UR賃貸住宅を検討する方から特に多いのが、申し込みと審査に関する質問です。「保証会社の審査に落ちた経験があるけれど大丈夫か」「収入基準に届かないと無理なのか」「先着順と抽選はどう違うのか」。この記事では、宅建士として賃貸の契約実務に関わり、大家として入居審査を判断する側にも立つアパートメントラボが、UR賃貸住宅の申込手続きを一般の賃貸と比較しながら解説します。先に結論を言うと、URの手続きは民間賃貸の「審査」とは考え方がかなり違います。
一般の賃貸の「審査」と、URの「資格確認」は別物
民間の賃貸物件では、申し込むと保証会社の審査と貸主(大家)の承諾という2段階の判断が入ります。保証会社は過去の滞納履歴などを見ますし、大家は職業や人柄も含めて総合的に判断します。つまり「基準を満たしていても断られることがある」のが民間の仕組みです。私自身、申込を受ける側として悩むことがあります。
一方のURは、保証人を立てる代わりに申込者本人の資格を確認する形をとっています。定められた条件を満たしているかを書類で確認する手続きで、性質としては審査というより資格の確認に近いものです。この違いを理解しておくと、準備すべきことがはっきりします。保証会社の審査については賃貸保証会社の記事、民間の入居審査については入居審査の記事で解説しています。
申込資格の5つの条件
UR都市機構は公式サイトのよくあるご質問で、次の5つの条件をすべて備えていることが必要としています。
- 申込者本人の平均月収額が、基準月収額以上あること
- 日本国籍の方、またはURが定める資格を持つ外国籍の方で、継続して自ら居住するための住宅を必要としていること
- 単身者、または現に同居しているか同居しようとする親族がいること
- 同居世帯全員が、入居開始可能日から1か月以内に入居でき、円満な共同生活を営めること
- 同居世帯全員が暴力団員などではないこと
基準月収額は物件の家賃によって変わります。ここが唯一の関門になることが多いのですが、満たせない場合の代替手段も複数用意されています。
収入基準に届かないときの5つの選択肢
ここは知らないまま諦めてしまう人が多い部分なので、丁寧に整理します。
- ① 家賃等の一時払い制度——家賃を前払いすることで、収入基準の要件に代えられる仕組みです
- ② 貯蓄基準制度——月額家賃の100倍以上の貯蓄額があれば、収入基準に代えられるとされています
- ③ 親族との収入合算——基準月収額や基準貯蓄額の2分の1以上がある場合に、親族と合算できる場合があります
- ④ 扶養親族の基準で申し込む——高齢者、障がいのある方、父子・母子世帯、学生は、扶養している親族が基準を満たせば申し込める場合があります
- ⑤ 就職予定の場合の証明——現時点で収入がなくても、UR指定様式の収入証明書と雇用関係を証明する書類で対応できるとされています
民間の賃貸では、収入が基準に届かない場合の解決策は「連帯保証人を立てる」か「条件が合わないと諦める」かの二択になりがちです。貯蓄額で代替できる、家賃の前払いで代替できるという発想は、民間ではあまり見ない仕組みだと思います。手元資金はあるが月々の収入が変動しやすいフリーランスの方などには、現実的な選択肢になり得ます。
申込から入居までの7ステップ
手続きの流れは次のとおりです。民間の賃貸と違うのは、内覧が仮申込の後でもできる点です。
- お部屋探し——Webサイトまたは店舗で希望の物件を探します
- 申込資格の確認——前述の条件を満たしているかを確認します
- 仮申込——入居申込書を記入して仮申込を行います。下見の相談も可能です
- 物件の内覧——仮申込の後でも内覧できます。担当者に伝えて手配してもらいます
- 本申込——必要書類を揃えて営業センターへ。ここで資格確認が行われます
- 契約——契約に必要な書類を揃えて手続きします
- 入居——鍵は入居開始可能日以降に、管理サービス事務所などで受け取ります
なお、電話での申し込みは受け付けていないとされています。物件ページに「ネットで仮申込」のボタンが表示されている物件は、インターネットからの仮申込も可能です(ユーザー登録が必要)。海外赴任中の方でも、日本国内の連絡先を用意すれば申し込めるとされています。
かかるお金と、かからないお金
| 項目 | UR賃貸住宅 | 一般的な賃貸の目安 |
|---|---|---|
| 敷金 | 月額家賃の2か月分 | 0〜2か月分 |
| 礼金 | なし | 0〜2か月分 |
| 仲介手数料 | なし | 家賃の0.5〜1か月分+税 |
