結論:どのサイトを見ても同じ物件が出るのは、元が同じだからです
賃貸サイトを3つ4つ見比べて、同じ部屋ばかり出てくる。あれは気のせいではありません。1つの部屋を、掲載の承諾を得た複数の仲介会社が、それぞれ自社の名前で載せているからです。元になっている情報は1つです。だから「サイトを増やす」のは、ある段階から先はほとんど効きません。
効くのは順番を変えることです。(1)総合ポータルで条件と相場をつかむ →(2)管理会社が自分で出している情報に当たる →(3)公的賃貸を別枠で確認する →(4)気になったエリアの仲介会社に、希望条件を預ける。この順で動くと、ポータルに出ていない部屋まで拾えます。理由を、情報が流れる仕組みから説明します。
賃貸の物件情報は、どう流れているか
部屋が募集に出るまでの流れは、だいたいこうです。
- ①貸主(大家)が募集を決める。退去の予告を受けた時点で、次の募集条件を考え始めます。
- ②管理会社(元付)が募集図面を作る。家賃、初期費用、入居可能日、広告の条件を決めます。
- ③業者間の流通システムに載る。ここを見ているのは不動産会社だけです。一般の人は見られません。
- ④仲介会社(客付)が、広告掲載の承諾を得て各ポータルに載せる。ここで初めて一般の人の目に触れます。
④の工程を、10社が同時にやることがあります。それが「同じ物件が何社からも出る」の正体です。掲載社数が多い部屋は、人気の部屋という意味ではありません。広告掲載の条件が緩く、客付会社にとって扱いやすい物件だ、という意味に近い。この見方ができると、検索結果の見え方が変わります。
もうひとつ、賃貸ならではの事情があります。売買では、専任媒介契約を結んだ宅建業者に指定流通機構(レインズ)への登録義務があります(宅地建物取引業法34条の2第5項)。ところが同条は「宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約」についての規定で、賃貸の媒介にはこの登録義務がありません。だから賃貸では、「どこかに必ず集約された一覧がある」という状態になっていません。管理会社が自分のところで抱えている部屋、これから募集に出る部屋は、どのポータルにも出ていないことがあります。
サイトの型ごとの違い
会社名で比べるより、型で分けたほうが使い分けが整理できます。それぞれ得意なことが違います。
| 型 | 載っているもの | 強いところ | 弱いところ |
|---|---|---|---|
| 総合ポータル | 各地の仲介会社が掲載した物件 | 件数が多く、条件で絞れる。相場をつかむのに最適 | 同じ部屋が重複する。募集前の部屋は載らない |
| 仲介会社の自社サイト | その会社が扱っている物件 | 問い合わせ先が1社に定まる。地域に強い会社は情報が早い | その会社の取扱い範囲しか見えない |
| 管理会社・自社物件型 | その会社が管理している物件 | 元付の情報なので条件が正確。ポータルより早く出ることがある | 物件数が限られる。会社ごとに探しにいく手間がある |
| 公的賃貸(UR・公社・公営) | UR・住宅供給公社・自治体の住宅 | 礼金・仲介手数料・更新料がない、保証人不要など仕組みが違う | 民間のポータルには基本的に載らない。別枠で探す必要がある |
| メディア・特集型 | 編集された物件紹介や解説記事 | 写真・動画で部屋の雰囲気まで分かる | 掲載数が少ない。募集終了が反映されにくいことがある |
この分類で言うと、当サイトは最後の型です。内見した部屋を動画と記事にしているので、条件から物件を探すページや物件マップで、実際の部屋の様子まで見てから問い合わせ先を選べます。総合ポータルで相場をつかんだあと、気になったエリアの部屋を動画で確認する、という使い方が合っています。
探す順番
- 1. 総合ポータルで相場を確定させる。希望エリア・間取り・条件で検索し、家賃の幅を見ます。この段階の目的は物件探しではなく相場の把握です。ここで条件を欲張りすぎると、あとの工程が全部ずれます。
- 2. 条件に優先順位をつける。譲れないものを3つまでに絞ります。部屋探しの手順で整理の仕方を書きました。
- 3. 公的賃貸を別枠で確認する。UR・公社・公営は民間ポータルに載りません。条件に合えば初期費用の構造が大きく変わります。UR賃貸住宅とはを先に読んでおくと判断が早くなります。
- 4. 希望エリアの管理会社・地域の仲介会社に条件を預ける。ここが効きます。募集に出る前の部屋を持っているのは元付の会社です。「来月◯日から入居希望、家賃◯万円台、条件は◯◯」とはっきり伝えておくと、出た瞬間に連絡が来ます。
- 5. 内見は1日にまとめる。日をまたぐと記憶が混ざり、比較になりません。内見のチェックポイントを持って回ります。
動く時期も結果に効きます。繁忙期と閑散期でどう違うかは部屋探しはいつから?にまとめました。
貸主から見て、どこに出すと決まりやすいか
貸主は、ポータルサイトに直接お金を払っていません。掲載料を払っているのは、掲載した仲介会社です。では貸主は何にお金を使っているかというと、客付会社に対する広告料です。決まったときに、仲介手数料とは別に広告料を支払う取り決めをすることがあります。
この構造から、いくつかのことが説明できます。
