耐震の木造は28.2%が倒壊・崩壊、2000年基準以降は2.2%。築50年超の実家は診断前からこの区分にいる。
  • 耐震診断は自治体制度で無料〜数万円、報告書まで3週間前後。診断は義務を生まず、家族と話す数字を作る。
  • 改修は100〜150万円が最多で補助あり。ただし居住要件と着工前申請に注意。建て替えは3,000万円前後で「誰が住むか」が全て。売却は旧耐震でも古家付き土地として売れ、3,000万円控除は旧耐震の家ほど使える。
  • 分かれ目は「誰が何年住むか」と「改修費÷売却相場」。相場が分からないと表が埋まらないので、匿名で相場を取るのが最初の一歩。

僕は診断を受け、売却に傾きながら家族と話しています。診断結果が出たら、この続きを書きます。

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