| 更新料 | なし(1年ごとに自動更新) | 2年ごとに家賃1か月分程度の地域も |
| 保証料 | 保証人・保証会社が不要 | 初回に家賃の50〜100%程度+更新料 |
| 入居時の火災保険料・鍵交換費用・クリーニング費用 | 入居時には不要とされています | それぞれ必要なことが多い |
入居時に必要なのは、敷金・日割り家賃・日割り共益費とされています。ただし退去時には住戸の状況によって鍵交換やクリーニングの費用がかかる場合がある点は押さえておいてください。敷金は退去時に基準に沿って査定され、契約解除日から原則30日以内に精算後の金額が返還される流れです。精算額が敷金を超えた場合は、退去までに不足分を支払うことになります。
先着順と抽選、それぞれの仕組み
全国に約70万戸あるUR賃貸住宅のほとんどは、抽選なしの先着順で受け付けているとされています。空室があれば店舗で申し込めるため、気に入った住戸が出たときにどれだけ早く動けるかが勝負になります。民間の物件のように「申込は入ったが大家の判断待ち」という不確定な時間が発生しにくいのは、探す側としては動きやすいところです。
一方、新築物件や高齢者向け優良賃貸住宅など一部は抽選です。抽選は一度の抽選で全ての部屋の当選番号と補欠番号を決める方式で、部屋ごとに個別に抽選するわけではありません。障がいのある方、高齢者、子育て世帯などの優遇区分に該当する場合は、最大20倍とされる優遇倍率が適用され、その分だけ抽選番号が多く付与される仕組みです。なお、1つの世帯が複数の部屋に申し込むことはできません。
注意|手数料を取る「申込代行」に気をつける
URの公式情報でも注意喚起されている点です。手数料を取って入居申込みを代行する業者は、UR都市機構とは一切関係がないとされています。仲介手数料がかからないことがURの特徴なのに、代行手数料を払ってしまっては本末転倒です。
不動産の情報を探していると、公式のように見えて実は別事業者、というサイトに行き着くことがあります。物件情報の見極め方はおとり物件の見分け方の記事にまとめているので、あわせて参考にしてください。
アパートメントラボの現場から
大家として申込を受ける立場だと、収入や勤務先だけでは判断しきれない場面が必ずあります。だからこそ保証会社を挟むのですが、その分だけ借りる側の負担も増えていきます。URが保証人も保証会社も使わず、基準を満たすかどうかで判断する形をとれているのは、規模と公的な性格があってこそだと思います。逆に言えば、基準を満たすことが最重要なので、収入面に不安がある方ほど「代替手段があるか」を先に調べておくと、部屋探しの進め方が変わってくるはずです。
よくある質問
過去に家賃を滞納したことがあると不利ですか?
保証会社を通す民間の賃貸とは確認の仕組みが異なります。ただし、どのような確認が行われるかを断定的にお伝えすることはできないため、不安がある場合は窓口に相談してみるのが確実です。
内覧してから決めたいのですが、順番はどうなりますか?
仮申込の前に下見を相談することもでき、仮申込の後でも内覧は可能とされています。先着順の物件は動きが早いので、気になる住戸があれば早めに問い合わせるのが現実的だと思います。
1年ごとの自動更新とは、どういう意味ですか?
定期借家契約を除き、契約は1年ごとに自動で更新され、更新の手続きも更新料も不要とされています。民間の賃貸で2年ごとに書類のやり取りと更新料が発生するのと比べると、手間の面でも差があります(更新料の記事)。
まとめ|基準を確認し、代替手段を知っておく
UR賃貸住宅の申し込みは、保証人や保証会社を使わない代わりに、申込者本人が条件を満たしているかを確認する形で進みます。収入基準に届かない場合でも、貯蓄や家賃の前払い、親族との合算といった代替手段が用意されています。まずは希望する物件の基準月収額を調べ、自分がどのルートで申し込めるかを整理するところから始めてみてください。実際の住戸はUR賃貸住宅の特設ページから動画で確認できます。制度全体はUR賃貸住宅の基本ガイド、費用を抑える制度は家賃が下がる制度の記事にまとめています。
畠山 晴允(はたけやま はるみつ)/アパートメントラボ合同会社 代表・宅地建物取引士
登録者14万人のYouTubeチャンネル「アパートメントラボ」を運営し、賃貸・分譲・戸建ての内見動画を制作。自身も広島で一棟アパートを経営する現役の不動産オーナー。UR都市機構などの物件PR動画も手がけ、賃貸を「借りる側」と「貸す側」の両方の視点から発信しています。運営者について >