賃貸の申込みはキャンセルできる?|契約前なら撤回できる。申込金が戻る条件と伝え方

賃貸の申込みはキャンセルできる?|契約前なら撤回できる。申込金が戻る条件と伝え方

結論:契約が成立する前なら申込みは撤回でき、預けたお金は返ってきます

賃貸の「申込み」は契約ではありません。契約が成立する前であれば、申込みは撤回できます。そのときに預けた申込金・預り金は、返してもらえます。これは業界の慣習ではなく、宅地建物取引業法にもとづく話です。

宅建業法47条の2第3項と、これを受けた施行規則16条の11第2号は、宅地建物取引業者に対して「相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと」を禁じています。名目が「申込金」でも「申込証拠金」でも、契約成立前に預けた金銭であれば同じ扱いです。しかも禁じられているのは「拒むこと」そのものなので、最終的に返したとしても、いったん拒めばそれ自体が違反になります。

一方で、契約が成立したあとのキャンセルは「解約」です。こちらは話が変わります。どこからが契約なのかを、先に整理します。

前提の整理:申込み・契約・入居の3段階

段階やっていることやめたいと言ったときお金の扱い
①申込み入居申込書の提出、審査撤回できる預り金・申込金は返還される(返還を拒むことは宅建業法違反)
②審査通過〜契約日の決定契約日・初期費用の案内が来る。まだ契約書は交わしていない撤回できる同上。ただし早く伝えるほど揉めにくい
③契約の成立契約書の締結、初期費用の入金解約になる礼金・仲介手数料・保証委託料は戻らないことが多い。短期解約違約金の定めがある物件も
④入居開始鍵の引渡し、入居通常の解約手続解約予告期間に応じた家賃が発生

問題は、③がいつ成立したかが、現場では曖昧になりやすいことです。賃貸借契約は当事者の合意で成立する契約なので(民法601条)、理屈のうえでは書面がなくても成立し得ます。ただ実務では、契約書に署名押印したとき、あるいは初期費用を入金したときを成立の目安にしている会社がほとんどです。判断に迷ったら、「今日の時点で契約は成立していますか」と仲介会社に口頭ではなくメールで聞いて、答えを残しておくのが確実です。

預り金・手付金・敷金は別のもの

  • 預り金(申込金・申込証拠金)…契約成立前に預けるお金。撤回すれば返る。契約に進めば初期費用に充当されるのが通常です。領収書または預り証を必ずもらってください。
  • 手付金…民法557条1項は、買主が手付を放棄し、売主が倍額を返せば解除できると定めています。これは売買の規定で、居住用の賃貸で手付を授受することはまれです。賃貸で「手付」という言葉が出てきたら、それが預り金のことなのか確認してください。
  • 敷金…契約成立後に預ける担保。退去時に未払い分などを差し引いて返ります。敷金・礼金の仕組みは別記事にまとめました。
  • 仲介手数料…媒介の報酬は契約が成立して初めて発生するのが原則です。契約前の撤回で手数料を請求されたら、その根拠を書面で示すよう求めてください。仲介手数料の上限と考え方も確認を。

キャンセルされた貸主の側で、何が起きているか

まず率直に言うと、申込みのキャンセルで貸主(大家)が怒ることは、ほとんどありません。年に何件かは必ずあることで、そういうものだと思っています。ただ、その間に何が止まっているかは知っておいてもらえると助かります。

申込みが入ると、その部屋の募集は止まります。ポータルサイトの掲載を落とし、問い合わせには「申込みが入っています」と答え、他の内見を断ります。審査に数日、契約日の調整に数日。1件の申込みで、部屋は1〜2週間ほど市場から消えます。その間に来ていたはずの問い合わせは戻ってきません。空室が1か月延びれば、その分の家賃がそのまま消えます。

だから貸主がありがたいのは、「決めました」でも「やめます」でも、早く教えてもらうことです。迷っている段階で「他も見てから決めたい」と言ってもらえれば、募集を止める前に対応できます。逆にいちばん困るのは、連絡が取れないまま契約日が来て、そこで初めて分かることです。

