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親が亡くなり、実家を売ろうと登記簿を取ったら、所有者欄に書かれていたのが祖父、あるいは曽祖父の名前だった。相続人を数えていくと、会ったこともない従兄弟や、その配偶者にまで広がっている。
売買の仲介の現場で、売却までに一番時間がかかるのが、この「名義が二代前のまま」のケースです。売れないのではなく、売主が誰なのかを確定するところから始まるので、査定の前に1〜2年かかることがあります。
僕の実家も昭和初期に建った家ですが、登記を確認すると名義はいま住んでいる親でした。名義の確認は自宅のパソコンからできます。
この記事では、なぜこうなるのか、売るまでに何をどの順でやるのか、協力してくれない人・行方不明の人がいたらどうするか、費用が売値を上回ったらどう判断するかを、実際に進める順番で書きます。
制度の内容は2026年9月時点の法務省・裁判所の公開資料をもとにしています。相続の手続きは家族構成で変わるので、個別の判断は司法書士・弁護士に確認してください。記事中の「相続人11人」の例は、複数の相談を組み合わせた合成例で、特定の家族のものではありません。
先に結論
- 名義が祖父のままの実家は、戸籍で相続人を確定し、全員の合意で登記を父世代・自分世代まで進めてからでないと売れない。相続人が兄弟だけの家と比べて、期間は1〜2年、費用は数十万円単位で増える。
- 手順は「登記簿→戸籍→相続人確定→連絡→協議(または相続分の譲渡)→登記→売却」の7段階。戸籍収集と相続人への最初の連絡までは自分でもできるが、傍系の戸籍が要る時点で司法書士に切り替えたほうが結果的に安い。
- 協力しない人・行方不明の人がいても手段はある。ただし家庭裁判所を使う手段は予納金や期間がかかるので、費用が売却価格を上回らないかを先に確かめる。
- 相続人に協力を頼むとき、一番効くのは「売ればいくらになるか」の数字。匿名の査定で先に相場を用意してから連絡すると、返事の速さが変わる。
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なぜ名義が祖父のままなのか。相続人はこう増える
相続登記は2024年3月まで任意でした。登記しなくても住み続けられるし、固定資産税の納税通知書は届く。よくあるのは、祖父が亡くなったあと、同居していた子が「自分の家」として使い続け、登記だけが手つかずになるケースです。昭和の地方では珍しくない話でした。
2024年4月1日からは相続登記が義務になり、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。過去の相続分も対象で、期限は2027年3月31日です(法務省)。祖父名義のまま放置された土地は、この「過去分」にそのまま該当します。
問題は、放置している間に相続人が増えることです。祖父の相続人(祖父の子どもたち)の誰かが亡くなると、その配偶者と子どもが相続人に加わる。これが数次相続です。合成例(相談者の目線。僕の家族ではありません)で人数の増え方を見てください。
| 段階 | 亡くなった人 | 新たに相続人になる人 | この時点の相続人 |
|---|---|---|---|
| 1次相続(1988年) | 祖父 | 祖母、子4人(伯父A・伯母B・叔父C・相談者の父) | 5人 |
| 2次相続(1996年) | 祖母 | 祖母の持分は子4人へ | 4人 |
| 3次相続(2008年) | 伯父A | Aの妻、Aの子2人 | 6人 |
| 3次相続(2015年) | 伯母B | Bの子3人(Bの夫は死亡済) | 8人 |
| 3次相続(2019年) | 叔父C | Cの妻、Cの子1人 | 9人 |
| 3次相続(2025年) | 相談者の父 | 母、相談者、弟 | 11人 |
祖父が亡くなった時点では5人だった相続人が、37年で11人になりました。しかもこの中には、伯父Aの妻・叔父Cの妻という血縁のない人が2人含まれます。ここでもし伯父Aの妻が亡くなると、Aの妻の再婚相手や連れ子に持分が流れることもある。一世代放置するごとに、相続人は「会ったことのある親戚」から「戸籍でしか会わない人」に変わっていきます。
