結論:収入の額より、「支払いが続く形になっているか」を見られています
フリーランスや個人事業主の賃貸審査で落ちる人は、収入が足りないから落ちているとは限りません。所有するアパートの申込書を見ていると、判断が割れるのはこの3点です。
- 収入の裏づけが書面で示せるか。金額そのものより、第三者が確認できる形になっているかどうか
- 収入が落ちたときに支払いが止まらない形があるか。貯蓄、連帯保証人、緊急連絡先、前払いの提案など
- 連絡が取れる人かどうか。申込書の記入、質問への返答の速さ、内見時のやり取り
会社員が有利なのは、給与という形で毎月同じ金額が入り、勤務先に在籍確認ができるからです。フリーランスはそこが見えにくい。なので、見えにくさを書類で埋めれば、審査の土俵には乗ります。
ただし前提として、審査の基準は貸主ごと・保証会社ごとに違い、公表されていません。この記事に書くのは「通る方法」ではなく、判断材料の増やし方です。審査の全体像は賃貸の入居審査に通らない理由とは?年収の目安・審査の流れにまとめています。個別の可否は申し込む物件の管理会社または貸主に確認してください。
前提の整理:審査は2段階で、見ているところが違います
申し込んでから決まるまでに、審査は少なくとも2回行われます。ここを分けて考えないと、「何を直せばいいのか」が分かりません。
| 誰が | 何を見ているか | フリーランスが引っかかる点 | |
|---|---|---|---|
| 1段階目 | 家賃債務保証会社 | 家賃が払われなかったときに、自社が立て替えて回収できるか。申込内容と本人確認、過去の支払いに関する情報 | 収入の安定性の判断材料が少ない。書類が揃わないと保留になりやすい |
| 2段階目 | 貸主(大家)と管理会社 | この人に長く住んでもらえるか。近隣とのトラブルの芽がないか。建物の使い方が契約に合うか | 自宅兼事務所としての利用、人の出入り、来客の多さを気にされることがある |
保証会社には、クレジットカード会社などの信販系と、独立系と呼ばれるものがあるとされ、見ている情報が違うと言われています。信販系は、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターといった信用情報機関に登録された情報を参照するタイプです。ただし、どの会社がどの情報をどう使っているかは公表されていません。推測で決めつけず、「会社によって基準が違う」と考えてください。保証会社の仕組みそのものは賃貸保証会社とは?保証料の相場・審査・大家が必須にする理由を解説に書いています。
なお、国土交通省は「登録家賃債務保証業者制度」という制度を設けており、一定の要件を満たす家賃債務保証業者を登録して一覧を公開しています(2017年10月に施行。2026年9月20日に同省サイトで確認)。ただしこれは任意の登録制度で、同省のページにも「登録をしなくても家賃債務保証業を営むことは可能」と明記されています。登録の有無が審査の通りやすさを示すものではありません。
出すと判断材料が増える書類
求められる書類は物件と保証会社によって違います。以下は「求められていなくても、出すと話が早くなる」ものです。何年分必要かは会社ごとに違うので、申込みの前に聞いてください。
- 確定申告書の控え(収受印または受信通知のあるもの)——収入を示す基本の書類。e-Taxなら受信通知を一緒に。控えだけだと提出の事実が確認できないことがあります
- 課税証明書・納税証明書——自治体や税務署が出す第三者の書類。確定申告書より客観性があると見られやすい
- 直近数か月の入金が分かる通帳のコピー——売上が実際に入っていることを示す。金額の大小より、入金が続いていることが伝わります
- 継続中の契約書・発注書——来期以降も収入が見込めることを示す材料。取引先名を伏せられる範囲で
- 預貯金の残高が分かる書類——収入が落ちても払い続けられることの裏づけ。これが効く場面は多い
- 開業届の控え、法人なら登記事項証明書——事業として動いていることの確認
- 連帯保証人を立てられる場合は、その人の収入資料——保証会社と併用を求められる物件では特に有効
書類は申込みと同時に出すのがいちばん効きます。後から「では追加で」と言われてから出すと、その往復の分だけ日数がかかり、その間に他の申込者が決まってしまうことがあります。
