K物件を買ってからの1年で分かったのは、2つのことでした。フルローンで買っても、買った後の1年で約400万円の現金が出ていくこと。そして、管理会社に任せきりにしていると、空室の情報がきちんと出回っていないことさえ気づけないことです。この回では、元金据え置きの数字、税金と売電の話、管理会社を変えるまでを順に書きます。
元金据え置きで、毎月約36万円が手元に残った
2.5億円の融資には、紹介してくださった社長さんが先回りして頼んでくれていた「元金据え置き」が付いていました。最初の一定期間は元金を返さず、利息だけを払う仕組みです。私の据え置き期間は6か月でした。金融機関からもらった返済予定表の数字をそのまま出します。
| 時期 | 支払い | 中身 |
|---|---|---|
| 2025年9月22日(初回) | 370,205円 | 利息のみ(日割りで少し安い) |
| 2025年10月〜2026年2月 | 毎月489,583円 | 利息のみ |
| 据え置き中の合計(6回) | 2,818,120円 | 元金は1円も減っていない |
| 2026年3月23日〜 | 毎月847,740円 | 元利均等(初回は利息489,583円・元金358,157円) |
据え置き中と据え置き明けの差は、毎月約36万円です。この36万円が6か月間、手元に残りました。ただし、282万円を払っても借金は借りたときのままです。「返済が軽くなる」というより、「返済を先送りして、その間の利息を払っている」と言うほうが正確です。
282万円の利息を「時間を買う代金」と考えた理由
282万円は、据え置きを選ばなければ払わずに済んだお金です。正直、悩みました。それでも受け入れた理由は2つあります。
ひとつは、第1回で書いたとおり、社長さんが取得初年度の不動産取得税まで見越して据え置きを頼んでくれていたことです。手元資金ゼロで買った私には、最初の1年を乗り切る現金が要りました。
もうひとつは、100部屋まで規模を広げたいという目標です。次の物件を買う自己資金を、どこかで作らなければなりません。据え置き中に残る毎月36万円を貯めて、次の元手にする。282万円の利息は、次に進むための「時間を買う代金」だと考えることにしました。K物件は購入時点で26部屋中24部屋が稼働していて、売主さんから1年間の家賃保証も付いていたので、据え置き中に「貯める」が成り立つという読みもありました。
一方で、据え置きは使い方を間違えると、返済総額が増えるだけの仕組みです。利息は満額かかり、35年返済のスタートが後ろにずれるだけなので、払う利息の合計は増えます。貯まったお金を余裕資金だと思って使ってしまえば、据え置きが明けた月から支払いが36万円上がり、資金繰りが詰まります。私の試算では、35年返済で入居率が80%を下回るとK物件は赤字になります。据え置きは、この構造を何も変えません。据え置きを提案されたら、「その間に貯まるお金を何に使うか」を先に決めておくことをおすすめします。
不動産取得税3通、合計2,432,400円が届いた日
K物件を買ったのは2025年8月29日です。約半年後の2026年2月8日、県税事務所から不動産取得税の納税通知書が3通届きました。宅地317,500円、共同住宅A棟1,303,900円、共同住宅B棟811,000円で、合計2,432,400円。納期限は3月2日で、納付に使ったシステムの利用料20,088円を足すと、実際に出ていったのは2,452,488円です。
この金額は購入前に試算していて、「約250万円は来る」と分かっていました。それでも、3通を並べた瞬間に手が止まりました。頭で分かっている数字と、納期限が印字された紙の重さは別物でした。その日、Xには「きた…泣」とだけ投稿しています。
あとで返済予定表を見返すと、据え置きの最後の支払いが2月20日、取得税の納期限が3月2日、据え置き明けの初回返済が3月23日でした。「据え置きで取得税に備えましょう」という社長さんの設計は、日付の単位で合っていたことになります。ちなみに、2.5億円で買ったK物件の固定資産税評価額は合計81,084,248円で、売買価格の3割ほどでした。購入前の取得税の試算も、この評価額の目安で行っていました。
2か月後に固定資産税1,354,700円、売電は4〜5か月止まった
取得税を払って、ようやく現金が貯まり始めると思った4月8日、今度は令和8年度の固定資産税の納税通知書が届きました。1,354,700円です。これも来ることは分かっていましたが、契約前に書類で確認していた金額より増えていました。今の金額は新築の減額が効いている状態で、期限が切れた後は建物の分が上がる前提で収支を試算しています。制度の中身は新築アパートを買った翌年に出ていく現金にまとめています。
入ってくるはずのお金が入らない話もありました。K物件には太陽光パネルがあり、売電収入は月平均5万円ほどです。名義の切り替えに時間がかかると引き継ぎで聞いていたので、「2か月分、14,000円くらいは入らないだろう」と見込んでいました。実際は、引き渡しから4〜5か月、まったく入金がありませんでした。逸失は20〜25万円で、想定の10倍以上です。税金は計算どおりでしたが、売電は計算が甘かったと反省しています。
フルローンでも、買った後の約400万円は自分の現金で払った
購入後1年で出ていった、あるいは入ってこなかった現金をまとめるとこうなります。
| 項目 | 金額 | 時期 | 事前の見込み |
|---|---|---|---|
| 不動産取得税 | 約245万円(2,432,400円+利用料20,088円) | 取得から約半年後(2026年2月通知・3月2日納期限) | 約250万円と試算済み |