📖 用語メモ|代襲相続との違い
代襲相続は、祖父より先に子が亡くなっていた場合に、孫が代わりに相続すること。代襲では先に亡くなった子の配偶者は相続人にならないが、数次相続(祖父の後に子が亡くなった場合)では配偶者にも持分が及ぶ。伯父叔母が祖父の前に亡くなったか後かで、相続人の顔ぶれが変わる。
実務では、相続人が5人を超えた時点で「全員が同じ方向を向く」ことがほぼ期待できなくなります。1人が反対でも、1人と連絡が取れなくても、売却は止まります。
売るまでの7ステップ:期間と費用の目安
手順を順番に並べます。相続人が11人の合成例を前提に、自分でやる場合の実費と、司法書士に頼んだ場合の目安を書きました。
| 段階 | やること | 期間の目安 | 費用の目安 | 出典・備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 登記簿を取る | 土地・建物の登記事項証明書。地番が分からなければ固定資産税の納税通知書か名寄帳で確認 | 1〜2週間 | 窓口600円、オンライン請求で郵送520円 | 法務局 |
| 2. 戸籍を集める | 祖父の出生から死亡までの戸籍と、亡くなった相続人全員の出生から死亡まで、生きている相続人全員の現在戸籍と戸籍の附票 | 1〜3か月 | 戸籍謄本450円、除籍・改製原戸籍750円。数次相続では30〜60通・実費2〜4万円+郵送費になることが多い(通数は僕の経験値) | 法務省・各市区町村 |
| 3. 相続関係を図にする | 相続関係説明図を作り、法務局で法定相続情報一覧図の認証を受ける。一覧図は亡くなった人ごとに1枚(祖父・伯父Aなど、人数分の申出が要る) | 2〜3週間 | 認証は無料 | 法務局 法定相続情報証明制度 |
| 4. 相続人に連絡する | 戸籍の附票の住所へ手紙。事情説明、意向確認、売却したときの見込み額を添える | 1〜3か月 | 郵送費のみ | ― |
| 5. 協議または譲渡 | 全員で遺産分割協議書に実印を押す。または売主になる1人へ相続分を譲渡してもらう | 2〜6か月 | 印鑑証明書1通300円前後×人数。協力への謝礼(ハンコ代)は任意 | 各市区町村 |
| 6. 相続登記 | 祖父→(中間省略できる場合は)売主になる人、へ登記。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%。2027年3月31日までは、①亡くなった相続人(父など)名義にする登記、②100万円以下の土地、が免税 | 1〜2か月 | 登録免許税+司法書士報酬。単純な相続登記の報酬は平均74,888円だが、数次相続は相続人調査・書類作成が増えて20〜40万円になることが僕の経験では多い | 法務局(免税は租税特別措置法84条の2の2第1項・第2項)/日本司法書士会連合会 2024年3月アンケート |
| 7. 売却 | 査定→媒介契約→売り出し→契約→引き渡し | 3〜6か月 | 仲介手数料(売買価格×3%+6万円+税が上限。800万円以下は特例で最大33万円税込)、確定測量が要れば35〜80万円 | 宅建業法・国交省告示/測量はHOME4U・土地家屋調査士事務所の公表相場 |
合計すると、順調に進んでも1年、相続人の返事待ちが重なると2年です。費用は司法書士に一式(報酬・戸籍実費・登録免許税込み)頼んで30〜60万円が、僕の見てきた範囲の目安です。測量や解体が加わればさらに上乗せになります。
ステップ2で気をつけたいのは戸籍の「範囲」です。祖父の出生から死亡まで、というのは祖父が生まれたときの戸籍(曽祖父の戸籍)から、婚姻、分家、改製をたどって死亡時までを全部つなぐことです。大正・昭和初期の除籍は手書きで、旧字と崩し字が読めないと次の本籍地が分からず、そこで止まる人が多い。
📝 現場メモ|戸籍は司法書士の職務上請求で
司法書士は職務上請求書で、依頼者の委任状なしに相続人の戸籍を本籍地ごとに請求できる。相続人本人が傍系の戸籍を取るには、その人の委任状か、相続関係を示す戸籍の写しを毎回添付する必要があり、往復のやり取りで1か月単位で遅れる。戸籍が10通を超えた時点で切り替えるのが、僕の見てきた中では一番早い。
