重要事項説明で聞くべきこと10項目|賃貸の重説チェックリストとその場で止める言い方

重要事項説明で聞くべきこと10項目|賃貸の重説チェックリストとその場で止める言い方

結論:重説は「止めていい説明」です。分からなければ署名しないでください

重要事項説明(重説)は、宅地建物取引業法35条で「契約が成立するまでの間に」宅地建物取引士が書面を交付して説明すると決められています。つまり、重説は契約の前に置かれた手続きであって、途中で質問しても、その日に契約しなくても、制度上は何の問題もありません。早口で読まれても、分からないまま署名する必要はないということです。

とはいえ、専門用語の書面を読み上げられる場で「どこで手を挙げるか」を決めておかないと、実際には止められません。ここでは説明する側から見て聞き逃すと後で効いてくる10項目と、その場で止める言い方をまとめます。

前提の整理:重説と契約書は別の書面です

同じ日に渡されるので混同されがちですが、役割が違います。

重要事項説明書(35条書面)賃貸借契約書
目的契約するかどうかを判断するための情報開示貸主と借主の権利義務を定める合意
渡される時点契約が成立するまでの間契約の成立時
説明する人宅地建物取引士(取引士証の提示が必要)法律上の指定はない
署名の意味説明を受けたことの確認契約内容に合意したことの表明
根拠宅建業法35条民法・借地借家法

法35条4項は、説明のとき宅建士は宅地建物取引士証を提示しなければならないと定め、同5項は書面への宅建士の記名を求めています。提示がないまま説明が始まったら形式が整っていないので、「取引士証を見せてもらえますか」と言って構いません。

もうひとつ、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、35条1項各号を「説明すべき事項のうち最小限の事項を規定したもの」としています。重説に載っていることが物件のすべてではありません。

賃貸の重説で説明される項目(法定の範囲)

建物を借りる場合に説明が義務づけられている項目は、法35条1項の各号と、同項14号を受けた宅建業法施行規則16条の4の3で決まっています。主なものを並べます。

分類説明される内容根拠
物件そのもの登記された権利の種類と内容/法令に基づく制限の概要/飲用水・電気・ガス・排水施設の整備状況法35条1項1号・2号・4号
建物の状態既存建物の建物状況調査の有無と結果の概要/石綿調査の記録があるときはその内容/1981年6月1日より前に着工した建物が耐震診断を受けているときはその内容法35条1項6号の2イ、規則16条の4の3第4号・5号(同号ロの設計図書等の保存状況は売買・交換のみ)
災害リスク造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域内にあるときはその旨/水防法の図面(水害ハザードマップ)における所在地規則16条の4の3第1号〜3号の2
お金借賃以外に授受される金銭の額と目的/損害賠償額の予定・違約金/支払金・預り金の保全措置/敷金など契約終了時に精算する金銭の精算法35条1項7号・9号・11号、規則16条の4の3第11号
契約の型契約期間と更新に関する事項/定期建物賃貸借・終身建物賃貸借であるときはその旨/契約の解除法35条1項8号、規則16条の4の3第8号・9号
使い方と管理台所・浴室・便所その他の設備の整備の状況/用途その他の利用に係る制限/管理受託者の氏名と住所規則16条の4の3第7号・10号・12号

この表はe-Gov法令検索で条文本文を確認して作りました。ここに載っていない事柄(隣人・騒音・日当たり・電波の入りなど)は法定の説明事項ではありません。だからこそ、内見と質問で埋める必要があります。見る場所は内見で見るべきチェックポイント完全ガイドにまとめています。

聞き逃すと困る10項目(チェックリスト)

