広島市南区の、2LDK・62.42㎡。
募集賃料は13万4,000円、共益費5,000円。総額13万9,000円です。
この数字を見て、あなたはどう思いましたか。
「広島でその賃料は強気だな」と思った方。
「うちの物件も築浅なのに、なんでこの賃料が取れないんだろう」と思った方。
どちらの方にも、最後まで読んでいただきたい記事です。この部屋を実際に歩いて撮影してきた人間として、そして自分でもアパートを1棟持っている大家として、なぜこの部屋の賃料が「高い」と言われずに済んでいるのかを考えてみました。
先に結論を書くと、賃料を支えているのは設備の豪華さではないのではないか、というのが私の見方です。
まず、物件の事実だけ並べます
| 所在地 | 広島県広島市南区宇品東7丁目 |
|---|---|
| 物件名 | D-ROOM宇品東 |
| 完成 | 2025年9月(2025年築) |
| 間取り | 2LDK / 62.42㎡ |
| 賃料 | 13万4,000円(共益費5,000円/総額13万9,000円) |
| 最寄り | 広電宇品線「宇品四丁目」電停 徒歩8分(「広島」まで乗り換えなし約25分) |
| 周辺 | スーパー「たかもり」徒歩3分/セブンイレブン徒歩5分/スーパー「ディオ」徒歩5分/ドラッグストア「ウォンツ」徒歩6分/スターバックス徒歩6分/イオン宇品店 徒歩8分 |
駅徒歩8分。都心直通25分。2025年築。生活インフラは徒歩5分圏に揃っている。
悪くない立地です。ただ、立地と築年だけで13.9万円が説明できるかというと、そこまでではないように思います。同じエリアには、もっと安い築浅の2LDKもあります。
では何が違うのか。
現地で見て、賃料を支えていると感じた装備
撮影は約17分。全部で数十点の設備を確認しましたが、その中から賃料に結びついていそうだと感じたものを挙げます。
1. 毎月の固定費を、部屋の側で下げている
- 太陽光の売電パネル搭載。日中は発電した電気をそのまま使える
- 窓は複層ガラス。外壁・屋根を含む建物外皮が国の省エネ基準を上回る高断熱仕様
- 照明・空調は高効率の省エネ設備。エネルギー消費が一般的な住戸比で2割以上減(メーカー公表値)
- 結果として年間30%以上の節電効果が見込める設計(同上)
- Wi-Fi設置済み。入居したその日から無料で使える
- 停電時用のコンセントあり。日中の発電時ならここから電気が取れる
これが一番大きいのではないかと考えています。
入居者が毎月払うのは家賃だけではありません。電気代とネット代を足せば、実際の住居費は家賃+1万5,000円〜2万円になります。この部屋はその「+α」の側を、建物の側で削りにいっているように見えました。ネット代が月5,000円浮いて、電気代が3割下がるなら、体感の住居費は名目より1万円近く安くなる計算です。
13.9万円はあくまで名目の数字で、入居者が感じる実質負担はもっと低いのではないか。ここが設計の中心にあるのではないかと感じました。
2. 「不安」を、入居前に潰している
- 玄関はICカードの電子錠。鍵を持ち歩く必要がなく、鍵穴がないので構造上ピッキングもできない
- オートロック
- 全ての窓にセコムのセンサー。警備会社が入っていること自体が安心材料になる
- 全ての窓にシャッター。強風時の飛来物からも窓を守れる
- モニター付きインターホン。ピンポンが押されると自動録画され、留守中の来客も後から確認できる
賃貸で「全窓にセンサー」「全窓にシャッター」まで入っている物件は、そう多くないように思います。
この中でとくに効くのは、電子錠とセコムではないでしょうか。鍵の管理から解放されること、そして警備会社の名前が入っていることは、内見のときに言葉で伝えやすい。それ単体で決め手になるというより、他の候補と迷ったときのプラス材料になるという位置づけだと考えています。
3. 水回りが、戸建ての基準で作られている
- 幅120cmの洗髪洗面化粧台。鏡裏はすべて収納
- 洗面台まわりにコンセント4口、椅子を置ける空間、足元に体重計の指定席
- 浴室は一坪風呂。浴室暖房換気乾燥機付き
- シャワーは片手で高さ・角度・方向を調節でき、手元に節水スイッチ
- 浴室の棚は3つとも取り外して丸洗い可能
幅120cmの洗面台と一坪風呂は、賃貸というより戸建ての仕様に近いと思います。賃貸ではまず入らないサイズなので、ここは「決まる理由」になりうる部分ではないでしょうか。
4. 在宅ワークの席が、最初から用意されている
- 洋室6.1帖の一角に備え付けデスク。奥行きがあり、椅子を置いても部屋を圧迫しない
- デスク上部に扉付き収納とオープン棚、方向を変えられるライト
- USB-AとType-Cのポートを搭載、配線用の穴まである
- 居室の照明は上下切り替え式で、間接照明にもシーリングにもなる。色温度も変更可
「デスクを置けるスペースがあります」ではなく、「デスクがあります」。この差は、入居検討者にとっては家具1点分の初期費用の差です。
5. 収納が、寸法で解決されている
- 玄関はコの字型のシューズボックス。棚板可動でブーツも長靴も入り、傘の収納場所も別にある。フロートタイプで床が見えるため玄関が広く感じる
- 洋室4.5帖は物入れとクローゼットの2つ。どちらも天井まで使えて奥行きがある
- キッチン収納はすべてスライド式。カトラリーケースは取り出して丸洗い可、下段は500mlのビールを立てて入る
- 冷蔵庫置場は一段奥まった設計で、冷蔵庫が飛び出さない
ここからが本題です
