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「実家をどうするか決めていない。でも、いくらの家なのかは知っておきたい」。売買の仲介の現場で一番多かった相談です。そして一番多かった失敗が、相場を知りたいだけなのに不動産会社に名前と電話番号を渡し、営業に追われて考えるのをやめてしまうことでした。
僕自身、築50〜60年を超える実家を売るか残すかで家族と話し合っている最中です。その話し合いを前に進めたのは、僕の意見ではなく「いくらで売れるか」という数字でした。
この記事では、名前も電話番号も出さずに相場を知る「匿名査定」の使い方を、僕が使っているLIFULL HOME’S売却査定を例に、入力項目から査定額の読み方、査定後に営業がどう動くか、断り方まで、担当者側の事情も含めて書きます。
サービスの仕様(提携社数・依頼できる社数・入力項目)は2026年9月時点で公式サイトと第三者の検証記事を確認したものです。変更されることがあるので申込画面の表示を優先してください。税務・法務の個別判断は税理士・司法書士等にご確認ください。
先に結論
- 売るか決めていなくても、相場は先に知る。相場がないと「残す」にいくら払うのかも、建て替えの予算も決まらない。
- 迷っている段階は、名前と電話番号を渡さない匿名査定で十分。実名の一括査定は会社を選ぶ段階になってからでいい。
- 査定額は高い順に信じない。根拠(成約事例)を出せる会社を残す。高い数字より、説明の中身で比べてください。
- 営業電話は、依頼時に「連絡はメール希望」と指定し、断るときは「他社に決めた」の一言でいい。
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売るか決めていなくても、相場を先に知るべき理由
「売ると決めてから査定を取る」のが普通だと思われています。実際は逆で、相場を知らないまま「売る・残す・建て替える」を議論している家族ほど、話が感情論で止まります。相場が分かると、判断が数字になります。
| 決めたいこと | 相場が分からないと | 相場が分かると |
|---|---|---|
| 残すか売るか | 「思い出」対「合理性」の言い合い | 「残すために年20〜30万円の維持費を払うか」で議論できる |
| 建て替えるか | 予算の上限が決まらない | 売却額を頭金にした建築予算が見える |
| 兄弟でどう分けるか | 「誰が住むか」で揉める | 代償分割(1人が取得し他に現金)の金額を計算できる |
| 親が施設に入るとき | 費用の見通しが立たない | 売却額が入居一時金・月額の何年分かが分かる |
ただし、いきなり不動産会社に来店して査定を頼むと、営業が始まります。店舗で名前と連絡先を書いたお客様は、その日から「案件」です。まだ迷っている段階でそれを受けるのは負担が大きい。だから最初の一歩は匿名でいい。
📝 現場メモ|一括査定の反響は仲介にとって「有料」
一括査定サイトから届く依頼は、不動産会社が1件ごと、または成約時に料金を払って受け取る反響です。だから連絡が早く、熱心です。しつこさの正体は悪意ではなく「元を取りたい」という事情。それを知っていると、断るときに気が楽になります。
匿名査定という選択肢。実名の一括査定と何が違うか
一括査定には「実名」と「匿名」の2種類があります。不動産会社に渡る情報と、その後の接触の仕方がまったく違います。
| 項目 | 匿名査定 | 実名の一括査定 |
|---|---|---|
| 不動産会社に渡る情報 | 物件情報のみ(名前・電話番号は渡らない) | 名前・住所・電話番号・メールアドレス |
| 査定の種類 | 机上査定(概算)のみ | 机上査定または訪問査定 |
| 営業電話 | 来ない(連絡先を渡していない) | 来る可能性がある(連絡方法の希望は出せる) |
| 向いている段階 | 売るか決めていない・家族と話す材料が欲しい | 会社を比較して媒介契約を検討する段階 |
匿名査定は「相場の目安」です。現地を見ていないので、建物の状態や境界、越境、接道の細かい条件は反映されません。それでも家族会議の材料としては十分で、条件が普通の物件なら、匿名の机上査定と最終的な訪問査定の差は1〜2割の範囲に収まることが多いです。