そしてもう一点。収入の数字は正確に書いてください。盛った数字は、確定申告書と突き合わせた瞬間に分かります。金額が足りないことより、書類と申込書が食い違うことのほうが決定的です。
落ちやすいパターンと、立て直し方
| 落ちやすいパターン | 何が問題か | 立て直し方 |
|---|---|---|
| 申告所得が少ない(節税で圧縮している) | 書面上の収入が家賃に対して低く見える | 預貯金の残高、入金の継続、連帯保証人でカバーする。家賃の水準そのものを見直すことも検討する |
| 開業して間もなく、申告が1期分もない | 判断材料がない | 通帳の入金、契約書、前職の源泉徴収票、預貯金を組み合わせる。連帯保証人の効果が大きい場面 |
| 赤字申告 | 数字だけを見ると支払い能力が読めない | 赤字の理由(設備投資など)を書面で添える。預貯金と入金実績で補う |
| 自宅兼事務所として使いたい | 契約上の使用目的や、不特定多数の出入りを懸念される | 申込みの段階で正直に伝え、来客の有無・作業内容を具体的に説明する。事務所利用可の物件を探すほうが早いことも |
| 連絡が取りにくい | 滞納時に連絡が取れない不安に直結する | 日中つながる番号を書く。折り返しは当日中に。これだけで印象は変わる |
| 過去の支払いに関する情報が気になる | 信販系の保証会社では参照される可能性がある | CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターは本人への情報開示の窓口を設けている。自分の情報を先に確認しておく |
一度落ちたあとの動き方も書いておきます。同じ物件に、同じ書類で再申込みしても結果は変わりません。変えるのは、保証会社か、物件か、書類の3つのうちどれかです。保証会社が指定されていない物件なら別の会社になることがありますし、貸主が個人で判断している物件なら書類を足して交渉の余地があります。
貸主が収入より先に見ている3つのこと
申込書が回ってきたとき、私が最初に目を落とすのは収入欄ではありません。順番があります。
1つめは、申込書がきちんと埋まっているかです。空欄が多い、字が乱暴、緊急連絡先が空白。この状態で回ってくると、収入がいくらであっても身構えます。理由は単純で、申込書の書き方は、その後の連絡の取りやすさとよく相関するからです。滞納が起きたとき、いちばん困るのは金額ではなく連絡が取れないことです。逆に言えば、丁寧に埋めるだけで他の申込者と差がつきます。ここは収入と違って、今日から変えられます。
2つめは、緊急連絡先が実在して機能するかです。フリーランスの方は「保証会社に入るから保証人は不要」と言われて、緊急連絡先を形式的に書いてしまうことがあります。しかし貸主にとって、緊急連絡先は保証の話ではなく安否と連絡の話です。長期入院や事故のときに連絡が取れる人がいるかどうか。ここが埋まっていない申込みは、収入にかかわらず慎重になります。
3つめは、なぜこの部屋を選んだのかです。職業や収入より、住み方の見通しが立つかどうかを見ています。通勤の必要がないフリーランスの方は、住む場所の理由が読みにくい。だから、内見のときや申込みのときに「この街に知り合いがいる」「静かな環境で作業したい」「長く住むつもり」といった一言があると、それだけで見え方が変わります。長く住んでくれる見込みは、貸主にとって家賃の額に匹敵する価値があります。入退去のたびに空室期間と原状回復の費用が発生するからです。
そのうえで、収入は「家賃に対してどうか」で見ます。金額の大小ではなく釣り合いです。適正家賃の考え方は家賃は手取りの何割が目安?年収・手取り別の早見表にまとめました。申告所得が圧縮されている人ほど、ここの見え方を意識して物件を選ぶと通りやすくなります。
向く物件・向かない物件
| 特徴 | 理由 | |
|---|---|---|
| フリーランスが通りやすい傾向 | 貸主が個人で、管理会社が地場の会社/家賃が収入に対して控えめ/募集期間が長めの物件/保証会社が指定でなく選べる物件 | 書類と説明で判断してもらえる余地がある。貸主の意向が直接反映される |
| 難易度が上がりやすい傾向 | 人気物件で申込みが重なっている/大手管理会社の定型審査/勤務先と在籍確認を前提にした申込書式/事務所利用が明確に禁止されている物件 | 比較の土俵が会社員向けに作られており、書類で補える範囲が狭い |
