空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?管理不全空家の勧告基準と回避策【2026年版】

空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?管理不全空家の勧告基準と回避策【2026年版】

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「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」。この言葉は知っていても、何をすると、いつから、いくら上がるのかを正確に説明できる人は少ないです。仲介の現場でも、お客様の半分は「壊したら6倍」と逆に理解していました。

僕自身にも昭和初期築の実家があります(いまは親のひとりが住んでいて、名義もその親です)。親戚が集まる家を残したい家族と話し合いが続いていて、「残すなら、いつまで・いくら払って管理するのか」を決めるために、この制度を一から調べ直しました。

この記事では、制度の仕組みと2023年12月の改正で変わった点、勧告の基準、税額の計算例、回避のためにやることを順番に整理します。読み終えたら、自分の実家が「今どの段階にいるか」と「上がるならいつからいくらか」が分かるようにしました。

数字は2026年9月時点の国土交通省・総務省の公開資料と空家等対策特別措置法によります。税率や負担調整は自治体で異なるため、個別の税額は自治体の資産税課や課税明細で確認し、売却時の税務は税理士にご相談ください。

先に結論

  • 6倍になるのは「土地」の固定資産税。建物が建っている土地の軽減(住宅用地の特例)が外れるため。
  • 外れる条件は、自治体から「特定空家」または「管理不全空家」として勧告を受けること。勧告の翌年度から上がる。
  • 2023年12月13日から、倒壊寸前でなくても「このままだと特定空家になる」段階(管理不全空家)で勧告できるようになった。
  • 回避策は、管理を続けるか、勧告される前に売る・貸す・壊すかの二択。どれを選ぶにも「いくらで売れるか」が比較の起点になる。

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なぜ「6倍」なのか:住宅用地の特例

住宅が建っている土地は、固定資産税が大幅に軽減されています。

区分固定資産税都市計画税
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)課税標準が6分の13分の1
一般住宅用地(200㎡超の部分)3分の13分の2

(出典:総務省「固定資産税の住宅用地特例」)

つまり、空き家でも家が建っていれば土地の税金は6分の1(200㎡まで)です。この軽減が外れると元の税額に戻る。それが「6倍」の正体です。

だから「壊したら6倍」も半分正しい。更地にすると特例は外れます。そして「放置しても6倍」も正しい。勧告を受けると、家が建っていても特例が外れるからです。

なお、僕の実家のように敷地が約250㎡ある場合、200㎡までは6分の1、残り50㎡分は3分の1です。「6倍」はあくまで200㎡以下の部分の話で、広い土地は全体で見ると6倍にはなりません。自分の土地の面積を課税明細で確認してから、あとの計算例を当てはめてください。

📖 用語メモ|評価額と課税標準額

評価額は自治体が3年ごとに見直す土地の価格で、公示価格の7割が目安。課税標準額は、そこに住宅用地の特例や負担調整をかけた、税率を掛ける直前の額。毎年春の課税明細書で「価格」と「課税標準額」が6対1になっていれば、特例が効いている証拠。

2023年12月の改正で何が変わったか

改正前は、倒壊の危険がある「特定空家」に指定され、勧告を受けた場合だけ特例が外れました。指定のハードルが高く、実際に外れる例は限られていました。

2023年12月13日施行の改正で、「管理不全空家」という区分が新設されました。「今は特定空家ではないが、放置すれば特定空家になるおそれがある」状態です。この段階で自治体は指導・勧告ができ、勧告を受けると住宅用地の特例が外れます。

特定空家管理不全空家(新設)
状態倒壊の危険、著しく衛生上有害、著しく景観を損なう等放置すれば特定空家になるおそれ
自治体の対応助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行指導 → 勧告
勧告で特例除外ありあり
命令違反の過料50万円以下なし

ハードルが一段下がったので、「まだ壊れていないから大丈夫」は通用しなくなりました。

🔢 数字メモ|その他の空き家385万6千戸

売る予定も貸す予定もない「その他の空き家」は385万6千戸で、空き家900万2千戸の4割超(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)。管理不全空家の制度は、この層が特定空家になる前に所有者を動かすのが狙い。改正の背景はこの数字にある。