「この会社は根拠がしっかりしている」と感じた会社にだけ、自分から連絡先を開示する。この順番なら、営業に追われることはありません。
🔢 数字メモ|匿名査定は「最大13社・平均4社」から返答
LIFULL HOME’Sの匿名査定は、依頼から48時間以内に約65%の利用者に結果が届き、回答数は最大13社・平均4社(すまいステップ 2026年8月時点の解説)。地方では回答が1社という口コミもあり、社数はエリア次第です。
LIFULL HOME’S売却査定の入力手順と、匿名にできる範囲
僕が使っているLIFULL HOME’S売却査定の実際の流れです。仕事でLIFULLさんと一緒になる機会が多く、仕組みも分かっているので、良い点も気をつける点も正直に書きます。
ステップ1:物件情報とメールアドレスを入れる
| ステップ | 入力する内容 | 匿名でできるか |
|---|---|---|
| 1. 物件種別 | マンション・一戸建て・土地(匿名査定の対象はこの3種) | ○ |
| 2. 所在地・物件情報 | 丁目まで(番地不要)、土地・建物面積、築年、間取り、現況 | ○ |
| 3. メールアドレス | 結果を受け取る用。不動産会社には渡らない | ○ |
| 4. 名前・電話番号・住所 | 実名査定のみ必須 | ×(匿名では不要) |
| 5. 連絡方法・査定の種類 | 実名査定で電話・メール・郵送の優先順と、机上/訪問を選ぶ | 匿名は机上のみ |
| 6. 依頼先の選択 | 実名査定は候補から最大6社を選ぶ | 匿名は候補社に自動送信 |
築年が分からない実家は多いです。うちも「昭和初期らしい」としか分かりません。課税明細書か登記事項証明書の「建築年月日」を見て、それでも不明なら近い選択肢を選び、備考に「築年不詳」と書けば問題ありません。
ステップ2:連絡方法を「メール」にする
実名査定に進む場合、ここが一番大事です。連絡方法の希望で「メール」を最優先にし、備考欄に「まずはメールで査定書の送付を希望。電話は平日18時以降のみ可」のように具体的に書く。備考の希望は担当者が最初に見ます。書いていない人には電話をかけます。
正直に書くと、メール希望でも電話をかけてくる会社はあります。口コミでも「何度断っても電話してくる会社があった」という声があります。対処は後述しますが、結論は「その会社は候補から外す」。希望を守れない会社に実家の売却を任せる理由はありません。
ステップ3:依頼先は「タイプの分散」で選ぶ
| 選び方 | 理由 |
|---|---|
| 地元密着の会社を2社 | 地域の買い手を一番知っている。地方は大手より強いことが多い |
| 広域・大手系を1〜2社 | 都市部からの移住・二地域居住の買い手を持つ |
| 買取も行う会社を1社 | 築古で仲介が難しい場合の「下限」の目安になる |
| 空き家・相続に実績のある会社を1社 | 遺品整理・解体・境界確定まで段取りできると、遠方の相続人には助かる |
同じタイプの会社を6社選んでも、査定額も提案も似通います。違う視点の会社を混ぜたほうが相場の幅が見えます。
良い点
- 名前・電話番号を出さずに、まず相場感だけ取れる
- 提携約1,700社、最大6社まで同時依頼。地方は大手より地元会社が強いことが多く、地元会社の登録が充実している
- 連絡方法を電話・メール・郵送から選べる。運営は東証プライム上場のLIFULL、情報セキュリティはISO/IEC 27001認証
気をつける点
- 大手不動産会社の登録は少なめ。大手の査定も欲しいなら別途依頼する
- 対応の速さに差がある。検証記事では3社に依頼して2社から返答、1社は音沙汰なしだった
- 匿名査定は概算。売る段階になったら訪問査定を受ける
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届いた査定額の読み方。高い順に信じない
査定額が届いたら、多くの人は一番高い数字を見て「うちの実家、これだけの価値があるのか」と思います。先に言っておくと、査定額は「この値段で売れます」ではなく「この値段で売り出しましょう」という提案です。売れる保証はどこにもありません。