| 別の選択肢 | UR賃貸住宅など、保証人・保証会社を前提としない仕組みの住宅 | 収入基準や必要書類の考え方が民間と異なる。条件が合えば選択肢になる |
物件の探し方から申込みまでの流れははじめての部屋探し 完全ガイドに一本でまとめています。申込みが重なる時期を避けるだけでも、判断してもらえる確率は上がります。
よくある質問
確定申告書は何年分必要ですか
会社によって違います。1期分で足りることもあれば、複数期分を求められることもあります。「何年分が必須」という共通のルールはありません。確実なのは、申込みの前に仲介会社へ「個人事業主です。必要書類を先に教えてください」と聞くことです。この一言で、審査の往復が一段減ります。手元にある分は最初からまとめて渡しておくのが有利です。
赤字申告だと審査に通りませんか
通らないと決まっているわけではありません。赤字でも預貯金があり、毎月の入金が続いていて、家賃が収入に対して無理のない水準であれば、判断材料は揃います。逆に、黒字でも入金が不規則で貯蓄がない場合は慎重に見られます。見られているのは「今年の利益」ではなく「来月から払い続けられるか」です。赤字の理由が説明できるなら、書面で添えてください。ただし最終的な判断は保証会社と貸主に委ねられます。
自分の信用情報を先に確認できますか
できます。CIC、JICC(日本信用情報機構)、全国銀行個人信用情報センターは、いずれも本人が自分の情報を開示請求できる窓口を公式サイトに用意しています(2026年9月20日確認。手数料や手続きは各機関のサイトで確認してください)。信販系の保証会社ではこうした情報が参照される可能性があるとされています。ただし、どの保証会社がどの機関の情報を使っているかは公表されていません。不安がある人は、申込みの前に自分の情報を確認しておくと、落ちた理由の見当がつきやすくなります。
審査に落ちた理由は教えてもらえますか
教えてもらえないことがほとんどです。保証会社は審査の内容を開示しない運用が一般的で、仲介会社も「今回はご縁がなかった」という伝え方になります。理由を聞き出すことに時間をかけるより、次の申込みで材料を増やすほうが早いと考えてください。書類を足す、家賃の水準を下げる、保証会社が違う物件にする、連帯保証人を立てる。変えられるのはこの4つです。
審査中に他の物件も申し込んでいいですか
同時に複数申し込むこと自体を禁じる法律はありませんが、実務では歓迎されません。貸主は申込みを受けた時点で他の希望者を断るため、二重申込みで辞退されると空室期間がそのまま損失になります。仲介会社を通じて発覚すると、その後の紹介が消極的になることもあります。気になる物件が複数あるなら、申し込む前に「審査結果はいつ頃出ますか」と確認し、順番に進めるほうが結果的に早く決まります。
まとめ
フリーランスの賃貸審査は、2段階で行われます。保証会社は「立て替えた家賃を回収できるか」を、貸主と管理会社は「長く住んでもらえるか」を見ています。どちらも、収入の額そのものより支払いが続く形になっているかを判断しようとしています。
ですから、打ち手は「材料を増やす」の一本です。確定申告書に加えて、課税証明書、入金の記録、継続中の契約書、預貯金の資料。これらを申込みと同時に出す。申込書は空欄なく埋め、緊急連絡先は実際に連絡が取れる人を書く。この2つだけで、審査に回る前の印象が変わります。
審査の基準は貸主ごと・保証会社ごとに異なり、公表されていません。この記事の内容も一般的な傾向であって、可否を保証するものではありません。個別の物件については、申し込む前に管理会社または貸主に必要書類と条件を確認してください。
参照した出典(すべて2026年9月20日確認):国土交通省「登録家賃債務保証業者制度」(2017年10月施行の任意の登録制度である旨、登録業者一覧の公開) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr7_000024.html /株式会社シー・アイ・シー(CIC)の情報開示の案内 https://www.cic.co.jp/mydata/index.html /株式会社日本信用情報機構(JICC) https://www.jicc.co.jp/ 。