角部屋・最上階・1階のどれを選べばいいのか。万人向けの正解はなく、位置で変わる音・温度・防犯と視線・湿気のうち、自分が我慢できない弱点から決めるのが選び方です。建築基準法の遮音基準は隣との界壁だけで、上下階の床には同じ下限がない点も押さえてください。
結論:位置で選ぶより、「その位置の弱点を自分が我慢できるか」で選んでください
角部屋・最上階・1階に、万人向けの正解はありません。それぞれの性格はこうです。
- 角部屋は、隣と接する壁が1枚減るぶん音と気配が軽くなります。代わりに外気に触れる面が増えるので、暑さ寒さと結露が出やすくなります
- 最上階は、上からの足音がありません。代わりに屋根から日射を受けるので、夏の暑さは最も出やすい位置です
- 1階は、下の階に音を気にせずに済み、搬入も避難も楽です。代わりに防犯と湿気と、外からの視線の対策が要ります
そして押さえておいてほしい事実が一つあります。建築基準法が遮音の基準を定めているのは「界壁」、つまり隣の住戸との壁だけで、上下階の床の音を直接定めた規定ではありません。角部屋と最上階が静かに感じられる理由も、上下の音が物件次第で大きくぶれる理由も、ここから説明できます。詳しくは後ろで条文を挙げます。
前提の整理:位置で変わるのは4つだけです
角部屋か最上階か1階かで変わるのは、突き詰めると次の4つです。ここを分けて考えると、比較が一気に楽になります。
- 音…隣と接する壁の枚数、上下に住戸があるかどうか、共用階段や廊下に面しているか
- 温度…外気に触れる面(外壁・屋根)の数。面が多いほど夏は暑く冬は寒くなりやすい
- 防犯と視線…外から窓に手が届くか、外から中が見えるか
- 湿気…地面に近いか、外気に触れる面が多いか。結露とカビはここから出ます
「角部屋は当たり」「1階は外れ」という言い方は、この4つを混ぜて語っているから噛み合わなくなります。自分がどれを重く見るかを先に決めてください。
角部屋・最上階・1階を並べて比べる
| 項目 | 角部屋 | 最上階 | 1階 |
|---|---|---|---|
| 隣からの音 | 接する壁が1枚減るので軽い | 階によるが、上からの音はない | 上からの音は受ける |
| 自分が出す音 | 隣が1方向だけ | 下の階に響く | 下に住戸がないので気が楽 |
| 夏の暑さ | 外壁が増えるぶん受けやすい | 屋根からの日射でいちばん出やすい | 比較的出にくい |
| 冬の寒さ | 外気に触れる面が多く冷えやすい | 屋根の断熱しだい | 床からの底冷えが出やすい |
| 防犯 | 共用部から見えにくい位置だと注意 | 屋上からの経路に注意 | 窓への接近が容易。対策が要る |
| 視線 | 窓が増えるぶんカーテンが要る | 気になりにくい | 道路・通路からの視線に注意 |
| 湿気 | 結露が出やすい面が増える | 比較的出にくい | 地面に近く出やすい |
| 日当たり・風 | 窓が2方向で通風が取れる | 遮るものが少ない | 周囲の建物に遮られやすい |
| 出入り・搬入 | 位置しだい | 階段のみの建物だと負担が大きい | いちばん楽。災害時の避難も早い |
| 募集での扱い | 人気が出やすく値付けを保ちやすい | 同上 | 条件面で調整されることがある |
音について、法律が決めているのはここまで
建築基準法30条1項は、長屋または共同住宅の各戸の界壁について、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減する性能を持つこと、そして小屋裏または天井裏に達するものであることを求めています。その技術的基準は建築基準法施行令22条の3にあり、振動数125Hzで透過損失25dB以上、500Hzで40dB以上、2,000Hzで50dB以上と定められています。
ここで大事なのは、この基準が対象にしているのが界壁=隣の住戸との壁だという点です。上下階の床の遮音を直接定めた規定ではありません(法30条2項は、天井の構造が政令の技術的基準に適合する場合の扱いを定めています)。
つまり、隣の音には法令の下限がありますが、上の階の足音や椅子を引く音には同じ下限がないということです。上下の音は建物の構造と床の仕様で大きく変わります。「角部屋にしたのに上の音がうるさい」という話が出るのは、位置と音源の方向がずれているからです。構造ごとの傾向は賃貸アパートの騒音は構造で決まる?木造・鉄骨・RC造の防音性と内見チェックリストにまとめています。