説明する側から見て、あとで相談になりやすいのはこの10個です。読み上げられた瞬間に手元の書面へ印を付けて、最後にまとめて聞いてください。

  • 用途その他の利用に係る制限。ペット・楽器・法人契約・同居人の追加・民泊。ここに書かれていない使い方は、原則できないと考えてください。
  • 設備の整備の状況。付いているものが「設備」か「残置物」か。残置物は壊れても貸主が直す義務を負わないのが通例です。違いは家具家電付き賃貸のメリット・デメリットにまとめました。
  • 契約期間と更新に関する事項。普通借家か定期建物賃貸借か。定期借家なら期間満了で終わり、更新の権利がありません。
  • 契約の解除と解約予告。何か月前に言うのか、短期解約の違約金はあるか。手順は賃貸の退去連絡はいつまで?に書いています。
  • 敷金など契約終了時に精算する金銭。いくら預けて、何を差し引いて、いつ返すのか。敷金・礼金とは?返ってくる仕組みと合わせて読んでください。
  • 借賃以外に授受される金銭。礼金、鍵交換費用、消毒料、保証委託料、24時間サポート料。金額と「何の対価か」を必ず聞いてください。
  • 原状回復の取り決め。クリーニング費用の負担や、特約が付いていないか。
  • 告知事項の有無。判断の枠組みは事故物件の見分け方|「告知事項あり」のルールにまとめています。
  • 災害リスクの記載。「該当なし」と読み上げられても、地図のどこを見ているのかは聞く価値があります。
  • 管理受託者の氏名と住所。入居後に電話する先です。夜間や休日の連絡先が別かどうかも聞いておきます。

重要事項説明で、ほとんど質問が出ない項目

説明する側にいると、どの項目で手が挙がるかは毎回だいたい同じです。質問が集中するのは家賃・初期費用・入居日の3つで、残りは黙って聞かれています。そして入居後に相談になるのは、まさに質問が出なかったところです。

いちばん質問が出ないのは、設備の所有区分です。エアコン・給湯器・照明・コンロ。貸主の設備なら故障時は貸主が直しますが、前の入居者が置いていった残置物なら直す義務は原則として発生しません。重説では「設備の整備の状況」として一覧になっていますが、備考の小さい字に「残置物」と書いてあることがあります。「この一覧で、残置物はどれですか」と一度聞けば終わります。故障時の扱いはエアコンが壊れたら誰の負担?に書きました。

次に質問が出ないのが、用途の制限です。使用目的は「専ら住居として使用する」と書かれていることが多く、読み上げても引っかかりません。ですが、開業届の住所にする、人の出入りが増えるといった使い方は、事前に聞いてもらえれば通ることもあります。あとで発覚するより、契約前に聞いてもらったほうが貸主(大家)にとっても扱いやすいというのが正直なところです。

3つ目は、解約予告の起算点です。「1か月前」と読み上げられても、それが「通知が届いた日から」なのか「翌月1日から」なのかで、家賃1か月分が変わります。ここも一言確認すれば済みます。

IT重説と電子交付:変わったことと、変わらないこと

重説はオンラインでもできますし、書面をデータで受け取ることもできます。ただし条件があります。国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)は、テレビ会議等のITを活用する場合、次のすべてを満たしているときに限り、対面による重要事項の説明と同様に取り扱うとしています。

  • 宅建士と説明を受ける人が、図面等の書類と説明の内容を十分に理解できる程度に映像を視認でき、双方の音声を十分に聞き取れ、双方向でやりとりできる環境で実施していること。
  • 宅建士が記名した重要事項説明書と添付書類を、あらかじめ交付(電磁的方法による提供を含む)していること。
  • 説明を受ける人が書面を確認しながら説明を受けられる状態にあること、および映像と音声の状況を、宅建士が説明を開始する前に確認していること。
  • 宅建士が取引士証を提示し、それを画面上で視認できたことを確認していること。

同じ通達は、説明の開始後に映像が見えない・音声が聞き取れない状況が生じたら、直ちに説明を中断し、解消してから再開するとも書いています。ですから、画面が固まったのに進んでいくようなら「今、聞こえていませんでした」と言って止めて構いません。制度上はそれが正しい進め方です。

書面の電子交付も、法35条8項で相手方の承諾が前提です。通達では、承諾は記録に残る形で得ること、承諾後でも「電磁的方法での提供は受けない」と書面等で申し出れば電子提供はできないこと、提供する側は書面に出力できる形式で渡し、記載事項が改変されていないことを将来確認できる措置(電子署名等)を講じる必要があることが示されています。紙で欲しいなら、紙でくださいと言って差し支えありません。

