「UR賃貸住宅」と聞いて、昭和の団地を思い浮かべる方は多いと思います。実際に私たちが取材してきた中にも、公園に囲まれた昔ながらの団地はたくさんあります。ただ、43件のUR物件を内見して動画にしてきた実感としては、ラインナップの幅は想像よりずっと広いというのが正直なところです。都心のタワー型、設計士が手を入れたリノベーション住戸、無印良品とのコラボ住戸まであります。この記事では、宅建士・現役大家として全国のUR物件を取材してきたアパートメントラボが、物件タイプごとの特徴と向き不向きを、実際の内見動画つきで整理します。
UR賃貸住宅の物件は、大きく4タイプに分けられる
UR都市機構は公式サイトの物件の種類ページで、団地とタワーマンション(超高層団地)という2つの切り口を紹介しています。ただ実際に部屋を探す立場で見ると、この2つに加えて「リノベーション済み住戸」と「特定のテーマを持った住戸」を分けて考えたほうが選びやすくなります。私たちが取材してきた物件を並べると、おおむね次の4タイプです。
- ① 団地タイプ——敷地にゆとりがあり、公園や緑が多い。中低層で家賃も抑えめ
- ② タワー・高層タイプ——駅近・眺望重視。都市部に多く、設備のグレードも高め
- ③ リノベーション住戸——既存の棟の中身を大きく作り替えた部屋。内装は新築に近い印象
- ④ テーマ型住戸——ペットと暮らせる棟、無印良品とのコラボ住戸など、目的がはっきりした部屋
同じ「UR賃貸住宅」でも、この4つは住み心地も家賃帯もかなり違います。順番に見ていきます。
① 団地タイプ|広さと環境を優先する人向け
いちばん物件数が多いのがこのタイプです。撮影に行くと毎回感じるのが、建物と建物の間隔の広さです。民間の賃貸アパートだと隣の建物の壁が窓の正面、ということも珍しくありませんが、団地は棟の間に空地や植栽、駐車場が入るため、窓を開けたときの抜け方が違います。日当たりと風通しは、間取り図だけでは伝わりにくい団地の強みだと思います。
家賃と広さのバランスも特徴的です。たとえば千葉県印西市で取材した4LDK・110㎡のUR賃貸住宅は、月々7万円台という条件でした。同じ家賃帯で都市部の民間賃貸を探すと、1LDKや2DKが中心になるはずです。家族の人数が多い、在宅ワークで一部屋余分に欲しい、といった事情がある方には現実的な選択肢になり得ます。
一方で、団地タイプには確認しておきたい点もあります。エレベーターのない中層棟があること、住戸によって水回りの更新状況に差があることの2つです。同じ団地の中でも、内装を新しくした住戸とそうでない住戸が混在しているケースは珍しくないので、募集図面の「リニューアル」表記と現地・動画での確認は必ずセットにしたほうが安心だと思います。
② タワー・高層タイプ|駅近と眺望を求める人向け
「URにタワーマンションがある」と話すと驚かれることが多いのですが、都市部にはしっかりあります。名古屋市千種区のアーバンラフレ星ヶ丘は地下鉄東山線の星ヶ丘駅が近く、タワー型の住棟に3LDKで14万円台という設定でした。同じく名古屋のアクシオス千種や、東京・足立区のハートアイランド新田四番街も、駅からの距離と建物のグレードで選ぶタイプの物件です。
このタイプは家賃も相応に上がります。ただ、民間のタワーマンションと比べたときに効いてくるのが、礼金や仲介手数料、更新料といった家賃以外の費用がかからない点です。家賃15万円クラスの部屋で礼金1か月・仲介手数料1か月がかからないだけでも、入居時の差は30万円前後になります。長く住むほど更新料の差も積み上がるので、「月額だけ」ではなく数年単位の総額で比べると印象が変わるはずです。初期費用の考え方は賃貸の初期費用の内訳と抑えるコツでも整理しています。
③ リノベーション住戸|古さへの不安がある人ほど見てほしい
「団地は古いから」と敬遠している方に、いちばん見ていただきたいのがこのタイプです。既存の建物を活かしながら、間取りや内装、水回りを大きく作り替えた住戸があります。愛知県春日井市の藤山台は、複数の設計士がそれぞれ手がけた住戸があり、同じ団地の中で部屋ごとに雰囲気がまったく違いました。同じく春日井市の岩成台団地は、昭和の面影を意図的に残しつつワークスペースを設けた造りです。
