結論:においは出どころを特定すれば、直す人と払う人が決まります
部屋が臭うとき、消臭剤を足す前にやることはにおいの出どころを1つに絞ることです。出どころが決まれば、自分で直せるものか、管理会社へ連絡するものか、そして費用を誰が負担するのかまで、ほぼ自動的に決まります。
賃貸の部屋のにおいは、たいてい次の6つのどれかです。排水口(封水切れ)/エアコン内部/換気扇と給気口/結露によるカビ/前の入居者の残り香/建物側(ゴミ置場・排水管)。このうち、いちばん多くて、いちばん簡単に直るのが排水口です。まずそこから当たってください。
前提の整理:排水のにおいは「封水」が切れているサイン
キッチン・洗面台・浴室・洗濯機置場の排水口の下には、必ず排水トラップという部品が入っています。建築基準法施行令129条の2の5を受けた昭和50年建設省告示第1597号で「排水管内の臭気、衛生害虫等の移動を有効に防止するための配管設備」と定義されているもので、同じ告示はその深さ(溜まっている水の深さ。いわゆる封水深)を5センチメートル以上10センチメートル以下とすること(阻集器を兼ねる排水トラップは5センチメートル以上)、通気管は「排水トラップの封水部に加わる排水管内の圧力と大気圧との差によって排水トラップが破封しないように有効に設けること」と定めています(2026年9月21日に告示本文を確認)。
つまり、下水のにおいが部屋に上がってくるのは、この5〜10センチの水が無くなっているときだけです。原因は2つに絞れます。
- 蒸発(自分で直せる)。長期の不在、あるいはほとんど使っていない排水口(浴室の床、使わない洗面台)で水が蒸発した状態。コップ1〜2杯の水を流せば戻ります。
- 破封(管理会社へ)。上階で大量の水を流した直後に「ゴボッ」と音がして臭う、というのが典型です。配管の通気がうまくいっていない可能性があるので、建物側の問題として連絡してください。
洗濯機置場だけ臭う場合は、排水ホースの差し込み方が関係していることがあります。仕組みは間接排水とは|直接排水との違いと洗濯機置場での注意点に書きました。
発生源6つと見分け方
| 出どころ | においの特徴 | 見分け方 | まず誰が動くか |
|---|---|---|---|
| 排水口(封水切れ) | 下水・アンモニアのような臭い | 水を流した直後に弱まるなら、ほぼこれ | 自分(水を流す) |
| エアコン内部 | 運転開始の数分だけ酸っぱい・カビ臭い | 止めるとにおいも止まる | 自分(送風運転・フィルター掃除) |
| 換気扇・給気口 | 外や隣の生活のにおいが入る | 換気扇を止めると変わる。給気口のフィルターが黒い | 自分(フィルター交換)/続けば管理会社 |
| 結露によるカビ | 押入れ・北側の壁で土のようなにおい | 家具を動かすと壁が黒い、ぬめる | 自分(換気と除湿)/広ければ管理会社 |
| 前の入居者の残り香 | 入居初日から部屋全体が同じにおい | 窓を開けても数日で戻る | 管理会社(入居直後に連絡) |
| 建物側(ゴミ置場・排水管) | 時間帯や季節で強くなる | 共用廊下でも臭う。玄関を開けた瞬間に臭う | 管理会社 |
切り分けのコツは、「止めると消えるか」を試すことです。エアコンを止める、換気扇を止める、窓を開ける、水を流す。1つずつ試して変化があった操作が、出どころを指しています。
自分で直せるもの・管理会社に言うもの(チェックリスト)
上から順に試してください。3つ目までで解決しなければ、管理会社へ連絡する段階です。
- 使っていない排水口すべてに水を流す。浴室の床、洗面台、洗濯機置場、ベランダ。これで直るケースがいちばん多いです。
- 排水口のゴミ受けとトラップのわん(お椀型の部品)を外して洗う。ぬめりが溜まっているとそれ自体が臭います。道具は賃貸OKの排水口ケアにまとめました。
- エアコンのフィルターを外して洗い、冷房のあとに送風運転を回す。賃貸OKのエアコン掃除グッズに手順を書いています。
- 給気口(壁の丸い口)のフィルターを確認する。真っ黒なら交換します。
- ここまでで直らない、または共用廊下でも臭う・上階で水を流すと臭う・入居時から臭う場合は管理会社へ。「いつ」「どこで」「何をすると強くなるか」をメモして伝えると、業者の手配が速くなります。
玄関・下駄箱まわりのにおいは原因が別なので、賃貸OKの消臭グッズ|靴・下駄箱・玄関のにおいを原因別に解決を見てください。生ゴミの置き方は賃貸OKの生ゴミ・ゴミ箱の消臭にまとめています。
貸主(大家)は原状回復でにおいをどう扱うか
貸す側にとって、においは退去時にいちばん判断が難しい項目です。傷は見えますが、においは写真に残りません。だから国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の書き方に沿って扱うのが原則になります。
