結論:追加で見られているのは3点だけ。書類でほぼ埋まります
外国籍の方の入居審査で、日本国籍の方と比べて追加で確認されるのは、実質①在留資格と在留期間 ②日本語でのやりとりと緊急時の連絡経路 ③退去時の原状回復と残置物の段取りの3点です。収入や勤務先の見方は変わりません。
そして、この3つは書類と事前の取り決めでほとんど埋まります。前提として押さえておきたいのは、「日本の国籍を有しない者」は、住宅セーフティネット法の施行規則3条1号で「住宅確保要配慮者」と定められていることです(同法2条1項6号を受けた国土交通省令)。国として入居の促進を図る対象に、法令で明記されています。国土交通省は貸主・仲介会社向けの「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」も14言語で公開しています。断られるのが当然という状態ではありません。
前提の整理:在留カードのどこが見られるのか
在留カードは、出入国管理及び難民認定法19条の3により中長期在留者に交付されます。逆に言うと、3か月以下の在留期間の方、短期滞在、外交・公用の方には交付されません。記載事項は同法19条の4で決まっていて、審査で見られるのは次の欄です。
| 在留カードの欄 | 根拠 | 審査での意味 |
|---|---|---|
| 在留資格 | 法19条の4第1項3号 | どんな活動で日本にいるか。更新の見通しを推し量る材料になる |
| 在留期間の満了の日 | 同3号 | ここがいちばん見られます。契約期間より先に来る場合、更新の予定を聞かれる |
| 就労制限の有無 | 同5号 | 収入の継続性を見る材料。「就労不可」でも、別に収入源があれば話は進む |
| 資格外活動許可の有無 | 同6号 | 留学生がアルバイト収入を示すときに関係する |
| 住居地 | 同2号 | 現住所の確認。入居後は変更の届出が必要(後述) |
| カードの有効期間の満了の日 | 法19条の5 | 永住者は交付日後の10回目の誕生日(交付時18歳未満なら5回目)、それ以外は在留期間の満了の日 |
賃貸借契約は2年で結ぶことが多い一方、在留期間が1年や6か月という方もいます。ここで止まるケースがありますが、問われているのは「期間が短いこと」そのものではなく「更新の見通しが説明できるか」です。在職証明書や在学証明書、更新申請の予定を添えると、話の進み方が変わります。
用意すると通りやすくなる書類(チェックリスト)
申込みの前にそろえておくものです。上から順に効きます。
- 在留カードの表裏のコピー。裏面には住居地の変更履歴や資格外活動許可が記載されます。表だけ出すと、たいてい裏も求められます。
- 在留期間の更新に関する説明。在職証明書、在学証明書、雇用契約書、更新申請の予定。「いつまで日本にいる予定か」を一言添えられる状態にしてください。
- 収入を示す書類。源泉徴収票、給与明細、課税証明書。留学生なら送金の記録や奨学金の決定通知。見られ方は日本国籍の方と同じで、詳しくは賃貸の入居審査に通らない理由とは?にまとめています。
- 緊急連絡先を2つ以上。勤務先や学校の担当者、日本にいる友人、監理団体や登録支援機関の担当者。日本語でやりとりできる連絡先が1つあると、審査の見え方が大きく変わります。
- 家賃債務保証会社の利用を前提にしておく。外国籍の方の受け入れに慣れた保証会社があります。仕組みは賃貸保証会社とは?保証料の相場・審査に書きました。
- 退去時の説明資料。国土交通省が「原状回復のポイント」と「入退去時の物件状況確認リスト」を14言語で公開しています。入居前にこれを一緒に見ておくと、退去時の認識のずれが減ります。
初期費用の内訳は日本国籍の方と同じです。敷金・礼金という日本独特の項目は事前に理解しておくと交渉しやすくなります(敷金・礼金とは?返ってくる仕組み)。部屋探し全体の流れははじめての部屋探し 完全ガイドにまとめています。
貸主(大家)が不安に思っている3つと、それが消える条件
断る理由になりやすい不安は3つで、どれも「その人がどういう人か」ではなく「何かが起きたときに話が通じるか」の問題です。そして3つとも、条件がそろえば消えます。
ひとつ目は、連絡が取れなくなることへの不安です。帰国してしまって部屋が空いたまま家賃が止まる、連絡先が海外の電話番号しかない、といった状況が心配されています。これは日本国内の緊急連絡先が2つあれば、ほぼ消えます。親族である必要はありません。勤務先の担当者、学校の留学生担当、監理団体や登録支援機関の方でも十分です。
ふたつ目は、住まい方のルールが伝わるかどうかです。ゴミの分別と収集日、共用部の使い方、夜間の音。これは国籍ではなく、説明する側の準備の問題です。国土交通省が14言語で出している「部屋探しのガイドブック」と、多言語版の賃貸住宅標準契約書の見本を使えば、たいていは足ります。借りる側からも「この資料で確認しました」と言ってもらえると、管理会社の側のハードルが下がります。
みっつ目は、退去のときです。原状回復の範囲で揉める、荷物を残したまま帰国される、といったことが心配されています。これも入居時の説明で大きく変わります。多言語版の「入退去時の物件状況確認リスト」を入居時に一緒に記入しておけば、退去時に何が入居前からあった傷かが残ります。この1枚があるかどうかで、退去時の話し合いはまったく違うものになります。