ステップ6の「中間省略」は補足が要ります。祖父→父→自分の2回ではなく祖父→自分の1回で済むのは、中間の相続が父の単独相続だった場合など条件つきです。祖母や伯父叔母が共同で相続したままでは原則できず、登記が2回に分かれます。このとき、亡くなった相続人名義にする1回目の登記は、2027年3月31日までに申請すれば登録免許税がかかりません(申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」と書かないと適用されない)。報酬は2回分かかることが多いので、組み立ては司法書士に事前に確認してください。
協力してくれない・行方不明の相続人がいるとき
相続人11人のうち、返事をくれない人が2人、住所は分かるが「関わりたくない」と言う人が1人、戸籍の附票の住所に手紙が届かない人が1人。合成例の中身はこれくらいが現実です。状況ごとに手段を並べます。
| 相続人の状況 | 使える手段 | 申立先 | 費用の目安 | 期間の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住所は分かる。売ることに反対はしないが手続きに関わりたくない | 相続分の譲渡または相続分の放棄を書面で依頼(印鑑証明書を添付) | 裁判所を使わない | 印鑑証明書の実費+任意の謝礼 | 1〜2か月 | 譲渡すると譲渡した人は協議から外れる。無償譲渡は贈与とみなされる場合があり税務は税理士に確認 |
| 住所は分かるが返事がない、または条件で対立 | 遺産分割調停。まとまらなければ審判 | 家庭裁判所(相手方の一人の住所地) | 収入印紙は被相続人1人につき1,200円+郵便切手。弁護士に頼めば別途 | 半年〜1年超 | 数次相続では被相続人が複数になり、印紙も申立書もその分増える |
| 手紙が戻ってくる、附票の住所にいない | 不在者財産管理人の選任 | 家庭裁判所(不在者の従来の住所地) | 収入印紙800円+郵便切手+予納金(家裁が決める。目安20万〜100万円) | 選任まで2〜4か月、その後の協議に権限外行為許可が必要でさらに数か月 | 予納金は申立人が納め、売却代金から戻ることもあるが保証はない |
| 所在不明の状態が長く続いている | 所在等不明共有者の持分取得制度(2023年4月1日施行) | 地方裁判所 | 鑑定費用と、持分の時価相当額を法務局に供託 | 公告3か月以上を含めて半年〜 | 相続で共有になった場合は、相続開始から10年を経過していないと使えない |
| 生死が7年以上分からない | 失踪宣告 | 家庭裁判所 | 収入印紙800円+官報公告料 | 1年前後 | 死亡とみなされ、その人の相続人が新たに相続人になる。人数が減るとは限らない |
| 認知症で判断能力がない | 成年後見人の選任 | 家庭裁判所 | 収入印紙800円+登記手数料2,600円+郵便切手、鑑定をすれば鑑定費用 | 1〜4か月 | 後見人が協議に参加。本人の法定相続分を下回る分割は原則できない |
(出典:裁判所 各手続の案内ページ、法務省 令和3年民法改正資料。予納金の幅は裁判所が公表していないため、司法書士・弁護士事務所の公開情報による目安)
現場で一番多く使うのは、表の1行目の「相続分の譲渡」です。11人全員が遺産分割協議書に実印を押すのは、日程だけでも難しい。そこで「売却は私が引き受けるので、あなたの持分を私に譲渡する書面に押印してほしい」と頼み、売主を1人に集約してから売る。譲渡証明書と印鑑証明書が揃えば、その人は以後の手続きから外れます。
調停まで進みそうな家では、期限も一つ知っておいてください。2023年4月の民法改正で、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、特別受益(生前にもらった援助)や寄与分(介護などの貢献)を原則として主張できなくなりました(民法904条の3)。改正前に始まった相続には猶予があり、祖父が2018年3月以前に亡くなっているなら、2028年3月31日までに家庭裁判所へ分割を申し立てないと、法定相続分での分割が基本になります。「祖父母の介護をしたのだから多く」という主張が出そうなら、早めに弁護士に相談してください。
📝 現場メモ|最初の手紙に「売る」は書かない
