相続した空き家はどうする?放置リスクと5つの選択肢【2026年版・費用目安つき】

相続した空き家はどうする?放置リスクと5つの選択肢【2026年版・費用目安つき】

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親が亡くなった、あるいは施設に入って、実家が空き家になった。片付けも手続きも気が重くて、気づけば1年。そんな方は多いはずです。

僕は売買の仲介の現場で相続した実家の相談を受けてきましたが、自分の実家も昭和初期築の木造で、売るか残すかを家族と話し合っている最中です。他人事として書ける立場ではありません。

全国の空き家は900万戸、空き家率13.8%で過去最高。うち売る予定も貸す予定もない「その他の空き家」が385万戸で、相続した実家の多くがここに入ります(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)。

この記事では、放置したときに起きる3つのリスクと、「売る・貸す・壊す・持つ・手放す」の5つの選択肢を、費用の目安と判断基準つきで並べます。最後に、まだ売ると決めていなくても匿名で相場を知る方法を書きます。

数字は2026年9月時点の総務省・国土交通省・法務省・国税庁の公開資料をもとにしています。税務は税理士、登記や相続の法務は司法書士・弁護士など、個別の判断は必ず専門家にご確認ください。

先に結論

  • 放置のリスクは「固定資産税が最大6倍」「相続登記の過料10万円以下」「3,000万円控除の期限切れ」の3つ。
  • 1981年5月31日以前築で、相続から3年目の年末までに売れるなら、3,000万円控除が使える「売る」が税制上いちばん有利になりやすい。
  • 売らない選択(貸す・持つ)にも費用はかかる。持つだけで年20〜30万円。「残すためにいくら払うか」を数字で見てから決める。
  • 迷っている段階なら、まず匿名で相場を知る。1社の意見で決めない。

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相続した空き家を放置する3つのリスク

リスク1:固定資産税が最大6倍になる

住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」で固定資産税が最大6分の1に軽減されています。空き家でも建物が建っていれば、この軽減は続きます。

ところが2023年12月13日施行の空家等対策特別措置法の改正で、従来の「特定空家」に加えて「管理不全空家」という区分が新設されました。屋根や外壁の破損、雑草や樹木の越境、ゴミの放置などで自治体から勧告を受けると、翌年度から住宅用地の特例が外れます。

項目勧告前勧告後
土地の固定資産税(例)年3万円年18万円
都市計画税3分の1に軽減軽減なし

さらに特定空家に指定されて命令に従わないと50万円以下の過料、最終的には行政代執行で解体され、費用を請求されます。

⚠️ 失敗メモ|通知は親名義の実家に届く

指導通知や納税通知は登記上の所有者の住所に届く。親名義のままだと宛先は実家で、遠方の相続人が郵便を見ず、気づいたときには勧告だった例を見た。郵便局に転送届を出すか、管理サービスに郵便物の確認を入れておく。

リスク2:相続登記をしないと10万円以下の過料

2024年4月1日から相続登記が義務になりました。相続を知ってから3年以内に登記しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象です。2024年4月より前の相続分も対象で、期限は2027年3月31日です。

登記が終わっていない不動産は売却も解体もできません。「何をするにも登記が先」と覚えておいてください。

📖 用語メモ|相続人申告登記

遺産分割が3年でまとまらないときに、相続人の一人が「自分が相続人だ」と法務局に申し出る簡易な手続き。これで過料は避けられる。ただし売却や解体には正式な相続登記が別に必要で、義務を逃れる手段であって出口ではない。

リスク3:3,000万円特別控除の期限が切れる

相続した空き家を売ると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「相続空き家の3,000万円特別控除」があります。制度の適用期限は2027年12月31日まで延長されていますが、個別の期限として相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。

主な要件は次のとおりです。

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
  • マンションなど区分所有建物でないこと
  • 相続の直前に被相続人が一人で住んでいたこと
  • 売却価格が1億円以下であること
  • 売却後、翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しをすること(2024年以降の売却は買主側で行っても可)
  • 相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円に減額

取得費が分からない築古の家は、控除がなければ数百万円の譲渡所得税がかかり、控除を使えばゼロになることも珍しくありません。放置して期限を過ぎると、この差額をそのまま失います。

🔢 数字メモ|取得費不明なら売値の5%

親が買った値段が分からない家は、売却価格の5%を取得費とみなす概算取得費が使われる(国税庁 No.3258)。2,000万円で売れば取得費は100万円扱い。利益は約1,900万円、控除なしなら税額は約380万円になる。契約書や領収書を実家で探す価値はここにある。