付け加えると、国籍そのものを理由に一律に断ることは、貸主にとっても合理的ではありません。国は「日本の国籍を有しない者」を住宅確保要配慮者に位置づけ、貸主・仲介会社向けの実務マニュアルまで用意しています。それでも入居を断られて納得がいかないときは、法務省の外国語人権相談ダイヤル(0570-090-911、平日9時〜17時)が使えます。英語・中国語・韓国語・フィリピノ語・ポルトガル語・ベトナム語・ネパール語・スペイン語・インドネシア語・タイ語に対応しています(2026年9月21日確認)。各地の法務局や自治体の外国人相談窓口も窓口になります。
判断の分かれ目:どの経路から当たるか
- 勤務先・学校・監理団体・登録支援機関に先に相談する。受け入れ実績のある仲介会社を紹介してもらえることが多く、これがいちばん早い経路です。
- セーフティネット登録住宅を探す。住宅確保要配慮者の入居を拒まないものとして登録された住宅で、国土交通省の情報提供システムから地域で絞れます。
- UR賃貸住宅。礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要という仕組みで、収入などの申込資格を満たせば申し込めます。UR賃貸住宅とはとUR賃貸の審査と申込資格を先に読んでください。
- 公社・公営住宅。自治体ごとに条件が違うので、お住まいの自治体の募集要項で確認してください。
- 自治体の外国人相談窓口・居住支援法人。物件だけでなく、保証会社や見守りまで含めて相談できます。
よくある質問
在留期間が1年しかありません。2年契約はできませんか
契約期間は当事者の合意で決まるもので、在留期間と一致しなければならないという決まりはありません。実務では2年契約のまま進むことが多く、聞かれるのは「更新の見通し」です。在職証明書や在学証明書、更新申請の予定を示せるようにしておいてください。なお、貸主によっては期間を区切った契約を提案されることもあります。その場合は普通借家か定期建物賃貸借かを重要事項説明で必ず確認してください。終わり方がまったく違います。
日本語があまり話せません。それだけで断られますか
日本語でやりとりできる連絡先が1つあれば、実務上は進みます。勤務先や学校の担当者に同席してもらう、内見と契約に通訳として来てもらう、という形が現実的です。国土交通省は賃貸住宅標準契約書や重要事項説明書の各国語の見本を公開しているので、仲介会社に「多言語版の資料はありますか」と聞いてみてください。
入居したあと、役所でやることはありますか
あります。中長期在留者は、市区町村の窓口へ在留カードを提出して住居地を届け出ることになっています(市区町村を経由して出入国在留管理庁長官へ届け出る形)。期限は条文で分かれていて、新規上陸で在留カードの交付を受けた場合は住居地を定めた日から14日以内(出入国管理及び難民認定法19条の7)、すでに日本に住んでいて引っ越した場合は新住居地に移転した日から14日以内(同法19条の9)です。引越しのたびに必要になります。手続きの細部は、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
「外国人不可」と書かれた物件は、あきらめるしかないですか
その物件に時間をかけるより、受け入れ実績のある経路を先に当たるほうが早いです。ただし、納得がいかない扱いを受けたと感じた場合は、相談できる窓口があります。法務省の外国語人権相談ダイヤル(0570-090-911)、各地の法務局の人権相談窓口、自治体の外国人相談窓口です。個別の事情によって判断が分かれるので、一般論として「違法かどうか」をここで断定することはしません。まずは窓口に事実を伝えて相談してください。
まとめ
- 追加で見られるのは、在留資格と在留期間、日本語でのやりとりと緊急連絡、退去時の段取りの3点。収入の見方は変わらない。
- 在留カードで見られるのは在留資格・在留期間の満了の日・就労制限の有無・資格外活動許可・住居地(入管法19条の4)。永住者以外はカードの有効期間が在留期間の満了の日と同じ(同19条の5)。
- 「日本の国籍を有しない者」は住宅セーフティネット法施行規則3条1号で住宅確保要配慮者とされ、国土交通省は貸主向けのガイドラインと14言語の資料を公開している。
- 効く準備は、在留カードの表裏・更新の見通しを示す書類・収入資料・日本国内の緊急連絡先2つ・保証会社・多言語の入退去確認リスト。
- 入居後は14日以内に市区町村へ住居地の届出(新規上陸後は入管法19条の7、引越しの場合は同19条の9)。
- 納得がいかない扱いを受けたときは、法務省の外国語人権相談ダイヤル(0570-090-911)や自治体の窓口へ。契約条件の最終的な確認は、管理会社または貸主に行ってください。
参照した条文・資料:出入国管理及び難民認定法 第19条の3・第19条の4・第19条の5・第19条の7・第19条の9/住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律 第2条第1項第6号・同法施行規則 第3条第1号(いずれもe-Gov法令検索で本文を確認)/国土交通省「外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について」(外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン、部屋探しのガイドブック、大家さん・不動産事業者のための外国人の受入れガイド、原状回復のポイント、入退去時の物件状況確認リスト)/法務省「外国語人権相談ダイヤル」。いずれも2026年9月21日に確認しました。
