2025年8月29日、私は広島県内にある新築の賃貸アパート(26世帯・約2.5億円)を、フルローン・35年・金利2.5%で法人として取得しました。この記事では「K物件」と呼びます。ポータルサイトに一度も載らなかった物件が仕事のつながりから届き、自分で回った金融機関2つに断られ、売主からの紹介でようやく融資が通るまでの記録です。
先に分かったことを言うと、金融機関が見ていたのは物件だけではありませんでした。会社と、私という人間と、案件を持ち込んだ人の信用まで含めた全体でした。
K物件の取得条件
まず、取得したときの条件です。
| 項目 | K物件の条件 |
|---|---|
| 物件 | 新築の賃貸アパート・26世帯(広島県内) |
| 価格 | 約2.5億円 |
| 自己資金 | ゼロ(フルローン) |
| 融資期間 | 35年 |
| 金利 | 2.5% |
| 返済の形 | 元金据え置きつき |
| 仲介手数料 | 0円(売主の会社から直接購入) |
| 名義 | 法人 |
| 契約日・決済日 | 2025年8月26日・8月29日 |
| 建物 | A棟・B棟の2棟(初めて買った物件) |
決済の日、私は自宅で動画を編集していました
契約は8月26日、金融機関に出向いて対面で行いました。その朝もいつもどおり娘の食事を作り、娘と同じタイミングで家を出ました。違ったのは行き先だけです。
契約の場で決済の方法を説明され、少し驚きました。「決済日は集まらず、お電話で引き渡しになります」とのことでした。私はそれまでにも不動産の売買を何度か経験していましたが、売主も買主も誰も集まらない決済は初めてでした。収益物件ではよくあることだそうです。
帰りは、売主の社長さんのマイバッハで駅まで送っていただきました。これから2.5億円の借金を背負う人間が、ピカピカの車の助手席に座っている。借金をするのに、なんだこの優雅さは、と思いました。
決済日の8月29日は、説明どおり誰も現地に集まらず、電話の連絡で正式に引き渡されました。そのとき私は自宅で、UR賃貸住宅の物件の動画を黙々と編集していました。電話が鳴って、引き渡しが完了したと告げられ、2.5億円の物件が自分のものになりました。
実感はまったく湧きませんでした。報告する相手もいませんでした。それが少し寂しく、しばらくしてから、その日のうちにXに投稿しました。
体を壊して、収益の柱を増やそうと考えた
「YouTubeで登録者14万人いるなら、それで十分では」と思われるかもしれません。でも私には、YouTubeだけで生きていく自信がありません。再生数も案件の単価も、プラットフォームの仕様変更ひとつで大きく揺れる世界だからです。
加えて、育児があります。日中に動けるのは実質8時から16時ぐらいで、足りない分は娘を寝かしつけた後、夜10時から深夜4時まで仕事をして補っていました。起きるのは7時なので、睡眠は3〜4時間。これを続けた結果、体に出ました。動悸がしょっちゅう出て、救心がないと動けない日もありました。目の横に帯状疱疹も出ました。
子どもが二十歳になるまでは元気でいたい。そう考えて、この働き方を改めると決めました。そこで「安定した収益の柱をどう増やすか」を考え続けて出た答えが、賃貸経営でした。一度入居していただければ、何か月、何年という単位で収益が続く。時間と引き換えに収入を得る仕事とは、お金の入り方が根本から違います。もっとも、実際には手間がかからないどころか、かなりの時間を使っています。
なお、ここで書く賃貸経営はすべて法人で行っています。会社として融資を受け、会社の事業として運営しています。私の場合、会社を作って1年目、2年目は金融機関に相手にされず、3期分の決算書が揃ってようやく交渉の席につけました。ここまでに5年かかっています。
ポータルサイトに載らない物件が、仕事のつながりから届いた
私は普段、投資用のポータルサイトで新着の通知を受け取り、長く掲載されている物件には値下げを交渉する、というごく普通のやり方で物件を探しています。1棟目もその先にあると思っていました。
実際は、まったく別のところから来ました。YouTubeで何度も仕事をご一緒してきた、ある不動産会社の社長さんです。その社長さんから「この物件、売ろうと思うんですが、欲しい人いないですかね?」と言われ、「ここにいます。私に買わせてください」と即答しました。
仲介の現場にいた感覚でいえば、向こうから持ちかけられる物件はまず警戒するものです。売り急ぐ物件には、たいてい理由があるからです。それでも即答できた理由は2つあります。
- 相手をよく知っていた:撮影を通じて、現場でスタッフにどう接するか、入居者の話をどんな顔でするかまで見てきた方でした。
- 売る理由に納得できた:物件のエリアが社長さんの会社の管理エリアから外れていて、最初から「自社では持ち続けず、いずれ売る」前提で建てた物件でした。
売主も利益は乗せています。それを差し引いても、新築なのに利回りがしっかり出る水準でした。売主の会社から直接買うので、仲介手数料は0円です。「裏がある物件」ではなく「表に出る必要がなかった物件」でした。
社長さんから見た私は、YouTuberである前に一緒に仕事をしたことのある相手で、しかも普段から「いずれ自分でも一棟持ちたい」と口にしていました。クローズドの物件情報は、探している人ではなく「この人に売ってもいい」と思われた人のところに来るのだと、身をもって知りました。
自分で回った金融機関2つに断られた
物件はある。売主は信頼できる。条件もいい。ただ、お金がありません。私がお願いしようとしていたのは、借入額2.5億円・自己資金ゼロ・期間35年・新築アパート26室。初めて賃貸経営をする人が、自己資金なしで2.5億円を貸してほしいと言っているわけです。決算書3期分、事業計画書、物件資料、レントロールを揃え、地域の信用組合を自分の足で2つ回りました。