面識のない相続人に最初から「実家を売りたいので印鑑を」と書くと、警戒されて返事が来なくなる。まず祖父の相続が未了である事実、登記が義務になり放置すると相手にも過料が及び得ることを伝え、意向を聞く形にする。相場は「参考までに」と添える程度でいい。具体的な話は2通目以降のほうが結果的に早い。
不在者財産管理人と持分取得制度は、どちらも「いない人」への対処ですが、向きが違います。管理人は不在者の代理人として協議に参加する人で、家庭裁判所の許可を得て売却にも同意できます。持分取得制度は、いない人の持分を時価で買い取って自分のものにする裁判です。後者は相続開始から10年という壁があるので、祖父の相続なら使える可能性が高く、父の相続から日が浅い持分には使えません。どちらが向くかは、不明者の持分の大きさと、供託できる現金があるかで決まります。ここは弁護士に相談する領域です。
⚠️ 失敗メモ|ハンコ代が全員に連鎖した例
反対していた相続人1人に「協力してくれたら30万円」と口頭で約束したところ、他の相続人にも伝わり、全員から同額を求められて総額が売却手取りを超えた例を見た。謝礼を出すなら全員に同じ条件を先に文書で示す。または売却代金を法定相続分で分ける「換価分割」にして、公平さを形で見せるほうが揉めない。
費用と時間の現実。売値を上回るなら、どうするか
ここまでの手順を、地方の実家でよくある3つの前提で並べます。数字は目安で、司法書士報酬と予納金は事務所・裁判所で変わります。
| 前提 | 相続人 | かかる費用の目安 | 期間の目安 | 売却見込み額との関係 |
|---|---|---|---|---|
| A:全員が協力。相続分の譲渡で売主を1人に集約 | 11人 | 戸籍実費3万円+司法書士30万円+登録免許税(評価額500万円なら2万円)+印鑑証明の実費=約35万円 | 1年 | 売値300万円でも手残りが出る |
| B:1人が行方不明。不在者財産管理人を選任 | 11人(1人不在) | Aの費用+申立実費+予納金20万〜100万円=約55〜140万円 | 1年半〜2年 | 売値300万円だと手残りの大半が消え、測量や解体が加われば赤字になり得る |
| C:2人が反対。遺産分割調停から審判へ | 11人 | Aの費用+調停の実費+弁護士費用(着手金・報酬で数十万円〜)=80〜150万円 | 2〜3年 | 売値500万円以上でないと動きにくい |
Bのケースで費用が売値に近づいたとき、相談者が最初に口にするのは「もう放棄したい」です。ただし相続放棄は相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所で行う手続きで、父の相続を承認した後(預金を引き出した後など)は原則できません。祖父名義の土地だけを放棄することもできません。
放置という選択にも費用がついています。固定資産税は誰かが払い続けることになり、管理不全空家として勧告を受ければ住宅用地の特例が外れて翌年度から土地の税額が最大6倍になる。相続登記の義務は2027年3月31日を過ぎれば過料の対象になり得て、それは11人全員に及びます。
🔢 数字メモ|所有者不明土地は九州本島超
所有者不明土地問題研究会(2017年)の推計では、2016年時点で所有者が分からない土地は約410万haで、九州本島(約367万ha)を上回る。国交省の地籍調査では、原因の約3分の2が相続登記の未了。祖父名義の実家は珍しい話ではない。
売値が費用を下回りそうなときに、僕が順に確かめるのは次の4つです。
- 相続人申告登記で、義務だけ先に果たす。 自分が相続人であることを法務局に申し出れば、3年以内の義務は履行したことになり過料を避けられます。売れる形にはなりませんが、時間を買えます。その後に遺産分割がまとまったら、そこから3年以内に相続登記をします。
- 隣地と自治体に打診する。 隣の人にとってだけ価値がある土地は、市場に出すより隣地への売却が早い。仲介会社を通したほうが安全です。
- 買取業者の価格を取る。 共有持分のまま買い取る業者もあります。市場価格の半分以下になることが多いですが、相続人の説得に「最低でもこの値段」という下限を示せます。