相続した空き家の5つの選択肢

選択肢向いている家初期費用の目安期間の目安
1. 売る駅徒歩圏、需要がある地域片付け10〜30万円+仲介手数料3〜6か月
2. 貸す建物が健全、賃貸需要があるリフォーム50〜300万円2〜4か月
3. 壊して活用・売る土地が広い、建物が老朽解体90〜150万円(木造30坪)2〜3か月
4. 管理して持つ将来住む予定がある月5,000〜15,000円継続
5. 手放す(買取・引き取り・国庫帰属)売れない、遠方、共有名義0円〜負担金20万円〜2週間〜数か月

選択肢1:売る(仲介)

最も一般的で、3,000万円控除の恩恵を最大限受けられる方法です。不動産会社に仲介を依頼し、買主を探します。

  • 費用:仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税)、片付け費用、測量費(境界未確定の場合30〜80万円)
  • 期間:査定から引き渡しまで3〜6か月が目安
  • 注意:地方の築古住宅は「土地値」での取引になり、建物解体を買主が条件にすることが多い

判断のコツは、複数社の査定額と「売り方の提案」を比べることです。同じ家でも「現状渡し」「解体して更地」「リフォームして売る」で手取りが変わります。

📖 用語メモ|契約不適合責任

引き渡し後に雨漏りやシロアリなど契約と違う不具合が見つかったとき、売主が修補・減額・解除に応じる責任。個人が築古を売るときは「免責」の特約を付けるのが実務では普通で、買主が業者なら通りやすい。特約の有無で売った後の安心が変わる。

選択肢2:貸す

建物の状態が良く、周辺に賃貸需要(工場・大学・移住者)があれば選択肢になります。

  • 費用:最低限のリフォームで50〜100万円、水回り交換を含むと200〜300万円
  • 収入:地方の戸建で月3〜6万円が相場
  • 注意:借主がつかないとリフォーム費用が回収できない。管理を任せる管理会社の手数料(家賃の5%前後)も必要

リフォーム費用を事業者が持つ代わりに長期契約を結ぶ空き家活用サービスもありますが、契約期間中は売れません。将来売る可能性があるなら使わないほうがいい、というのが正直なところです。

選択肢3:壊して活用・売る

建物が老朽化していて、土地としての価値があるなら解体が選択肢です。

構造30坪の解体費用目安
木造90〜150万円
軽量鉄骨120〜200万円
RC造180〜300万円

木造の坪4〜6万円はHOME4Uほかの相場、鉄骨・RCは各社の目安です。これに残置物処分、庭木撤去、ブロック塀撤去などが加わり、道路が狭く重機が入らない現場は割増になります。

多くの自治体が解体補助金を出しており、補助率1/3〜1/2、上限50〜150万円が相場です。着工前の申請が必須なので、見積を取る前に自治体の窓口で確認してください。

注意点は2つ。更地にすると住宅用地の特例が外れるので、解体は売却時期と合わせること。解体費用は業者で50万円以上差が出るので、3社以上で見積を比べること。

解体後に駐車場や貸地にする道もあります。「更地で売る」と「活用する」の両方の数字を並べてから決めてください。

⚠️ 失敗メモ|壊してから再建築不可と判明

前面道路が幅4m未満で接道条件を満たさない土地は、壊すと同じ規模の家が建てられない。解体後にそれが分かり、更地の買い手がつかず駐車場にもならなかった例を見た。解体前に役所の建築指導課で接道を確認する。

選択肢4:管理して持つ

将来自分や子どもが住む可能性がある、思い出があってすぐには手放せない。そんな場合は、管理を続けながら時間を稼ぐ選択もあります。ただし「何もしない」は管理ではありません。

  • 自分で管理:月1回の換気・通水・草刈り。往復の交通費と時間がかかる
  • 管理サービス:月5,000〜15,000円。「郵便局の空き家みまもり」なら外観確認のみで月額4,280円

年間で見ると管理費10〜18万円に固定資産税・火災保険が加わり、年20〜30万円の維持費になります。5年持てば100万円超。この数字を見て、それでも持つかを判断してください。

📝 現場メモ|火災保険は空き家用に切替え

居住用のままの火災保険は、空き家になった事実を告げていないと事故時に支払われないことがある。保険会社に連絡すると「一般物件」扱いになり保険料は上がるが、放火や飛来物での近隣賠償を考えれば外せない。持つと決めたら最初にやること。

選択肢5:手放す(買取・引き取り・国庫帰属)