1階の防犯は「窓の仕様」で語られている
国土交通省と警察庁が示している「共同住宅に係る防犯上の留意事項」(平成13年策定・平成18年4月改正)は、住戸の窓について、共用廊下に面する窓と、接地階にある住戸の窓のうちバルコニー等に面するもの以外のものは、防犯建物部品等のサッシ・ガラス、面格子その他の建具が設置されたものであること、としています。1階に対策を求めているのはこのためです。
ただし同じ文書は、バルコニーに面する窓のうち「侵入が想定される階」にあるものにも同様の仕様を求め、バルコニーについては「縦樋、手摺り等を利用した侵入の防止に有効な構造」であることを挙げています。つまり、上から降りてくる経路も想定されているということです。最上階だから安全、という読み方はできません。なお、この留意事項は法令ではなく、同文書の中に「建築主等に対し、何らかの義務を負わせ、又は規制を課すものではなく、あくまでも建築主等の自発的な対策を促すもの」と明記されています。
1階を選ぶなら、窓の補助錠と面格子、それに視線の対策をセットで考えてください。賃貸で使える道具は賃貸OKの窓補助錠と防犯アラーム|1階の防犯と虫対策を穴を開けずに解決にまとめています。
【大家の本音】募集で1階が埋まりにくい本当の理由
同じ建物の同じ間取りでも、部屋の位置によって決まる速さがはっきり違います。順番で言うと、上の階と角部屋が先に決まり、1階が最後まで残ることが多い。ただ、その理由は多くの人が思っているものと少しずれています。
1階が敬遠される理由の一番は、防犯ではなく「条件検索で外されること」です。ポータルサイトで「2階以上」にチェックを入れる人が一定数いて、その時点で候補から消えます。実際に内見まで来た人が1階を嫌って断るケースより、そもそも見られていないケースのほうが多い。母数が減れば、大家は家賃や初期費用で母数を取り戻すしかありません。1階の条件が緩むのは、部屋が悪いからではなく、見られる回数が少ないからです。
逆に、角部屋と最上階は値付けを保ちやすい位置です。問い合わせが来る前提なので、下げて集める必要がありません。ここを知っておくと、1階は条件の相談の余地が残っていることがあるという見方ができます。長く空いている、繁忙期を外れている、といった条件がそろえば、話をしてみる価値はあります。何が通って何が通らないかは家賃交渉は可能?通る交渉・断る交渉に書きました。
もう一つ、正直に書いておきます。最上階と角部屋は、夏の暑さと冬の結露の相談が実際に多い位置です。屋根や外壁に面する部分が多いので、断熱の仕様がそのまま住み心地に出ます。とくに結露は、退去のときにカビの負担で揉めやすいところです。民法621条は、通常の使用によって生じた損耗と経年変化を賃借人の原状回復義務から除いており、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」も同じ原則で組み立てられています。とはいえ「換気をせずに放置して広げたカビ」は扱いが変わりうるので、気づいた時点で管理会社へ伝えておくのが結局いちばん安く済みます。対処は賃貸の結露・カビ対策を見てください。最終的な負担の判断は契約内容によっても変わるため、管理会社・大家に確認してください。
構造との掛け算で考える
位置の話は、建物の構造とセットにして初めて答えが出ます。内見のときに次を確かめてください。
- 上下に人が住んでいるか、誰が住んでいるか。1階で上が空室なら音の条件は変わります。募集図面では分からないので聞いてください
- 角部屋の「角」がどちら向きか。西向きの外壁が増える角部屋は、夏の午後の暑さが強く出ます
- 最上階の上に何があるか。陸屋根か、勾配屋根か、屋上に出られるか。屋上に人が上がれる建物は防犯の見方が変わります
- 1階の窓の外に何があるか。通路、駐輪場、ゴミ置場。人が立ち止まる場所が窓の前にあるかどうかで体感が変わります
- 共用階段と各戸の玄関の位置関係。階段の真横の部屋は、上下階の住人の昇り降りが一日中響きます。位置より効くことがあります
- 床と壁の仕様を聞く。木造・鉄骨・RCという区分だけでなく、床の下地と界壁の仕様まで聞けると精度が上がります