もうひとつ。キャンセルの理由を正直に言ってもらったほうが、こちらとしては助かります。「家賃が予算を超えた」「駐車場が確保できなかった」と分かれば、条件を調整して再提案できる場合があります。実際、キャンセルの連絡から条件を見直して契約に至ることもあります。気まずいからと黙ってしまうのが、双方にとっていちばん損です。

揉めない伝え方

  • 決めた日に電話する。翌日まで待つ理由はありません。時間がそのまま相手の損失になります。
  • 電話のあと、メールでも同じ内容を送る。「◯月◯日申込みの◯◯号室について、申込みを撤回します。預けている申込金◯円のご返金をお願いします」。日付と部屋名と金額を書けば十分です。
  • 理由は一言でいい。詳しく説明する義務はありませんが、「他の物件に決めました」程度は伝えたほうが、そのあとのやり取りが早く終わります。
  • 返金の時期と方法を確認する。振込か手渡しか、いつまでか。ここを決めておくと催促の手間が減ります。
  • 返金を拒まれたら、預り証と申込書の控えを持って相談する。相手方の宅建業免許を出している都道府県の窓口、または宅建業の保証協会の苦情窓口が受け付けています。

判断の分かれ目:二重申込みをどう考えるか

法律で禁じられているわけではありませんが、すすめません。理由は2つあります。ひとつは、同じエリアで動いている仲介会社と保証会社は限られており、二重に申込みが入っていることは高い確率で相手に伝わること。もうひとつは、伝わった時点で「決めない人」と見られ、審査や条件交渉で不利になることです。

迷っているなら、申し込む前に迷ってください。内見の段階で2〜3件に絞り、申込みは1件ずつ。審査の結果が出るまでの数日を待てないほど急いでいるなら、その旨を伝えて審査を急いでもらうほうが筋が通ります。部屋探しの進め方ははじめての部屋探し 完全ガイドに書きました。

よくある質問

審査に通ったあとでもキャンセルできますか

契約が成立していなければ撤回できます。審査に通ったこと自体は契約の成立ではありません。ただし契約日が決まって書類が動き始めている段階なので、連絡は早いほどいいです。申込金を預けているなら、返還してもらえます。審査の流れは入居審査に通らない理由で整理しています。

「申込金は返せない」と言われました

契約成立前の預り金であれば、返還を拒むこと自体が宅建業法47条の2第3項・施行規則16条の11第2号に反します。まず預り証と申込書の控えを確認し、メールで返還を求めてください。それでも応じない場合は、その会社に免許を出している都道府県の宅建業の窓口、または保証協会の苦情窓口に相談を。なお、すでに契約が成立している場合は別の判断になるので、成立しているかどうかを先に確認してください。

契約書に署名したあとのキャンセルはどうなりますか

解約として扱われます。入居前でも、礼金・仲介手数料・保証委託料・火災保険料はすでに支払先へ渡っており、戻らないことが多いお金です。契約によっては短期解約違約金の定めもあります。契約書の解約条項を確認したうえで、管理会社に相談してください。実際の負担額は契約内容によって変わります。

申込金を求められたら、払わないといけませんか

義務ではありません。預り金を取らない会社も多くあります。求められた場合は、預り証をもらうことと、撤回したら全額返る前提であることを口頭で確認したうえでメールにも残すこと。この2つをやっておけば、ほぼ揉めません。逆に預り証を出したがらない相手は、それ自体が判断材料になります。おとり物件の見分け方と合わせて見てください。

まとめ

  • 契約成立前なら申込みは撤回でき、預り金は返る。返還を拒むことは宅建業法47条の2第3項・施行規則16条の11第2号に反する。
  • 名目が申込金でも申込証拠金でも、契約前に預けたお金は預り金として扱われる。
  • 契約が成立したあとは解約。礼金・仲介手数料・保証委託料は戻らないことが多い。
  • 仲介手数料は契約の成立が前提。契約前の撤回での請求は根拠を書面で確認する。
  • 伝えるのは早いほどいい。申込み1件で部屋は1〜2週間市場から消えている。

ここに書いたのは一般的な考え方です。ご自身の申込みが契約成立の前なのか後なのか、個別の負担がどうなるかは、契約書と申込書を見ながら仲介会社・管理会社に確認してください。

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