勧告される基準

国土交通省の指針で示されている管理不全空家の目安を、自分で確認する方法と一緒に並べます。

状態指針での位置づけ自分で確認する方法
屋根材や外壁の一部が剥がれている、ずれている倒壊・落下のおそれ道路側から写真を撮る。遠方なら管理サービスの初回点検
窓ガラスが割れたまま侵入・飛散のおそれ全窓を外から確認。割れていれば板で塞ぐ
雑草や樹木が隣地・道路に越境生活環境への悪影響敷地境界から枝が出ていないか。通報が最も多い項目
ゴミや廃棄物の放置衛生上の問題庭・玄関先・裏手を確認。不法投棄されていることもある
門扉が壊れて誰でも入れる防犯上の問題施錠の有無。郵便受けが溢れていないか
動物が住み着き、臭気や害虫が出ている衛生上の問題床下・天井裏の糞、近隣からの苦情の有無

(出典:国交省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」)

実務上は、近隣からの苦情が自治体に入るところから始まります。「隣の空き家の木が越境している」という通報が最も多い。つまり遠方の実家ほど、知らないうちに指導が始まっている可能性があります。

📝 現場メモ|指導前の「お願い」で止める

多くの自治体は指導の前に、近隣苦情を受けた「適正管理のお願い」の文書を送る。この段階で電話一本入れて改善の予定を伝えれば、勧告まで進む例はほとんどない。最悪なのは、実家に届く郵便を誰も見ていないこと。

いつから上がるのか

流れはこうです。

  1. 自治体が現地確認し、所有者に指導(改善を求める通知)
  2. 改善されないと勧告
  3. 勧告を受けた土地は、翌年度分から住宅用地の特例が適用されない

固定資産税は毎年1月1日時点の状況で課税されます。勧告を受けた時期によって、上がる年度はこう変わります。

勧告を受けた時期特例が外れる年度改善して勧告が撤回された場合
2026年10月2027年度分から2026年12月までに撤回なら2027年度も特例維持
2027年1月〜12月2028年度分から2027年中に撤回なら影響なし
撤回が翌年にずれ込んだ場合その年度分は特例なし撤回の翌年度から特例に戻る。払った分は戻らない

勧告後に改善して勧告が撤回されれば、特例は戻ります。ただし撤回されるまでの年度分は戻りません。年末が近い時期に勧告を受けたら、年内に改善できるかどうかで翌年の税額が変わります。

名義が亡くなった親のままでも、自治体は戸籍をたどって相続人に通知を出します。「登記していないから届かない」ではありません。なお相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続を知ってから3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象です(法務省)。通知が届く先を整えておく意味でも、登記は先に済ませておくべきです。

計算例

固定資産税は「課税標準額×1.4%」(標準税率)、都市計画税は「課税標準額×最大0.3%」です。土地の評価額が1,500万円、200㎡以下、都市計画税が0.3%の自治体という前提で試算します。

特例あり特例なし(勧告後)
固定資産税の課税標準1,500万円÷6=250万円1,500万円
固定資産税(1.4%)3.5万円21万円
都市計画税の課税標準1,500万円÷3=500万円1,500万円
都市計画税(0.3%)1.5万円4.5万円
合計(年)5万円25.5万円

年20万円の差が、改善するまで毎年続きます。5年放置すれば100万円。木造30坪の解体費用(90万〜150万円、坪4〜6万円)に近い金額です。

※実際は負担調整措置があり、いきなり満額にならない場合があります。また税率は自治体で異なります(都市計画税がない地域もあります)。目安としてご覧ください。

📖 用語メモ|負担調整措置

評価額に対する前年度課税標準額の割合(負担水準)が低い土地は、前年度の課税標準額に評価額の5%を足す形で段階的に引き上げる仕組み(総務省)。課税明細に「負担水準」の欄があれば、自分の土地が何%の段階にいるかを確認できる。

回避のためにやること

今すぐできること(費用ゼロ〜数万円)

  • 屋根・外壁・窓の破損を写真で確認する。遠方なら管理サービスの初回点検を使う
  • 越境している枝を切る。草刈りを年3回入れる
  • 郵便受けを塞ぐ、門扉に鍵をかける
  • 自治体から通知が来ていないか、実家に届く郵便を確認する

半年以内に決めること

管理を続けるなら、年20万〜30万円(固定資産税、火災保険、管理サービス月5,000〜15,000円)を何年払うかを決めてください。最低限の外観確認だけなら「郵便局の空き家みまもり」が月額4,280円(毎月1回訪問)、年約5.1万円です。ただし外観確認は「勧告されないための最低ライン」で、屋根や雨漏りの劣化は止まりません。期限を決めない管理は、ただの先送りです。