この6点は、内見の30分で全部確認できます。持ち物と見る順番は内見で見るべきチェックポイント完全ガイドにまとめています。団地のように建物の型がそろっている集合住宅では、位置ごとの差がもっとはっきり出ます(団地のメリット・デメリットを表で比較)。
向く人・向かない人
角部屋が向く人…隣の生活音に敏感、窓を2方向取って風を通したい、在宅時間が長い。向かない人…冷暖房費を抑えたい、結露の手入れに時間を割けない、家具を壁づけで並べたい(窓が増えると壁が減ります)。
最上階が向く人…上からの足音が我慢できない、眺望と日当たりを重く見る、洗濯物を外に干したい。向かない人…暑さに弱い、エレベーターのない建物で荷物の出し入れが多い、災害時に階段で降りることに不安がある。
1階が向く人…小さい子どもがいて下階への音が気になる、楽器や在宅ワークで足音を出しがち、荷物の搬入が多い、ベランダから庭やスペースに出たい、家賃を抑えて他の条件に回したい。向かない人…防犯の対策を手当てする気がない、湿気の手入れが苦手、通路からの視線が気になる。
1階の床の冷えは、道具でかなり埋められます(賃貸OKの床冷え対策)。最上階やロフト付きの部屋の暑さも同じで、風の作り方で体感が変わります(ロフト付きの部屋が暑い|サーキュレーター1台で熱気を逃がす夏の道具5点)。
よくある質問
角部屋は家賃がどれくらい高いですか?
金額は書けません。地域差が大きく、同じ建物でも階数と向きの組み合わせで変わるからです。比べ方としては、同じ建物で複数の部屋が募集に出ているときが分かりやすいです。間取りと広さが同じで階数と位置だけが違う部屋を並べると、その建物での値付けの考え方が見えます。
1階は本当に危ないのですか?
「危ない」と断定はできません。窓への接近が容易なのは事実なので、対策の必要度は上がります。一方で、公的な指針はバルコニーに面する窓についても「侵入が想定される階」という言い方をしており、上の階が対象外とはしていません。1階を避けるかどうかではなく、窓の補助錠・面格子・視線の対策を実行するかどうかで考えてください。
最上階は本当に暑いのですか?
屋根から日射を受ける位置なので、暑さが出やすいのは確かです。ただし程度は断熱の仕様で大きく変わるため、一律には言えません。内見が夏なら、午後の時間帯に部屋の空気の温度を体感してみてください。冬しか内見できない場合は、屋根の形と最上階の天井の高さ、エアコンの設置状況を見ておくと手がかりになります。
上の階の足音がうるさいときはどうすればいいですか?
直接訪ねていくのは避けてください。管理会社に、日時・時間帯・どんな音かを記録して伝えるのが順番です。上下階の音は建物の構造から来ていることも多く、住人の使い方だけの問題とは限りません。伝え方と進め方は隣人の騒音トラブル対処法|管理会社への伝え方にまとめています。
構造が違えば、位置の有利不利は変わりますか?
変わります。とくに上下の音は、構造と床の仕様で差が出ます。ただし「RCなら静か」と決めつけるのも危険で、同じ構造でも床の下地と仕上げで体感は変わります。位置の条件と構造は掛け算だと考えて、両方を内見で確かめてください。
まとめ
- 位置で変わるのは音・温度・防犯と視線・湿気の4つ。混ぜずに、自分が重く見るものから決める
- 建築基準法が遮音の基準を定めているのは界壁=隣の住戸との壁。上下階の床には同じ下限がない
- 1階の防犯は公的な指針でも窓の仕様として扱われている。ただし「侵入が想定される階」の考え方は上の階にも及ぶ
- 1階が埋まりにくい一番の理由は条件検索で外されること。だから条件面の余地が残っていることがある
- 角部屋・最上階は結露と暑さの相談が多い位置。断熱の仕様と、カビの扱いを先に押さえておく
位置は変えられませんが、弱点の多くは道具と習慣で埋められます。埋められないものだけを条件にして探すと、候補が現実的な数に収まります。個別の物件の仕様や負担の判断は、必ず管理会社・大家に確認してください。
出典:建築基準法30条/建築基準法施行令22条の3(界壁の遮音構造。いずれもe-Gov法令検索)/民法621条(同)/国土交通省・警察庁「共同住宅に係る防犯上の留意事項」(平成13年3月策定、平成18年4月改正。国土交通省 報道発表 平成18年4月20日 資料1)/国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」。