| 固定資産税(令和8年度) | 約135万円(1,354,700円) | 2026年4月通知 | 試算済み。ただし契約前の書類より増えた |
| 太陽光売電の引き継ぎロス | 約20〜25万円 | 引き渡しから4〜5か月 | 約14,000円(2か月分)と見込んでいた |
| 合計 | 約400万円 | 購入後1年 | 税金は想定内、売電は想定外 |
取得税と固定資産税だけで約380万円が、買ってから8か月の間に出ていきました。据え置きで毎月36万円を貯めていても、8か月で約290万円です。それだけでは足りません。物件価格は借りられても、その後の税金は借りられない。この400万円は全部、自分の現金で払っています。
買った後の1年に出ていく現金は購入前に計算していましたが、それでも驚きました。計算していなかったら、驚くだけでは済まなかったと思います。据え置きの利息282万円は、この400万円を乗り切るための保険料だった、と今は考えています。
挨拶回りの先で分かった「空室の一部しか載っていない」
2025年の年末年始、K物件に入居者を決めてくれた仲介会社さんへ挨拶回りをしました。賃貸仲介の現場にいたので、繁忙期の前に仲介会社さんの頭の中に物件を入れておく大切さは知っていました。手土産はスーパーで買ったチルドカップのコーヒーを袋いっぱい。用件を話したらすぐ帰るのがコツです。
そのうちの一社で、担当の方が業者間の物件情報サイトでK物件を検索してくれました。管理会社が登録すると、他の仲介会社がそれを見てお客さんに紹介できる仕組みのサイトです。返ってきた一言は「載ってないですね」。正確には何部屋かは載っていましたが、空いている部屋の全部ではありませんでした。管理会社以外の仲介会社は、K物件の空室の全体を知る手段がなかったことになります。
その方は「年明けには動きますね」と言ってくれましたが、その日のうちに電話が鳴りました。「キーボックスの番号を教えてください。本日中に写真を撮って掲載しますね」。動く会社はこんなに速い。嬉しさと同時に、管理会社はこの1年何をしていたのだろうと考えていました。
最初は登録忘れの「うっかり」だと思っていました。ただ、その後のやり取りや管理を変えるまでの経緯を並べると、他社に紹介させず自社だけで決めて広告料と手数料を取る、いわゆる「囲い込み」だったのではないかと、今の私は考えています。これは私の推測で、確かめられたわけではありません。それでも、空室が埋まらない間も返済は毎月続いていました。
ほかにも、ポータルサイトの写真が足場の組まれた建築中のものだったこと(2回お願いしても変わらなかった)、LINEの返事が1週間後にしか来ないことが続きました。途中から、週1回LINEで募集状況を報告してもらうルールを私から作りました。
繁忙期の解約2件と、ADを選んだ理由
2026年4月、繁忙期の終わりに解約が2件重なり、K物件は26部屋中22部屋、入居率85%になりました。近くにはオートロックと防犯カメラ付きの新築が建ち、うちより3,000〜4,000円高い家賃で満室になっていました。
管理会社の提案は「フリーレント2か月+家電付き」でした。本当は私もフリーレントにしたかったのですが、選んだのは広告料(AD)2か月です。仲介会社さんには「必要ならフリーレント2か月に振り替えてもらっていい」と伝えました。空室の情報が出回っていなかった件が頭にあり、まず他の仲介会社に「決めたい物件」として見つけてもらう必要があったからです。道具の使い分けは空室対策の3つの道具に書いています。
9月1日、サブリースに切り替えた
売主さんの1年間の家賃保証は2026年8月で終わりました。それに合わせて9月1日から、別の管理会社とのサブリース契約に切り替えました。条件は次のとおりです。
- 賃料保証率:90%
- 契約開始から3か月:空室分は免責
- 退去時:1か月の免責
サブリースは世間で「悪」のように言われることが多い仕組みです。だからこそ自分で体験してみようと思いました。もうひとつは、管理の仕組みがきっちりしていると知っている会社だったからです。数字の中身と、この判断が正しかったかは別の回で書きます。前の管理会社の担当者からは、切り替わるまで連絡は一つもありませんでした。そして、切り替えた後すぐに満室になりました。
この1年で、管理会社は「任せる相手」ではなく「一緒に経営する相手」だと考えるようになりました。業者間サイトに載っているか、写真は完成後のものか、報告は上がってきているか。それを確かめるのは所有者の仕事です。管理会社を選ぶなら、物件の提案の上手さより、LINEの返信が翌日までに来るかを見てください。選び方の全体は賃貸の管理会社の選び方にまとめています。
この回で分かったこと
- 元金据え置きは返済を先送りする仕組みで、6か月で利息2,818,120円を払っても元金は減りませんでした。貯まるお金の使い道は先に決めておくべきでした。
- フルローンでも、買った後1年で取得税・固定資産税・売電ロスの約400万円は自分の現金で払いました。
- 試算していた税金より、引き継ぎの細かいところ(売電の名義切り替え)のほうが見込みから外れました。
- 空室が業者間サイトにすべて載っているかは、所有者が自分で確かめないと分かりませんでした。
- 管理会社は連絡の速さで選びます。任せきりは安心ではなく放置でした。
もっとくわしく(note の元記事)
畠山の活動報告・賃貸経営のこれまで
- 第1回:フルローン2.5億円で1棟目を買うまで|金融機関2つに断られて分かった融資の見られ方
- 第2回:元金据え置きと買った後の400万円、管理会社の変更|フルローンでも現金は要る(この記事)
- 第3回:融資期間10年で見送った築古7,000万円のM物件|指値の根拠と金融機関の変化