ここまで読んで、「うちの物件にこれを全部入れるのは無理だ」と思われた方が多いのではないでしょうか。実際、ZEH水準の断熱も全窓シャッターも、後から足せるものではありません。
ただ、私がこの部屋を見て一番強く思ったのは、そこではありませんでした。
この部屋が家賃を取れているのは、設備を「盛った」からではなく、入居者が住んだあとに払うお金と、抱く不安を先に減らしにいっているからではないか。そう考えています。
並べ替えてみると、意図が見えてくる気がします。
| 入居者の負担 | この部屋の答え |
|---|---|
| 電気代が高い | 太陽光+高断熱+高効率設備で年間3割減 |
| ネットの契約と月額が面倒 | Wi-Fi設置済み・無料 |
| 防犯が不安 | ICカード・オートロック・全窓センサー・全窓シャッター |
| 洗濯物が乾かない | 浴室乾燥+引き出す室内物干し+広いバルコニー |
| 家具を買い足す出費 | デスク・姿見・シューズボックス・鏡裏収納が造作 |
ひとつひとつは、月にすれば数千円の話です。それでも合計すると、入居者にとっては「実質1万円以上安い部屋」になります。13.9万円が通っている背景には、この積み上げがあるのではないでしょうか。
そして、この考え方自体は、新築でなくても使えるはずです。
あなたの物件で、明日から検討できること
私が自分の物件で実際に考えている順番で書きます。費用対効果が高いと思う順です。
- インターネット無料化。入居者から見れば月4,000〜5,000円の実質値下げになります。同じ効果を賃料の値下げで出そうとすると、下げた分がそのまま収益減になり、売却するときの利回りにも響きます。設備で対応すれば、表面の賃料を維持したまま競争力を上げられる、というのが私の考えです
- 浴室暖房換気乾燥機。単身・共働き世帯にはほぼ確実に効きます
- 玄関の電子錠化。後付けできるタイプもあります。鍵を持たずに出入りできることは内見で説明しやすく、防犯面のプラス材料になります
- 洗面台の交換。幅を広げるだけで部屋の印象が変わります。水回りは写真映えも段違い
- 造作の追加。デスクや姿見など、入居者が「買わなくて済む」ものを1点でも増やす
全部やる必要はありません。「入居者の毎月の出費を、どれか一つ肩代わりする」。これだけで募集図面に書ける一行が増えます。
もうひとつ、この物件から分かること
この部屋の動画は、公開から8日で32,011回再生されました。
広島市南区の、特定の1部屋の内見動画です。それを3万人が見ている。この数字が意味しているのは、「部屋を探している人は、募集図面ではなく、部屋の中を見て決めたがっている」ということです。
私たちのチャンネルは、これまでに519本の物件を撮影して、累計7,800万回以上再生されてきました。その中で感じているのは、反響が伸びる物件と伸びない物件の差は、物件のグレードよりも「中がどれだけ見えているか」に左右されているのではないか、ということです。
募集図面と写真10枚では、この部屋の良さは伝えきれないように思います。電子錠であることも、洗面台が120cmあることも、デスクにType-Cが付いていることも、図面には書ききれないからです。
お持ちの物件、動画で見せたらどう映ると思いますか?
アパートメントラボは、全国の賃貸物件を現地取材してYouTubeで公開しています。撮影・編集から記事化までを一貫してお受けしています。
気になった点も挙げておきます
ここまで良い部分を中心に書いてきましたが、住む側の目線で気になった点もありました。
- キッチンはフルフラットの対面式で開放感がありますが、リビングから手元が丸見えです。片付けが苦手な方には向きません
- ダイニングは広くありません。四角いテーブルだと圧迫感が出るので、丸テーブルを勧めたいサイズ感でした
- 洋室4.5帖は西向きです。夏場の西日は考慮しておいた方がいいでしょう
大家の立場で言えば、この3つは「弱点」というより「先に伝えておけば揉めない点」だと思っています。内見前に伝えておけば、入居後の不満になりにくい。先に言ってしまった方が、かえって決まりやすいのではないでしょうか。
最後に
この記事でお伝えしたかったのは、「D-ROOMはすごい」という話ではありません。
賃料は、設備の点数ではなく、入居者の負担をいくつ肩代わりできたかで決まるのではないか。
そして、それを伝える手段が募集図面しかないのなら、伝わる量には限界があるのではないか。
この2つが、この部屋を歩いて考えたことです。
オーナー・不動産会社さま向け
お持ちの物件を、動画で紹介しませんか
アパートメントラボは、全国の賃貸物件を現地取材し、YouTube・Instagram・ブログで公開しています。撮影から編集、記事化までを一貫してお受けしています。これまでの取材物件は519件、累計再生数は7,800万回を超えました。
この記事のように、間取りと設備を「住んだあとの生活」に翻訳してお伝えします。
フォームの「お問い合せ内容」で「YouTubeタイアップ依頼(撮影依頼)」または「コンサルティングの依頼」をお選びください。個人でお持ちのオーナーさまは、会社名の欄に「個人」とご記入いただければ結構です。
この記事を書いた人
畠山(アパートメントラボ合同会社 代表)
宅地建物取引士。自身も賃貸アパートを所有する現役の大家。全国の賃貸物件を現地取材し、YouTubeチャンネル「アパートメントラボ」で公開しています。これまでの取材物件は519件、累計再生数は7,800万回を超えました。物件の紹介は、実際に現地を歩いて見た内容のみを書いています。