- 相続土地国庫帰属制度を調べる。 2023年4月27日開始、審査手数料1.4万円、負担金は原則20万円(法務省)。ただし建物があると申請できず、共有の土地は共有者全員が共同で申請する必要があります。11人の名義を整理する手間は、売却とほぼ同じだけかかります。
「売る」だけが答えではありません。1人が相続分を集めて自分で持ち続ける道もあり、その場合は手続き費用に加えて、固定資産税と管理費(管理サービスなら月5,000〜15,000円)を払い続けることになります。どの道でも相続人の確定と登記は避けられない。手間が同じなら、その先に代金が入る形を選ぶ人が多い、というのが現場で見てきた実感です。
相続人に協力を頼む前に、僕が「相場」を用意する理由
相続人が11人いる家で、最初の連絡を出す前に必ずやってもらっているのが、売ったらいくらになるかを匿名で確かめることです。
理由は2つあります。1つは、相続人が一番知りたいのは「自分にいくら入るのか」だからです。法定相続分で分けると1人あたり数万円から数十万円、という現実を数字で示せると、協力してその分をもらうか、相続分を譲渡して手を引くかを相手が決めやすい。もう1つは、費用が売値を上回るBやCのケースかどうかを、動く前に判断できるからです。
手紙に添える数字は、次の順で並べます。合成例の数字を、自分の家の査定額と見積に置き換えてください。
| 並べる順 | 示す数字 | 合成例(査定額600万円・前提A) | どこで確かめるか |
|---|---|---|---|
| 1. 査定額 | 匿名査定の幅と中央値(登記が整っている前提の額) | 600万円 | 匿名査定・地元の仲介会社 |
| 2. 手続き費用 | 戸籍実費・司法書士報酬・登録免許税 | 約35万円 | 司法書士の見積 |
| 3. 売却費用 | 仲介手数料、確定測量、残置物の処分 | 仲介手数料 最大33万円(800万円以下の特例)+確定測量35〜80万円 | 仲介会社・土地家屋調査士の見積 |
| 4. 手残り | 1から2と3を引いた額(税金は別) | 約450〜500万円 | ― |
| 5. 1人あたり | 手残り×法定相続分 | 相続分1/16の人で約28〜31万円、1/8の人で約56〜62万円 | 相続関係説明図 |
ただ、名義が確定していない段階で不動産会社に来店すると、会社によっては「まず登記を」と門前払いされるか、逆に媒介契約を急かされます。この段階で必要なのは営業ではなく相場の数字だけです。
そこで僕が使っているのが、LIFULL HOME’Sの不動産売却査定です。仕事でLIFULLさんと一緒になることが多く、仕組みを分かったうえで、正直な特徴を書きます。
良い点
- 匿名で査定依頼ができる。 名義が祖父のままでも、所在地と面積、築年などの物件情報で依頼でき、不動産会社に名前や電話番号を渡さずに相場感を取れる
- 提携約1,700社、最大6社まで同時依頼。地方の実家は地元の会社が値付けに強く、LIFULLは地元会社の登録が充実している
- 実名査定に進むときも、連絡方法を電話・メール・郵送から選べる。運営は東証プライム上場のLIFULLで、個人情報の扱いはISO/IEC 27001認証
気をつける点
- 大手不動産会社の登録は少なめ。大手の査定も欲しければ別途依頼する
- 会社によって対応の速さに差がある。返事が遅い会社は候補から外せばいい
- 実名で依頼すると、営業電話をかけてくる会社はある。連絡方法を「メール」に指定し、備考に「相続登記の前で売却時期は未定」と書いておくと、催促はかなり減る
- 数次相続の物件は、査定額に「登記が整っている前提」と書かれていることが多い。相続人への説明では、その査定額から手続き費用を引いた手残りを示す。高い数字だけ見せると、後で値下げしたときに相続人の信用を失う
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⚠️ 失敗メモ|手続き中に相続人が亡くなった例
相続人9人の協議が8人まで揃ったところで、最後の1人が高齢で亡くなり、その子3人が新たに相続人になって振り出しに戻った例がある。高齢の相続人がいる家は、全員の実印を一度に揃える協議書より、押してくれた人から順に相続分の譲渡証明書を受け取る形のほうが、途中で人が入れ替わっても積み上げが消えない。