ガイドラインは、タバコ等のヤニ・臭いについて「喫煙等によりクロス等がヤニで変色したり臭いが付着している場合は、通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多い」「賃貸物件での喫煙等が禁じられている場合は、用法違反にあたる」としています。喫煙によるにおいは借主負担になりやすい項目です。
ただし負担の範囲には条件が付きます。ガイドラインは「喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当」と書いています。居室全体に及んでいる場合に限って、居室全体が借主負担ということです。さらにクロスは6年で残存価値1円となるような負担割合で算定するとされているので、長く住んだ部屋ほど借主の負担割合は小さくなります。「新しく張り替えるから全額」ではありません。
逆に、エアコンの内部洗浄は喫煙等による臭いが付着している場合を除き、次の入居者を確保するためのものとして賃貸人負担が妥当とされています。ペットの飼育による柱やクロスのキズ・臭いは借主負担の側です。退去費用全体の考え方は退去費用の相場はいくら?原状回復はどこまで借主負担かに書きました。
判断の分かれ目:入居したときから臭う場合
入居初日から部屋全体が同じにおいで、窓を開けても数日で戻る。これは前の入居者の残り香がクロスや床材に残っている可能性があります。この場合、大事なのは「早く言うこと」と「記録を残すこと」です。
- 入居してすぐ、管理会社へ連絡する。日をおくほど「入居後に付いたのでは」と扱われやすくなります。
- 入居時の写真と、連絡した日時を残す。クロスの黄ばみ、換気扇の油、エアコンの吹き出し口。においは写らないので、においの原因になりそうな状態を撮っておきます。
- 入退去時の物件状況確認リストがあれば、そこに書く。ガイドラインが様式を示しているもので、管理会社から渡されることがあります。
ただし、「入居時から臭うなら必ず貸主が直す」とは言い切れません。原因の特定が先で、負担区分は個別の事情によります。記録を残したうえで、対応を管理会社または貸主に確認してください。
よくある質問
排水口にパイプクリーナーを流しても臭いが消えません
におい自体が配管の奥ではなく、封水が切れて下水の空気が上がってきているのかもしれません。薬剤を足す前に、まず水を流して封水を戻してください。それでも消えない場合は、トラップの部品が正しく組まれていない、あるいは配管側の問題が考えられるので管理会社へ。薬剤は製品の使用上の注意に従い、指定されていない薬剤を混ぜないでください。
エアコンの臭いは自分で洗ってもいいですか
フィルターの掃除は入居者の通常の手入れの範囲です。内部の分解洗浄は、自分でやらないでください。故障させると負担の話になります。ガイドラインでは、エアコンの内部洗浄は喫煙等による臭いが付着している場合を除き貸主負担が妥当とされているので、臭いが取れないときは管理会社に相談するのが筋です。設備の故障や不具合の伝え方はエアコンが壊れたら誰の負担?にまとめました。
押入れの中が土のようなにおいがします
カビの可能性が高いです。北側の壁、家具の裏、押入れの奥は空気が動かず結露しやすい場所です。結露を放置して拡大させたカビは、借主の手入れを怠ったものとして扱われることがあります。見つけた時点で換気と除湿を始め、広がっているなら管理会社へ連絡してください。予防と負担の考え方は賃貸の結露・カビ対策に書いています。
退去時に「においがする」と言われて費用を請求されました
まず何のにおいで、どの範囲かを確認してください。範囲と経過年数(クロスは6年で残存価値1円となる考え方)を踏まえた算定になっているかを聞き、その場で署名せず内訳を書面でもらうのが先です。考え方は退去費用の相場はいくら?にまとめています。
まとめ
- においは出どころを1つに絞ってから対処する。排水口・エアコン・換気扇と給気口・結露のカビ・前入居者の残り香・建物側の6つ。
- 排水トラップの深さ(封水)は告示で原則5〜10センチと定められている。下水のにおいはこの水が切れたサイン。まず水を流す。
- 上階で水を流すと臭う、共用廊下でも臭う、入居時から臭う。この3つは管理会社へ。
- 喫煙によるヤニ・臭いは借主負担になりやすいが、居室全体の負担になるのは居室全体に及んでいる場合のみ。クロスは6年で残存価値1円となる考え方で負担割合を算定する。エアコンの内部洗浄は、喫煙等による臭いが付着している場合を除き貸主負担が妥当とされている。
- 入居時から臭うなら、すぐ連絡して記録を残す。ただし負担区分は個別事情によるので、最終的な判断は管理会社または貸主に確認してください。
参照した資料:建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件(昭和50年建設省告示第1597号。最終改正 平成22年国土交通省告示第243号。建築基準法施行令129条の2の5第2項6号・第3項5号にもとづく)/国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表1・別表2・別表3。いずれも2026年9月21日に本文を確認しました。
