「家賃を払い続けるのはもったいない?」「持ち家はリスク?」——賃貸か持ち家か。この永遠のテーマを、賃貸物件を貸す大家であり、宅建士であり、自分自身の住まいも選んできたアパートメントラボが、ポジショントークなしで整理します。先に言うと、結論は「どちらが得か」ではなく「あなたの人生のどのフェーズか」で決まります。
「家賃はもったいない」論のワナ
「毎月9万円の家賃を30年払えば3,240万円。家が買えたのに」——よく聞く計算ですが、これは比較としてフェアではありません。持ち家には家賃の代わりに、ローン金利・固定資産税・火災地震保険・修繕費・(マンションなら)管理費と修繕積立金がかかります。戸建ての修繕は30年で数百万円規模になることが珍しくなく、詳しくは一戸建ての維持費の記事で試算した通りです。
一方で「賃貸の方が得」と言い切るのも正確ではありません。同水準の住まいなら、家賃には大家の利益とリスク負担分が乗っているからです。設備が壊れたら大家が直す、空室リスクも大家が持つ——その保険料込みの価格が家賃です。つまり金銭面はどちらかが一方的に得になる構造ではなく、「リスクを自分で持つか、家賃という形で外注するか」の違いなんです。
賃貸の本当の強みは「身軽さ」という保険
- 転勤・転職・収入変化に、住み替えで即対応できる
- 家族構成の変化(結婚・出産・独立)に住まいのサイズを合わせられる
- ご近所・環境が合わなければやり直せる
- 設備故障・災害復旧の一次責任は貸主側(設備故障の負担の記事)
人生の変数が多い時期——キャリアが固まっていない、家族構成が変わり得る、住みたい街を試している——ほど、この身軽さの価値は大きくなります。
持ち家の本当の強みは「老後の住居費」と「強制貯蓄」
- ローン完済後の住居費が管理・維持費だけになり、年金生活の固定費を大きく下げられる
- 団体信用生命保険により、契約者に万一のことがあればローンが完済される(遺族に住まいが残る)
- 毎月の返済が半ば強制的な資産形成になる
- リフォーム・ペット・楽器など、住まいの自由度が高い
特に高齢期は、賃貸の借りやすさが下がる現実があります(保証会社や見守りサービスの普及で改善傾向にはあります)。「老後にどこでどう住むか」の答えを持ち家が先に用意してくれる安心感は、金額に換算しにくい価値です。
【大家の本音】私が「賃貸に住みながら物件を買う」理由
私自身は賃貸に住みつつ、貸すためのアパートを購入して経営しています。これは「自宅は流動性を優先し、不動産は収益を生む形で持つ」という考え方です。ここから借りる側に伝えたいことは2つ。①不動産は「買うか借りるか」の二択ではなく、住み方と持ち方を分けて考えられること。②大家として言えば、賃貸市場には設備・管理の質が高い物件が増え続けており、「賃貸だから我慢する」時代ではなくなっていること。実際、当サイトで取材している分譲賃貸のように、持ち家品質を賃貸で使える選択肢もあります。
判断のフレーム:3つの質問に答えるだけ
- 10年後も同じ街・同じ広さに住んでいる確信があるか?——Yesなら購入検討の土俵、Noなら賃貸優位
- 維持費・金利まで含めた総コストを払っても手元資金と収入に余裕があるか?——住宅ローンの目安は住宅ローンの選び方の記事へ
- 「資産になる」以外に、買いたい理由があるか?——自由度・安心感など生活上の理由があるなら購入の納得度は高い。投資目的だけなら自宅購入とは分けて考える
よくある質問
結局、生涯コストはどちらが安いのですか?
前提(金利・家賃相場・修繕・住み替え回数・売却価格)の置き方次第でどちらにも転ぶ、が誠実な答えです。断定している試算は前提を必ず確認してください。コスト差よりも「変化への対応力(賃貸)」と「老後の安定(持ち家)」のどちらを重視するかで決める方が、後悔が少ないと考えています。
賃貸派です。老後が不安なのですが。
「一生賃貸」を選ぶなら、家賃を払い続ける前提の資金計画と、高齢期の借りやすさへの備え(保証会社の利用・URなど保証人不要の公的賃貸の活用)をセットで考えておくと現実的です。UR賃貸住宅は礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要で、高齢期の住み替え先としても検討価値があります(UR特設ページ)。
買うならいつがいいですか?
市況のタイミングを読むより、「住む場所と暮らし方が固まったとき」が買いどきです。金利や価格は誰にも読めませんが、自分の人生の変数が減ったかどうかは自分で分かります。購入の基礎知識は新築マンション完全ガイド・新築一戸建て完全ガイドにまとめています。
まとめ|「損得」ではなく「フェーズ」で選ぶ
変化の多い時期は賃貸の身軽さを、人生が固まったら持ち家の安定を。どちらを選んでも、住まいの見る目を鍛えておいて損はありません。当サイトでは賃貸から分譲・戸建てまで全国の実例を内見動画つきで紹介しています。「見る目」を育てる材料にしてください。
畠山 晴允(はたけやま はるみつ)/アパートメントラボ合同会社 代表・宅地建物取引士
登録者14万人のYouTubeチャンネル「アパートメントラボ」を運営し、賃貸・分譲・戸建ての内見動画を制作。自身も広島でアパート2棟26世帯を経営する現役の不動産オーナー。UR都市機構などの物件PR動画も手がけ、賃貸を「借りる側」と「貸す側」の両方の視点から発信しています。運営者について >