よくある質問
Q. 祖父名義のままでも、私が住んでいるなら売れませんか?
A. 売れません。売主になれるのは登記名義人か、相続で所有権を引き継いだことを証明できる人です。住んでいる事実は所有権の証明にならず、買主側の金融機関も融資しません。遺産分割か相続分の譲渡で売主を1人に集約し、その人の名義まで相続登記を進めるのが先です。
Q. 相続人の中に海外在住の人がいます。
A. 印鑑証明書の代わりに、現地の日本大使館・領事館で発行するサイン証明(署名証明)を使います。その人が不動産を取得する場合は、住所を示す在留証明も要ります。郵送のやり取りで1〜2か月みてください。連絡が取れているなら、相続分の譲渡証明書に同じ手順で署名してもらう方法が、協議書を全員で回すより早いことが多いです。
Q. 戸籍は自分で全部集められますか?
A. 直系(祖父、父)の戸籍は2024年3月から本籍地以外の市区町村でも取れます。ただし伯父叔母や従兄弟など傍系の戸籍は対象外で、本籍地ごとに郵送請求になります。数次相続では傍系が大半なので、途中で司法書士に切り替える前提で始めるのが現実的です。
Q. 相続人全員に相続税はかかりますか?
A. 相続税は被相続人ごとに、遺産総額が基礎控除を超えた場合にかかります。いまの基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人数ですが、祖父の相続には祖父が亡くなった当時の税法が使われます。祖父の相続はすでに申告期限を過ぎていて、当時の遺産が実家だけなら課税されないことが多いですが、相続分の無償譲渡が贈与とみなされるかなど税務は個別に違います。税理士に確認してください。
まとめ
- 名義が祖父のままの実家は、相続人を確定して名義を整えるまで売れない。放置するほど相続人は増え、血縁のない人にまで広がる。
- 手順は登記簿→戸籍→相続関係図→連絡→協議または相続分の譲渡→登記→売却の7段階。順調で1年、返事待ちが重なれば2年。費用は司法書士一式で30〜60万円が目安(僕の経験値)。
- 協力しない人・行方不明の人には、相続分の譲渡、遺産分割調停、不在者財産管理人、持分取得制度(相続から10年経過が条件)の順に手段がある。家庭裁判所を使う手段は予納金と期間がかかる。
- 費用が売値を上回りそうなら、相続人申告登記で時間を買い、隣地・買取・国庫帰属(共有者全員の共同申請)を並べて比べる。
- 相続人に最初の手紙を出す前に、匿名で相場を取って「1人あたりいくら」を示せる状態にしておく。
- 過去分の相続登記の期限は2027年3月31日。11人全員が過料の対象になり得る。亡くなった相続人名義への登記と100万円以下の土地の登録免許税の免税も、同じ日までの申請が対象。
僕も、実家の名義の確認から始めました。僕の実家は親の名義でしたが、この記事の合成例のように祖父名義のまま残っている家は珍しくありません。うちはまだ相続も起きていないので数次相続にはならず、相続が起きたときは相続登記の記事の手順で足ります。手続きの内容は家族構成で変わるので、動く前に司法書士・弁護士に一度は確認してください。
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