一括査定は複数社が同じ物件に同時に提案する場面です。担当者は「他社より高く出せば、まず話を聞いてもらえる」と知っています。媒介契約を取ってから「反響が少ないので値下げしましょう」と持ちかける。現場で日常的に見た動きです。
| 査定額のパターン | 読み方 | 対応 |
|---|---|---|
| 1社だけ突出して高い | 媒介契約を取るための「釣り」の可能性 | 根拠を聞く。成約事例が出なければ外す |
| 数社が同じ帯に収まる | その帯が相場に近い | この帯を家族会議の基準にする |
| 1社だけ極端に低い | 買取前提か、売りにくい要因を見ている | 理由を聞く。再建築不可・越境など重要な指摘のことがある |
| 幅が2倍以上ある | 築古・広い土地・地方など条件が特殊 | 訪問査定に進んで条件を確定させる |
根拠の聞き方
査定書を受け取ったら、メールで次の3つを聞いてください。書面で答えられない会社は、それだけで判断材料になります。
- 査定額の根拠になった成約事例を、所在地・面積・築年・成約時期つきで
- その事例と当方の物件の違い(築年・接道・土地形状)をどう補正したか
- この価格で何か月で売れる想定か。売れなかった場合の値下げの目安は
まともな会社は1〜2日で答えます。「弊社の経験上」としか返ってこない会社は外していい。
机上査定と訪問査定の違い
| 項目 | 机上査定 | 訪問査定 |
|---|---|---|
| 方法 | 住所・面積・築年と周辺の成約事例から算出 | 担当者が現地で建物・境界・接道・周辺環境を確認 |
| 所要 | 即日〜3日 | 訪問1〜2時間+査定書まで数日 |
| 精度 | 目安。築古・変形地は誤差が大きい | 高い。売り出し価格の根拠になる |
| 使う段階 | 相場を知る・家族と話す | 売る会社と売り出し価格を決める |
築50年を超える実家は、机上査定では「建物価値ゼロ・土地値」で出ることがほとんどです。解体費を引かれるか、古家付きのまま売れるかは現地を見ないと分かりません。売ると決めたら、必ず2〜3社の訪問査定を受けてください。
📝 現場メモ|成約事例は自分でも確認できる
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」と、不動産流通機構の「レインズ・マーケット・インフォメーション」で、実家周辺の成約価格を誰でも無料で見られます。査定書の事例と突き合わせると、根拠の有無を自分で判断できます。
査定後に営業がどう動くかと、断り方
査定を依頼したあと、担当者はどう動くのか。時期ごとに並べます。
| 時期 | 担当者の動き | 読者の対応 |
|---|---|---|
| 依頼直後〜当日 | 即連絡する会社が多い(早い会社は1時間以内)。「先に接触した会社が有利」と教わっている | メール希望なら電話に出なくていい。折り返しはメールで |
| 1〜3日 | 査定書を送付。訪問査定の日程を打診 | 根拠の3項目を返信で聞く |
| 1〜2週間 | 「訪問して詳しく」「今は買い手が多い」と背中を押す | 「家族と相談中で〇月まで動かない」と期限を伝える |
| 1か月〜 | 定期的なメール・電話。専任媒介の提案 | 候補外の会社には「他社に決めた」でいい |
断り方は「他社に決めました」の一言でいい
断り文句で一番効くのは「他社に決めました」です。「もう少し考えます」は「まだ見込みがある」と受け取られ、フォローが続きます。「売らないことにしました」も「時期が来たらまた」と登録されます。「他社に決めた」だけが、担当者の管理表から案件が消える言葉です。
嘘をつきたくない方は「家族と相談中で、こちらから連絡するまでご連絡は不要です」とメールで伝えてください。書面で連絡不要と言われた相手に電話を続ける会社は宅建業法上も問題になりうるので、それでも続くならサイト運営側に通報してください。
📖 用語メモ|媒介契約の3種類
不動産会社に売却を頼む契約。「一般媒介」は複数社に同時に頼める。「専任媒介」「専属専任媒介」は1社に絞る代わりに、販売報告の義務(2週に1回・1週に1回)がある。営業が「専任で」と勧めるのは、他社に取られない契約だから。
⚠️ 失敗メモ|高値査定で専任契約、3か月後に値下げ