「仲介で売りに出したが1年反応がない」「再建築不可」「共有名義で兄弟がバラバラ」。そんな家でも手放す方法はあります。

買取業者再建築不可・共有持分でも現金化できます。価格は市場相場の6〜8割が目安ですが、最短2週間で決済でき、片付け不要・契約不適合責任免責が多いのが利点です。

引き取りサービス売値がつかない土地を有料(15万円〜)で引き取る事業者があります。「お金を払ってでも手放したい」段階の選択肢です。

相続土地国庫帰属制度2023年4月27日に始まった制度で、条件を満たす土地を国に引き取ってもらえます。建物がある土地は対象外なので、解体が前提です。審査手数料1万4,000円と、負担金は原則20万円(土地によって増額)がかかります。

相続放棄相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。空き家だけを放棄することはできず、預貯金も含めて全て放棄することになります。放棄後も次の管理者が決まるまで管理義務が残ります。

どれを選ぶ?判断チャート

上から順に、自分の実家を当てはめてください。

順番確認することはいいいえ
1相続登記は済んでいる?2へまず登記。司法書士に依頼するか、自分で法務局へ
21981年5月31日以前築で、相続から3年目の年末まで?「売る」を最優先。3,000万円控除が使える3へ
3駅・市街地に近く、建物は健全?「売る(現状渡し)」か「貸す」4へ
4建物が老朽で、土地が広い?「壊して売る・活用」。解体補助金を確認5へ
5仲介で売れない、遠方、共有名義?「買取」「引き取り」「国庫帰属」6へ
6将来住む予定が明確?「管理して持つ」。年20〜30万円を払えるか確認1〜5に戻って再検討

僕の実家も昭和初期築の木造なので、相続が起きればこのチャートでは2番で「売る」に行き着きます。それでも家族の「親戚が集まる場所を残したい」があるので、数字だけでは決めきれていません。ただ、相場を知ってからは話し合いが「残すためにいくら払うか」という具体的な議論に変わりました。

「うちはどれか分からない」と思った方がほとんどだと思います。それが普通です。家の状態と地域の需要は、実際に見てもらわないと分かりません。

迷ったら「匿名で相場を知る」から始める

一番やってはいけないのは、近所の不動産会社1社に言われるがまま決めることです。売却・活用・解体は得意な会社が違います。かといって、迷っている段階で来店すると営業がかかって動けなくなる人が多い。これは断言できます。

僕が使っているのはLIFULL HOME’Sの不動産売却査定です。仕事で一緒になることが多く、仕組みを知っているので正直に書きます。

良い点

  • 匿名で査定依頼ができる。 名前や電話番号を出さずに、まず相場感だけ取れる
  • 提携約1,700社、最大6社まで同時依頼。地方は大手より地元会社が強く、LIFULLは地元会社の登録が充実している
  • 連絡方法を電話・メール・郵送から選べる。「メール希望」にすれば電話攻勢は避けられる
  • 東証プライム上場企業の運営

気をつける点と、僕がやっている対策

気をつける点対策
大手不動産会社の登録は少なめ大手の査定も欲しければ、別途1社だけ直接依頼する
会社によって対応速度に差がある連絡が来ない会社は候補から外す
電話で営業が来ることがある依頼時に連絡方法を「メール」にする
査定額が高い会社が良い会社とは限らない根拠を説明できる会社を選ぶ。高い数字より説明の中身で比べる

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よくある質問

Q. 兄弟で意見が合わず、放置になっています。

A. 先に「売って現金で分ける(換価分割)」に合意し、代表者1人の名義にまとめてから売るのが一般的です。共有名義のまま放置すると、次の相続で共有者が増え、さらに動かせなくなります。

Q. 遠方で片付けに行けません。

A. 遺品整理業者に依頼すれば2LDKで10〜20万円が相場です。買取業者に「残置物ごと」引き取ってもらう方法もあります。

Q. 空き家バンクに登録すれば売れますか?

A. 自治体経由で無料掲載できる移住希望者向けの仕組みです。成約は自治体と物件次第で、数年反応がないことも珍しくありません。並行して売却・買取の査定も取っておいてください。

Q. 更地にしたら固定資産税が上がると聞きました。

A. 住宅用地の特例が外れるため、翌年度から土地の税額が最大6倍になります。解体は売却や活用の直前に行い、1月1日をまたぐ時期に注意してください。

まとめ

  • 放置のリスクは「固定資産税6倍」「登記の過料」「3,000万円控除の期限切れ」の3つ。
  • 選択肢は売る・貸す・壊す・持つ・手放すの5つ。築年と相続からの経過年数で優先順位が決まる。
  • 持つなら年20〜30万円、貸すならリフォーム50〜300万円。売らない選択にも値札をつけて比べる。
  • 迷ったら、まず匿名で相場を知り、複数社の提案を並べる。1社の意見で決めない。

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