1つ目の面談が始まってすぐ、「融資を希望するお客さん」ではなく「ユーチューバーが来た」と思われていると気づきました。最初の質問は「YouTubeって、再生されたらお金がもらえるんですか?」。取引先の企業名を挙げて説明しても、質問は「暗号資産って何ですか?」「レンディングというのは何をされているんですか?」と続きました。資産の一部を暗号資産で持ち、その一部を貸し出して利息を受け取る運用をしていて、それを正直に申告していたからです。
個人の借金や貯金、株や不動産などの資産、妻の勤め先、持ち家か賃貸か、子どもはいるか、まで聞かれました。会社と私個人を一体として、「35年間返し続けられる人間か」を見られていたのだと思います。結局、面談の多くは「あなたは何者で、何で稼いでいるのか」の説明に使われ、物件の収支の話まではなかなかたどり着けませんでした。後日、電話でお断りの連絡が来ました。書類と説明を磨き直して臨んだ2つ目も、結果は同じでした。
2つに共通していた理由は、次のとおりです。
- 初めての取引で2.5億円は大きすぎる:当時の会社の年商は5,000万円以下。年商の5倍を超える額でした。空室が続いたり家賃が下がったりしたとき返済を支えるのは本業の体力で、それが足りないと見られました。
- 暗号資産の印象:「あまり印象が良くない」とはっきり言われた場面もありました。資産のつもりで出したものが、価格が大きく動くリスクとして受け取られました。
- 業態の珍しさ:YouTubeで稼ぎ、暗号資産を持ち、レンディングをしている。普段お付き合いしている事業者とは何もかも違い、よく分からないものには貸せないということだったと思います。
「もっと小型の案件から始めてみてはどうでしょうか」とも言われました。2つ目に断られたときは、物件の購入自体を諦めようかと思いました。ただ、門前払いせず時間を取って資料を読み込み、判断してくれたこと自体には、今は感謝しています。
売主からの紹介で、フルローンが通った
融資が2連敗していることは、売主の社長さんに正直に報告していました。すると「付き合いのある銀行を紹介しましょうか?」と言っていただき、止まっていた話が一気に動き出しました。自分で回っていたら、まず候補に挙がらなかった金融機関です。
| 比べる点 | 自分で回った2つ | 紹介で入った1つ |
|---|---|---|
| 私の見え方 | どこの誰か分からない、YouTuberらしき人 | 付き合いのある売主が連れてきた買主 |
| 面談の時間の使い方 | ほとんどが自分の説明 | 自分を説明する資料を事前に用意した |
| 暗号資産 | 聞かれて答えた | 聞かれる前に開示し、組み替える用意も伝えた |
| 審査の単位 | 私と会社だけ | 売主の実績と紹介を含めた案件の全体 |
| 結果 | 電話でお断り | 2.5億円・35年・フルローン・2.5%で承認 |
面談の前、社長さんから「自分の説明をするための資料を作っておいたほうがいいですよ」と助言をもらいました。どんな事業をしているか、取引先はどこか、チャンネルがどうやって売上になっているかを、初めて見る方にも分かる資料にしました。説明も「YouTuberです」ではなく、「UR賃貸住宅などのPRを請け負うメディア事業です」と、相手が知っている会社名から入るように変えました。
面談では「キャッシュフローが出ますが、何に使いますか?」と聞かれ、家賃収入には手をつけず修繕に備えて貯め、貯まったら2棟目、3棟目へ進みたいと答えました。お金を溶かす人かどうかを見られていたのだと思います。
承認の電話をどこで受けたのかは覚えていません。とにかく嬉しかったことだけは覚えています。金利2.5%は低い水準ではなく、一瞬は他を探すべきか考えました。でも、経営の先輩から言われた「借りられるときに、借りなさい」という言葉で決めました。少し前まで「貸せません」と言われていた私に、フルローン・35年で貸してくれる相手が目の前にいる。私は条件よりも関係を取りました。
この融資には、もうひとつ社長さんの先回りがありました。「元金は据え置きで、お願いしておきましたよ。取得初年度は不動産取得税がどかんとくるので、貯めておきましょう」。最初の一定期間は元金を返さず利息だけを払う形で、手元にお金が残ります。実際に購入初年度には、不動産取得税243万円の支払いが待っていました(買った後に出ていった現金の話は第2回で書きます。一般的な流れは新築アパートを買った翌年に出ていく現金にまとめています)。ただ、元金が減らない間も利息は満額かかり続けます。助けてくれる仕組みには、副作用もあります。
この回で分かったこと
- 物件との出会いは検索の外にもあり、それを運んでくるのは仕事で積み重ねた信用でした。
- 金融機関が見ているのは物件だけでなく、会社と、代表者個人と、その家族の暮らしぶりまででした。
- 自分が何者かを、相手が知っている言葉で、資料にして説明できることも信用のうちでした。
- 暗号資産は聞かれる前に開示し、リスクを分かって管理している姿勢を見せると受け取られ方が変わりました。
- 飛び込みでは届かなかった額も、紹介によって「案件の全体」で見てもらえると届きました。
もっとくわしく(note の元記事)
畠山の活動報告・賃貸経営のこれまで
- 第1回:フルローン2.5億円で1棟目を買うまで|金融機関2つに断られて分かった融資の見られ方(この記事)
- 第2回:元金据え置きと買った後の400万円、管理会社の変更|フルローンでも現金は要る
- 第3回:融資期間10年で見送った築古7,000万円のM物件|指値の根拠と金融機関の変化