一番高い査定を出した会社と専任媒介を結んだお客様が、反響ゼロのまま3か月過ぎ、2度の値下げで結局は2番目の会社の査定額で成約した例を何度も見ました。回避策は、査定額ではなく成約事例で会社を選び、最初は一般媒介で2社に頼むこと。
他の一括査定サービスとの違い。中立に比べる
LIFULL HOME’Sだけが正解ではありません。実家の条件によっては他のサービスのほうが合うこともあります。2026年9月時点の各社公表値と比較記事の記載で並べます。
| サービス | 運営 | 提携社数 | 最大依頼数 | 匿名査定 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|
| LIFULL HOME’S | LIFULL | 約1,700社 | 6社 | あり | 迷っている段階。地方・地元会社の比較 |
| HOME4U | NTTデータ・スマートソーシング | 約2,500社 | 6社 | なし | 老舗。有資格者が在籍するサポート窓口がある |
| すまいValue | 大手6社の共同運営 | 6社 | 6社 | なし | 都市部のマンション。大手に任せたい |
| リビンマッチ | リビン・テクノロジーズ | 約1,700社 | 6社 | なし | 地方・築古・空き家対応を明記。買取・リースバックも |
| イエウール | Speee | 約2,600社 | 6社 | なし | 郊外物件。提携社数が多い |
※提携社数・最大依頼数は頻繁に変わります。申込画面の表示を優先してください。
使い分けはこうです。迷っている段階は匿名で取れるLIFULL HOME’S。都市部のマンションで大手に任せたいならすまいValue(地方の築古は対象外エリアがあるので公式で確認)。地方の築古で売れるか不安ならリビンマッチ。売る会社を決める段階では、LIFULL HOME’Sで地元会社を取り、すまいValueかHOME4Uで大手を足す。
どれも無料で併用できますが、併用すると連絡も倍になります。「まず匿名で1つ、次に実名で1つ」の順番が現実的です。
よくある質問
Q. 匿名査定だと、本当に営業電話は来ませんか?
A. 電話番号を登録しないので、電話は物理的に来ません。メールアドレスも不動産会社には渡らず、LIFULL経由で結果が届きます。連絡が始まるのは、あなたが自分で連絡先を開示したあとからです。
Q. 空き家のまま何年も経っている実家でも査定できますか?
A. できます。現況で「空き家」を選び、備考に「〇年から空き家。残置物あり」と書いてください。残置物や庭木は机上査定に反映されないので、訪問査定のときに遺品整理費(2LDKで10万〜20万円)や解体費(木造30坪で90万〜150万円)を差し引いた手取りを聞くと現実的な数字になります。
Q. 相続登記がまだです。査定は頼めますか?
A. 頼めます。査定は所有者でなくても取れます。ただし売却契約は登記名義人でないと結べないので、売ると決めたら相続登記を先に。2024年4月から義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象です(過去の相続分は2027年3月31日まで)。
Q. 親が存命で実家に住んでいます。勝手に査定していいですか?
A. 匿名の机上査定は現地に誰も来ないので、親に負担はかかりません。ただ、共有しないまま進めると後で揉めます。「相場を知っておきたいだけ」と一言伝えてから取ることをおすすめします。僕も親には先に言いました。
まとめ
- 売るか決めていなくても、相場は先に知る。相場があると「残す・売る・建て替える」の議論が数字になる。
- 迷っている段階は匿名査定。名前・電話番号を出さず、メールアドレスだけで概算が届く。営業電話は構造的に来ない。
- 実名査定に進むときは、連絡方法を「メール」にし、備考に希望を具体的に書く。タイプの違う会社を混ぜて依頼する。
- 査定額は高い順に信じない。成約事例を書面で出せる会社を残す。断るときは「他社に決めました」の一言。
- 売る段階になったら、必ず2〜3社の訪問査定で条件を確定させる。
相場を知っても、売らなくていい。僕も、まだ売っていません。ただ、数字があるから家族と話せています。