八王子アパート階段崩落事故の原因とその後を宅建士が解説

八王子アパート階段崩落・死亡事故 暮らしのコラム

2021年4月17日、東京都八王子市の賃貸アパートで外階段の一部が崩落し、住人の女性が転落して亡くなる事故が起きました。この記事では、宅建士であり自身も一棟アパートを経営する現役大家のアパートメントラボが、事故の概要・原因、施工会社「則武地所」のその後、そして入居者・大家それぞれが学ぶべき教訓を時系列で整理します。

八王子アパート階段崩落事故とは(2021年4月・概要)

事故が起きたのは、八王子市内の築8年ほどの賃貸アパートです。2021年4月17日、鉄骨製の外階段と踊り場の一部が崩れ、階段を使用していた住人の女性が転落して死亡しました。鉄骨階段でありながら、踊り場との接合部に木材が使われており、その木部の腐朽が崩落の原因とみられています。

「築8年」という数字に驚いた方も多いはずです。築古物件で起きた事故ではなく、比較的新しい物件でも、施工と維持管理に問題があれば人命に関わる劣化が進むことを示した事故でした。

事故の原因──「実質経営者が自ら施工」の実態

この物件を建築した「則武地所」(相模原市)の元社員は、時事通信の取材に対し、崩落した階段は「実質経営者の男性が自ら工事していた」と証言しました。腐食を防ぐために社員が木製踊り場の防水加工をするよう忠告しても、聞き入れられなかったといいます。

ここで押さえておきたいのは、建築確認や完了検査(検査済証)は「設計図書どおりに建てられているか」を確認する仕組みであって、施工の細部の品質や、竣工後の劣化までを保証するものではないという点です。検査済証がある物件でも、防水処理の手抜きのような施工不良や、点検されないまま進む劣化は防げません。

その後どうなった?施工会社と行政の対応【時系列】

事故から時間が経ち、「あの事故はその後どうなったのか」を調べる方が増えています。報道等で確認できる経緯を時系列で整理します。

時期出来事
2021年4月八王子市のアパートで外階段が崩落、住人の女性が死亡
2021年5月施工会社の則武地所が自己破産を申請
2021年6月国土交通省の要請による全棟調査で、同社施工の共同住宅241件のうち214件が詳細調査や改修などの対策を要すると判断
2025年2月警視庁が同社の元会長を業務上過失致死の疑いで書類送検

報道によれば、対策を要すると判断された物件の改修・解体は2024年末時点でもすべては完了しておらず、対応は道半ばとされています。施工会社が破産すると、補修の責任と費用は物件の所有者(大家)側に残ります。私は現役の大家として、この事故を「他人事ではない」と受け止めています。

この物件は「事故物件」になるのか?告知義務との関係

「八王子 事故物件」と検索してこの記事にたどり着いた方もいると思います。宅建士として整理すると、いわゆる事故物件(心理的瑕疵)は自殺・他殺・孤独死など「心理的な抵抗感」が主な問題です。一方、本件は施工不良という物理的な欠陥が原因の死亡事故で、性質が異なります。

ただし、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、賃貸の場合、事案発生からおおむね3年間は告知が必要とされるのが原則です。本件のように社会的影響が大きく報道もされた事案では、期間にかかわらず丁寧な説明が望ましいケースといえます。いずれにせよ、気になる物件があれば仲介会社に告知事項の有無を確認するのが確実です。

宅建士・現役大家が教える「危ないアパート」の見分け方

私は宅建士であり、自身もアパートを所有する現役の大家です。YouTube(登録者14万人)で物件内見動画を発信する中で、アパートの共用部は数え切れないほど見てきました。その経験から、内見時に必ず見てほしいポイントを挙げます。

  • 外階段と踊り場の接合部:鉄骨階段でも、踊り場や段板に木材が使われていることがあります。接合部のサビ・シーリングの切れ・踏んだときの沈み込みは要注意です。
  • 階段を実際に上り下りする:内見では室内ばかり見がちですが、共用部にこそ管理状態が表れます。大きくたわむ・きしむ階段は、管理会社に点検記録を確認してください。
  • 雨がかりの処理:屋外階段に屋根や防水笠木がなく、木部がむき出しの物件は劣化が早い傾向があります。

大家の立場では、私は自主点検で外階段の根元と接合部を優先的に確認しています。点検を後回しにした結果が人命に関わることを、この事故は示しています。内見時のチェックポイント全般は賃貸の部屋探し完全ガイドにまとめています。

まとめ──借りる側・貸す側それぞれの教訓

借りる側の教訓は、「築年数が浅い=安全」ではないこと。内見時に共用部、とくに外階段の状態を自分の目と足で確かめることです。貸す側の教訓は、施工会社任せ・検査済証任せにせず、定期点検を怠らないこと。この事故では施工会社が破産し、残された物件の改修責任は所有者に降りかかりました。

当サイトでは、実際に現地を歩いて撮影した内見動画つきで全国の賃貸物件を紹介しています。全国の取材物件マップから、気になるエリアの物件レビューをご覧ください。

畠山 晴允(はたけやま はるみつ)/アパートメントラボ合同会社 代表・宅地建物取引士

登録者14万人のYouTubeチャンネル「アパートメントラボ」を運営し、賃貸・分譲・戸建ての内見動画を制作。自身も広島で一棟アパートを経営する現役の不動産オーナー。UR都市機構などの物件PR動画も手がけ、賃貸を「借りる側」と「貸す側」の両方の視点から発信しています。運営者について >

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