千葉市美浜区の高洲第一のように、光を通す壁やスライドドアで採光と可変性を確保した例もありました。撮影しながら「これは団地というより、デザイン重視の賃貸マンションに近いな」と感じた住戸がいくつもあります。築年数の数字だけで判断してしまうと、こういう部屋を見落としてしまうのはもったいないと思います。
④ テーマ型住戸|ペット可・コラボ住戸など
目的がはっきりしている方には、テーマを持った住戸という選択肢もあります。私たちが取材した中では、次のような例がありました。
- 無印良品とのコラボ住戸(福岡・北九州)——内装や収納の考え方が統一された1LDK・60㎡
- ペット向け設備のある住戸(岐阜・緑苑東24号棟)——2LDK・56㎡で家賃4万円台という条件でした
- 上下階を使える住戸(茨城・取手井野団地)——住戸に付随したスペースを持てるタイプ
ペット可の住戸は民間賃貸でも増えてきましたが、頭数や条件の制約が厳しいことが多い分野です。大家の立場で言うと、ペット可にすると原状回復の見立てが難しくなるため、慎重になる貸主は今も少なくありません。棟単位でルールが決まっている物件は、入居者同士の前提が揃っているという意味でも探しやすいと思います。
タイプ別・向いている人の早見表
| タイプ | 家賃の傾向 | 向いている人 | 確認したい点 |
|---|---|---|---|
| 団地 | 抑えめ | 広さ・環境・子育て重視 | エレベーターの有無、設備の更新状況 |
| タワー・高層 | 高め | 駅近・眺望・通勤時間重視 | 共益費や駐車場を含めた総額 |
| リノベーション住戸 | 中〜やや高め | 内装のきれいさを妥協したくない人 | 募集戸数が少なく入替が早い |
| テーマ型 | 物件により幅 | ペットやコラボ内装など目的が明確な人 | 棟ごとの個別ルール |
アパートメントラボの現場から
全国のUR物件を撮影していて意外だったのは、同じ団地の中でも住戸ごとの差が大きいことでした。募集図面では同じ「2DK」でも、水回りを更新した部屋と当時のままの部屋では住み心地がかなり違います。大家として自分の物件のリフォームを判断する立場から見ても、URは「棟をまるごと建て替える」だけでなく「住戸単位で作り替える」手を併用している印象です。だからこそ、タイプだけで決めずに個別の住戸を見る価値があると思います。
よくある質問
タワータイプと団地タイプで、契約の条件は変わりますか?
契約まわりの基本的な扱いは共通です。礼金や仲介手数料、更新料がかからない点、保証人を立てない代わりに申込者本人の資格確認を受ける点はタイプによって変わりません。違ってくるのは家賃・共益費の水準と、申込に必要な収入の基準額のほうです。
リノベーション住戸はどうやって探せばいいですか?
募集情報のリニューアル関連の表記が手がかりになりますが、表記の仕方は物件によって差があります。人気が出やすく募集期間も短い傾向があるので、気になる団地があれば定期的に空室情報を見ておくのが現実的だと思います。
まとめ|「団地かどうか」ではなく「どの住戸か」で選ぶ
UR賃貸住宅には、ゆとりのある団地から都市部のタワー、設計士が手を入れたリノベーション住戸、ペットやコラボといったテーマ型まで幅があります。イメージだけで候補から外してしまうと、条件に合う部屋を見落とす可能性があります。私たちが実際に訪れた物件はUR賃貸住宅の特設ページと全国の物件マップから動画で確認できます。制度や初期費用の全体像はUR賃貸住宅の基本ガイドもあわせてどうぞ。
畠山 晴允(はたけやま はるみつ)/アパートメントラボ合同会社 代表・宅地建物取引士
登録者14万人のYouTubeチャンネル「アパートメントラボ」を運営し、賃貸・分譲・戸建ての内見動画を制作。自身も広島で一棟アパートを経営する現役の不動産オーナー。UR都市機構などの物件PR動画も手がけ、賃貸を「借りる側」と「貸す側」の両方の視点から発信しています。運営者について >