管理を続けないなら、選択肢は売る・貸す・壊すです。

選択肢特例への影響費用・条件
売る(建物付き)引き渡しまで特例維持片付け(遺品整理2LDKで10万〜20万円)と測量。相続した空き家なら3,000万円特別控除(1981年5月31日以前築、相続から3年目の年末まで、制度は2027年12月31日まで)
貸す借主がいてもいなくても住宅として特例維持雨漏り・水回りの修繕が最低条件。借主が付くまでは空き家のまま管理が続く。貸したあとは借主がいる間、売りにくくなる
壊す更地になった翌年度から特例なし木造30坪で90万〜150万円。解体補助金は補助率1/3〜1/2・上限50万〜150万円で着工前申請が条件(各自治体)。売却や活用と時期を合わせる

売買の仲介の現場で見てきた限り、「壊してから売る」より「建物付きで売って買主が壊す」ほうが、税金面でも手取りでも有利なことが多いです。解体費を先に払い、更地で特例が外れ、売れるまで高い税金を払う、という三重の持ち出しになるからです。

ただし、これは僕の意見です。倒壊の危険がある家を建物付きで売りに出しても買主が付かない地域はありますし、近隣に迷惑をかけている状態なら解体が先です。建物付きで売れる物件かどうかは、査定を取った会社に「建物付きで買主が付くか、更地のほうが早いか」を直接聞くのが確実です。

⚠️ 失敗メモ|草刈りだけで安心していた例

年3回の草刈りは入れていたのに、台風で屋根材が飛んで隣家の車を傷つけ、損害賠償になった例を見た。近隣トラブルは勧告より先に来る。管理サービスは外観確認だけでなく、台風や大雪の後の臨時点検を頼めるかで選ぶ。

「売る」判断の前に、相場を匿名で取る

勧告を避けるために動くなら、最初に必要なのは「いくらで売れるか」です。売ると決めていなくても、この数字がないと管理を続けるべきかの比較ができません。年25万円の管理費を10年払えば250万円。それが売却額の何割にあたるかで、「残す」の重さが変わります。

いきなり不動産会社に来店すると営業がかかります。迷っている段階で僕が使っているのがLIFULL HOME’Sの不動産売却査定です。仕事でLIFULLさんと一緒になることが多いので、正直な特徴を書きます。

良い点気をつける点
匿名で依頼できる。 名前も電話番号も出さずに相場感が取れる大手不動産会社の登録は少なめ。大手の査定も欲しければ別途依頼する
提携約1,700社、最大6社。地方は地元会社が強く、LIFULLは地元会社の登録が多い会社によって対応速度に差がある。連絡が遅い会社は候補から外せばよい
連絡方法を電話・メール・郵送から選べる匿名を外して依頼すると営業電話は来る。連絡方法を「メール」にしておくと電話攻勢は避けられる
空き家の状態を伝えれば「建物付きで売れるか」の感触も分かる査定額が高い会社が良い会社とは限らない。根拠を説明できる会社を選ぶ

(出典:ダイヤモンド不動産研究所 LIFULL HOME’S売却査定検証)

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よくある質問

Q. 勧告を受けたら必ず6倍になりますか?

A. 勧告の翌年度から特例が外れます。ただし「きっかり6倍」ではないことも多いです。負担調整で段階的に上がる場合があること、200㎡超の部分はもともと3分の1であること、建物の固定資産税は変わらないことが理由です。改善して勧告が撤回されれば、その後の年度は特例に戻ります。

Q. 田舎で土地の評価額が低ければ気にしなくていい?

A. 評価額300万円なら固定資産税は特例ありで年7,000円、なしで4.2万円程度。金額は小さくても、勧告が出ている空き家は買主が敬遠し、売却時に不利になります。税額より「勧告歴」の影響のほうが大きいです。

Q. 空き家の火災保険は必要ですか?

A. 必要です。放火や近隣への延焼で損害賠償になるリスクがあり、居住用の契約のままだと空き家では支払われないことがあります。契約内容を空き家向けに変更してください。

Q. 貸せば特例は守れますか?

A. 住宅として使われる限り特例は続きます。ただし借主が付く前に雨漏りや水回りを直す必要があり、借主がいる間は売却しにくくなります。「とりあえず貸す」は、数年後に売ると決めたときに動けなくなる選択でもあります。

まとめ

  • 6倍になるのは土地の税金。家が建っていることによる軽減(住宅用地の特例)が勧告で外れる。
  • 2023年12月から「管理不全空家」の段階で勧告できるようになり、ハードルが下がった。
  • 勧告の翌年度から上がる。評価額1,500万円の土地で年約20万円の差。
  • 回避は管理を続けるか、勧告前に売る・貸す・壊すか。それぞれに費用と条件がある。
  • まず匿名で相場を取り、管理費と比べて判断する。

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