一方で変わらないこともあります。宅建士が説明すること、取引士証を示すこと、書面に宅建士の記名があること、契約の前に行うこと。ここはオンラインでも紙でも同じです。国土交通省は実施マニュアル(令和6年12月版)も公表しています。

判断の分かれ目:その場で止める言い方

止めること自体は誰でもできます。問題は言い方です。角が立たず、かつ記録に残る形にするなら、次のような言い方が現実的です。

  • 読み上げ中に止めたいとき → 「すみません、いまの項目をもう一度お願いできますか」
  • 意味が分からないとき → 「この条文だと、具体的にはどういう場面のことですか」
  • 口頭の説明と書面が違うとき → 「いまのご説明を、書面のどこに書いてあるか指していただけますか」
  • 書面にないことを言われたとき → 「それは書面に追記していただけますか」
  • その日に決めたくないとき → 「持ち帰って確認してから連絡します」

とくに3つ目が大事です。口頭で「大丈夫ですよ」と言われた内容は、後から確かめる手段がありません。書面のどこに書いてあるかを指してもらい、なければ書き足してもらう。判断に迷うときは、契約前に管理会社または貸主に確認してください。

よくある質問

重説の当日に契約までしなければいけませんか

重説は「契約が成立するまでの間」に行うものなので、同じ日に契約する義務はありません。実務では同日にまとめることが多いですが、持ち帰って読みたいと伝えるのは正当な求めです。ただし人気の物件では待つ間に他の申込みが入ることもあります。止めるかどうかは、内容への不安と物件を失うリスクを比べて決めてください。

重説で説明されなかった項目があったら、契約は無効になりますか

「説明がなかったから契約が当然に無効」とは言えません。35条は宅建業者に対する規制で、違反は業法上の監督処分や罰則の対象になりますが、契約そのものの効力は別の枠組みで判断されます。不利益が出た場合は、まず宅建業者と管理会社に書面で説明を求め、それでも解決しなければ都道府県の宅地建物取引業の担当課や宅建協会の相談窓口、消費生活センターに相談してください。

契約書と重要事項説明書で内容が違っていたらどうしますか

署名する前に指摘してください。どちらかが誤記である可能性が高いので、その場で直してもらうのがいちばん早いです。重説を先に作り、契約書へ転記する過程で数字や日付がずれることがあります。とくに賃料・共益費・契約期間・解約予告・敷金の精算は、2つの書面を並べて突き合わせる価値があります。署名後に気づいた場合は解釈の問題になるので、早めに書面で申し入れてください。

オンラインの重説で、あとから紙の書面をもらえますか

電子交付は相手方の承諾が前提なので、承諾しなければ紙で交付されます。受け取ったデータは書面に出力できる形式であることが求められているので、印刷して保管しておくと安心です。

まとめ

  • 重説は宅建業法35条により、契約が成立するまでの間に宅建士が書面を交付して行うもの。途中で止めても、その日に契約しなくても問題ない。
  • 宅建士は取引士証を提示し(35条4項)、書面に記名する(同5項)。提示がなければ求めてよい。
  • 説明が出ないまま流れやすいのは、設備の所有区分(設備か残置物か)、用途の制限、解約予告の起算点の3つ。
  • IT重説は4つの要件をすべて満たす場合に限り対面と同様に扱われる。映像・音声が途切れたら説明は中断される。
  • 口頭の説明は「書面のどこに書いてあるか指してもらう」。書いていなければ追記を求める。判断に迷うときは契約前に管理会社または貸主に確認を。

参照した条文・資料:宅地建物取引業法 第35条第1項・第4項・第5項・第8項/宅地建物取引業法施行規則 第16条の4の3(いずれもe-Gov法令検索で本文を確認)/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」令和8年4月1日施行版 第35条第1項関係1・2、第35条第8項関係/国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」令和6年12月版/国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」。いずれも2026年9月21日に確認しました。

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