- 掲載社数が多い部屋=人気とは限らない。広告の条件が良い物件は、客付会社が積極的に載せます。埋まりにくい部屋ほど条件を良くするので、むしろ逆のこともあります。
- 同じ部屋なら、どの会社から申し込んでも家賃は同じ。家賃と初期費用を決めているのは貸主です。違うのは仲介手数料の取り方と、担当者の力量です。
- いちばん早く情報を持っているのは管理会社。退去の予告が入った時点で、部屋が空くことを知っているのは貸主と管理会社だけです。そこからポータルに出るまで、数日から数週間の時差があります。
- 条件の相談は、元付に近いほど通りやすい。貸主に話が届くまでの人数が少ないほど、返事が早く、調整もしやすい。フリーレントや設備の追加といった相談は、ここで差が出ます。
もうひとつ正直に書くと、貸主は「この人なら」と思える申込みを優先したいと考えています。同じ日に複数の申込みが入ったとき、どちらを通すかは貸主の判断です。丁寧に内見して、質問をして、条件を整理してきた人は、担当者の紹介文からそれが伝わります。サイト選びより、ここのほうが結果を左右することがあります。
サイトに出ていない物件は、どこにあるか
- まだ募集に出ていない部屋。退去予告は入っているが、原状回復の見積りが終わっていない段階。管理会社に条件を伝えておくと、ここで声がかかります。
- 公的賃貸。UR・公社・公営は、それぞれの窓口とサイトでしか募集していません。
- 広告掲載を限定している物件。貸主の意向で掲載社を絞っている場合があります。分譲マンションの1室などで見かけます。
- 現地の看板・貼り紙だけの物件。自主管理の貸主が近隣にだけ告知しているもの。エリアを絞って歩く価値はあります。
逆に、いつまでも出ているのに問い合わせると「さっき決まりました」と言われる物件には注意してください。掲載の更新が遅れているだけのこともありますが、そうでない場合もあります。見分け方はおとり物件の見分け方7選にまとめました。不動産広告には景品表示法と、不動産公正取引協議会連合会の「不動産の表示に関する公正競争規約」というルールがあり、実際には取引できない物件の広告は禁じられています。
判断の分かれ目:どこまでサイトを増やすか
| 状況 | すること | 理由 |
|---|---|---|
| 探し始めたばかり | 総合ポータル1〜2つで相場を見る | この段階の目的は相場の把握。数を見ても判断軸ができない |
| 条件は決まったが、良い部屋が出てこない | サイトを増やさず、管理会社・地域の仲介会社に条件を預ける | ポータルに出ていない部屋に届くのはこの経路だけ |
| 家賃の上限を超えそう | 公的賃貸と、条件の優先順位の見直し | 初期費用の構造が変わると、上限そのものが変わる |
| 候補が多すぎて決められない | 動画や写真の多い記事型で絞ってから内見 | 図面だけでは生活の想像がつかない。内見の回数を減らせる |
よくある質問
同じ物件が複数のサイトに出ています。どこから申し込むのが得ですか
家賃と初期費用は、どこから申し込んでも同じです。決めているのは貸主だからです。変わるのは仲介手数料の取り方(無料・半額をうたう会社があります)と、担当者の対応の速さです。仲介手数料の仕組みは仲介手数料の相場と上限で確認してください。手数料が安い代わりに別の名目の費用が乗っていないか、内訳を出してもらうのが確実です。
不動産屋に行くと、サイトと違う物件をすすめられます
その会社が元付の物件や、広告の条件が良い物件が優先されることはあります。ただ、すすめられた物件が悪いとは限りません。ポータルに出ていない部屋を持っているのが、まさにその会社だという場合もあるからです。判断の仕方は単純で、自分が最初に決めた条件の優先順位に照らすこと。合っていれば見る、合っていなければ「その条件は外せません」と言う。それだけです。
賃貸にもレインズのような一覧はありますか
不動産会社が見る業者間の流通システムはありますが、一般の人は見られません。また、宅建業法34条の2第5項の指定流通機構への登録義務は「売買又は交換」の専任媒介契約に課されたもので、賃貸の媒介には登録義務がありません。そのため賃貸には「ここを見れば全部ある」という一覧が存在しません。これが、管理会社に条件を預ける意味が大きい理由です。
問い合わせは何社までしていいですか
問い合わせ自体は何社でも構いません。ただし同じ物件を複数社に問い合わせるのは避けてください。元付には同じ話が重複して届き、誰の紹介か分からなくなります。エリアや物件を分けて、2〜3社に絞るのが動きやすい形です。申込みは1件ずつ。契約手続きの進み方は部屋探し・契約の記事まとめから順に読めます。
まとめ
- 同じ物件が並ぶのは、1つの部屋を複数の客付会社がそれぞれ掲載しているから。掲載社数は人気の指標ではない。
- 賃貸の媒介には指定流通機構への登録義務がない(宅建業法34条の2第5項は売買・交換の媒介契約の規定)。だから「全部載っている一覧」は存在しない。
- 順番はポータルで相場 → 条件の優先順位 → 公的賃貸 → 管理会社・地域の仲介会社に条件を預ける。
- 家賃と初期費用はどこから申し込んでも同じ。変わるのは仲介手数料の取り方と担当者。
- ポータルに出ていない部屋に届くのは、元付に条件を預けた場合だけ。
各サービスの仕様や掲載の条件は変わります。実際の取扱い範囲や費用は、問い合わせ先の不動産会社に直接確認してください。
